デモンストレーション開幕式

『本日緊急特番、プロ冒険者によるデモンストレーションをやっていただきます。』


反射の精霊の術を用いた魔道具を持つ司会者から発せられた声が会場に響き渡った。


その場には水晶がありこちらを写していた。


この王都では各家庭に三種の魔道具と呼ばれる物が存在する。


一つは薄く加工されたガラスに写るテレビのようなモノ。中に定期的に専用の液体を入れる必要があるが娯楽に飢えた庶民達が買わない筈も無く大ヒット商品となりテレビ局も何局か出来るようになった。これは言わずもがなユウイチが作ったものである。ユウイチ曰くスライムの細胞を切り離し、対応させた電波を送ることでスライム細胞が発光し写る仕組みらしい。真似できたものはいないため完全独占販売である。


〜サラッと解説〜

細胞とは組織を作る上で必要なものだが単細胞生物に置いてはプログラムさえ正しければコマンドを入力すれば同じ行動を行う。それかと細やかにゲノム編集で蛍、ホタルイカの冷光遺伝子と昆虫などの触覚の方向感覚を微弱な電波でキャッチする遺伝子を上手く組み込み食欲と同じような認識をさせれば多分出来るやり方。しかしそれを継続させる為には単細胞生物に必要な餌が必要となる。現代に置いてはゲノム編集はリスクが伴うため行うものもいないため現実的ではない技術となる。


そんな通称スライムテレビから写るのは俺、ロレンだ。


「さてさて今回お越しいただいたのは、シンキョウ家、ユウゾウ!そしてその義息子でありチヤガ共和国にて名を馳せた冒険者ロレンとその恋人にして知らない者は居ない発酵食品の第一人者レナのお二人でございます。」


「うん、最後のナレーション。レナ姉か?」


「そうだろうよ。つーか怖いから帰っていいかロレン。凄い遠くから般若が見えるのは気のせいかな。」


義父、ユウゾウはあいも変わらず元気そうで嫁の尻に敷かれていた。


そして義父の言う通り、ナレーションがロレンとその恋人からといったあたりから実家のある方角に巨大な般若、義母アンネの化身が見えた気がした。というか声まで聴こえてくる気がする。


「ローレーンーはーまーだーわーたーしーさーなーいーわーよー。ぜっーたーいーみーとーめーなーいーわー。」


巨大な般若はレナに向かって怪しい閃光が見えた気がした。しかしレナはレナでハートマークのバリアを貼った。


「なんでしょうか。もの凄い寒気がするんですがもう夏なんですけど。冷房効きすぎですかね。」


「放送委員長や仮にもロレン君は男の子じゃろうて男の子を生んだ家庭や引き取ったりした家庭は女衆が厳しいもんじゃぞい。そのことをしっかり考えてからナレーションの書類を作成することを推奨するぞいがお主誰に書類を提出したんじゃぞい。」


義母アンネは司会者にも祟ったのだろう。レナと同様に怪しい閃光が放たれこちらは直撃していた。


「えっと年齢イコール彼氏いない歴の学年主任のブーケ・トス・トール先生です。」


「フフフフフフフフフフフフ、あなたのこと覚えたわ。」


ゾクゾク


この放送委員長は学習能力が乏しいのだろうか。彼氏いない歴イコール年齢のブーケ・トス・トール先生はパートナーの悪魔に指示を出し呪いの人形を作っていた。


「あ~ブーケ君、ただちに生徒に体罰を加えるのをやめるぞい。」


「では学園長、彼氏いない歴イコール年齢の三十路のアラサーの私目にお見合いの確約をお願い申し上げます。」


「仕方ないぞい。君は貴族だが平民でも構わないのなら了承するぞい。」


この三十路のアラサーも中々に業の深い人間である。ちなみにその名の通りブーケトスのキャッチ率100パーセント、しかし結婚できない。戦績は45戦45勝逆に言えば友人の結婚頻度が多すぎる。もはやほとんどの友人が夫帯者となっているためハンカチを噛み締め歯ぐきから血が出るほどには悔しい思いをしながら結婚式には参加していた。


「ええ、それで結構。もはや結婚できるのなら側室でも構いませんわ。」


それで納得したのか呪いの人形をしまっていた。しかしながらどんな人でも結婚したいと聞くとその先を考えれているのかが気になるところである。結婚が成立しても即離婚にならないといいが。


「が、学園長ありがとうございます。」


「心配するなぞい。」


「しかし、結婚できても長続きするんでしょうかね。」


今度は小さな声で言ってはいたが本人たちの前では言えない行為だなあと学園長は思いながらお見合いのリストにひっかかりそうな人物に心当たりがあったのかそれだけ言うとデモンストレーションを始めるよう指示を行うとしたその時司会の放送委員長が倒れていた。


よく見ると司会者の頭には呪殺と漢字で書かれていたお札が張られていた。どうやらこの闘技場の中に居るさらなる実力者の参戦に触れたらしいと学園長は理解したのであった。


それが最後視たのは18年前だった彼女だということを理解しながら。静かにロレンのことを見つめた。

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