お勉強

「この程度飲まれるとはな。名を挙げたい奴らが聞いて呆れる。だが呑まれるならとことん溺れさせてやるよ。次はこっちから行くぞ。勝負する気のない奴は今すぐ担任より後ろに下がりな。」


人数にして10人が残った。先ほど攻撃を仕掛けた二人は断念せざる終えないかに思えたが相棒がいなくともここに居たいと担任の静止を無視して残った。


「たったこれだけだ。たったこれしかロマンを追い求めようとした奴はいなかったわけだ。残ったお前ら、お前らはただ半端な野心しか持っていなかった半端者だ。今いるこいつらが正真正銘の大馬鹿者かはたまた真の冒険者か確かめてやる。構えろよ。」


生徒たちは相棒たちに一斉に指示を出し、防御の姿勢をさせ自分自身も相棒を盾にしたり身をかがめたりすることで攻撃に備える。


「じゃあまず悪魔から行こうか。」


俺は羊頭で牛角の人間女性の肉体を持った悪魔に狙いを定めた。


悪魔の視界からロレンの姿が消えた。悪魔は本能で自分の展開した闇の結界に全身全霊をもって魔力を込めた。


ガキンッ!!


重厚な金属音に等しき音楽がその場を支配するほどに大きく強大な拳の幻影を生徒たちは目の当たりにした。


「嘘よ、人間の拳なんかで私の相棒の、悪魔のレイチェルが生徒会長の天使の攻撃だって受け止めれる結界が破られたというの。」


あっさりと砕け散り闇が霧散した光景は太陽の光と相まって美しく残酷な表裏を現したような風刺画のようであった。


「うーん、まあまあか。学生レベルだし期待はしていなかったんだがここまでひどいとは上位の《世界の祝福》が聞いて呆れるぜ。これじゃあだらけ切った温室育ちが夢見てるって言われてもしょうがねえわな。」


そんなことをボソッと呟きながらこちらに向かう二つの気配を察知し敢えて俺は目を瞑った。


「ハンデだ。全員で襲ってきてもかまわないぞ。」


二つの気配は言い終わる前に攻撃を仕掛けていた。一人は槍、もう一人はレイピアを用いて。


「さっきの二人か。ふむふむ槍の方はパイソン系の主人の生徒でレイピアの方は結晶精霊の主人の生徒で会っているかい。」


「ええ、そうです。僕たちは相棒の仇を取るために貴方と戦います。」


渾身の槍を奮い立たせ肉を穿つべく体ごと前に出す。


「私たちはパートナーばかりに頼る無能な主人でなくてよ。」


腕の関節部を取りにレイピアを突き刺すため腕を伸ばした。


「セオリー通りでもまあそれは力量を見極めれてからにしようか。」


槍の力のベクトルを返させ軽々器用にに片足一本で一本背負いを行った。


そしてレイピアに狙われた腕を逆手に取り一度触れると同時に振動をかけレイピアの持ち主の方を痺れさせた。


「武器を使うなら素手以上に起用にして足以上に力強く攻撃を行わなければモンスターに対しては何の意味も持たないお遊戯に過ぎないぜ。だからこんな風に目を瞑っても攻撃があたらない。まあお前ら程度の奴らならモンスターの攻撃も当たらないがな。だから狙っているのに当てないんだろ。場外の相棒が水精霊の男子生徒さん。」


場外の一人の男子生徒はみんなから見られ顔を真っ赤にしつつ悔しそうにする。


「いじめだとは言うなよ。隙あらば首を掻っ攫うってんだ。さらされる覚悟も無しにいじめはするんじゃねえ。男だからって希少価値が高いだけで偉いわけじゃねえんだぜ。」


忘れているかもしれないがこの世界では1:3の男女比という特徴がある。今刺された男子生徒も種馬という点では希少な存在だ。それで彼は有頂天になり何をされても許されると勘違いしていいだけの実力と親の権力を持っていた。だがこの《スライムの祝福》を持っていると思われるプロ冒険者は自分がやってきた今までの行動を覚悟が足りないガキの所業と言い放ったのだ怒れないわけはなかった。ゆえに彼は力をため待つことにした。


自分が誰に逆らったのかを教えるために


しかしこの醜い少年は知らない。この男がこの国最強の男が認めた義息子という本当の意味を。

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