すたでぃー
「へえー。確かにそうだな。」
今度はオーガ三体を従えた生徒に加え上空から風魔法による攻撃を行わせる鷹の主人の生徒を相手にしていた。
「ロレンさん、勝負中に考え事できるくらい余裕なんですか!」
「いや、そもそも勝負中こそ考え事をしないとダメだぞ。うっかり狙撃が来るかも知れないだろ。周りをよく見て狙撃できそうなポイントタイミング俺がやるならこうするっていうのを考えておかないとプロ試験だとすぐ死ぬんだぜ。」
饒舌に語りながら水精霊の主人に莫大な殺気を送る。オーガ三体と風魔法を操る鷹ストームファルコンは自分たちに向けていられるものと勘違いし震える。
それだけではない。その場にいた生徒の、教師の、野生のすべてに至るまでのモンスターが恐怖した。そうたった一匹のスライムを除いて。
『こらーーーーーーーー!主人、殺気強すぎだよ。みんな怯えちゃうよ。生態系が乱れるからメってユウイチさんに言われたでしょう。プンプンッ!!』
ファニは俺にしか聞こえないように空気中に肉眼では見えないサイズの細胞を分裂させ俺目掛け一直線に飛ばすことで声を伝えた。
「つってもだいぶ抑えているんだけどな。それにな。」
「ねえ藤丸ちゃんたちどうしちゃったの?」
オーガ三体は涙を流し命を懇願するがごとくロレンにひれ伏していた。
「ガルタもなんでこっちに戻ってくるんだ。」
鷹の主人の子も命令が届かないのか困惑している。ストームファルコンは全速力で主人のところに戻っていた。
他のモンスターたちも既に戦意を喪失しており、特に水精霊に関しては主人を攻撃していた。
「何をするウイン。なんで俺を攻撃するんだ。」
バンッ!!
水弾で主人を気絶させると水精霊はこちらに向かってきた。
「この度はあのバカが失礼いたしました。こちらと申しましては旦那様に言って聞かせますのでお怒りを修めください。」
土下座し懇願するように水精霊は言った。もはや一族もろとも処刑されても文句は言わないと言わんばかりの鬼気迫る声音だった。
「怒ってはいないさ。覚悟のないガキに説教でもしようかと思っていただけだ。それとウインとか言ったか。」
「はい。」
「ならお前が罰を与えろ。一モンスターとして仕える主人を本気で正すべく必要な罰をかつて信仰を深めた精霊の一族として己がすべき罰を与えよ。それがこの授業において必要な罰だ。」
この男、精霊の神聖を知っている。そう思った水精霊は窮地に立たされていた。ここで生半可な罰を与えようものなら殺されることはないにしろ。風聞が悪くなる。こちらが最初に名乗らずに旦那様と言ったのはこちらが名乗りはしないがある程度影響力のある権力者という証明とお前なんぞ権力にひれ伏すしかないんだぞということを伝えるための牽制も兼ねて言いつつも親に任せることで場を修めようとしたのがそれは間違いということに水精霊は気が付かなかった。
「しかし、私ができる問題ではないので旦那様に一度相談を。」
「確か侯爵のおっさんだったよな。名前はフリードだったかな。確か親父に依頼した形跡があった俺が個人的に持っている商会にもちょっかいかけようとしたよな。たしかあのときも娘のことの罪をこちらに被せようとしていた気がするんだが。そんな男を信用しろと?ましてや初対面、信用が勝ち取れていない人間が出しゃばらせるな。今はお前に聞いているやるのか、やらないのか。」
水精霊は教師にも目を向けるが
「申し訳ございませんがプロ冒険者の方に喧嘩を売ったましてやこの国の貴族であるお方なら私たちは関与できません。二代目国王陛下より創られたこの学園は国民を守ることは記されておりますが、国民を守るだけの権力を与えられた力を持つ貴族を守る義務はありません。」
「しかし、わが主人は貴族の子であって貴族ではありません。」
「王国法において国の定めた上位の《世界の祝福》を持つ貴族の子に限っては貴族相応の権利を与えるというものがあります。そして《精霊の祝福》はそれに該当します。お判りいただけましたか。」
守る気は一切ないそこまで言うほどまでにプロ冒険者は恐ろしい。かつて無理やりにでもプロ冒険者を雇おうとした貴族は冒険者の親族を人質に取ろうとしたが逆に領地が何もかも壊滅させられたのだ。情報の伝達速度においてもプロ冒険者は計り知れずその圧倒的なまでの武力が牙をむいたのだ。他にも例はある。プロ冒険者には手を出すな。それは古い昔話と笑う者もいるが少なくともその教師の知る限りではロレンの持つパイプがそれに該当するレベルであることを察知していた。
この国に名を轟かせる二強
ユウイチ・シンキョウ
ユウゾウ・シンキョウ
この二人だけは手を出すな。それは貴族の界隈では有名にもほどがある。だからこそ彼女は他の生徒を守るために一人の問題を起こした生徒を犠牲にした。今なら彼の命も助かるとわかったからだ。冒険者ギルドはプロ冒険者を制御できない。あくまでも国に注意するために行っている試験であることをほとんどの人間は知らない。
彼女が知っているのはそういう家系だったからだ。
「流石学園長の孫娘と言ったところかな。さてさて水精霊決断しろ。何をもって罰とするのかを。」
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