進学クラス
「ねえねえ、今日プロ冒険者の人が講師としてやってくるんだって。どんな人が来るかな。」
「この国だとユウイチさんとかかな。」
「ユウイチさんが来たらすごいよね。あの人大規模商会の経営者だし。」
「でもあの人忙しいっていうし他の人かな。」
「それだとこの国には風紀委員長のお父さんくらいしか居ないよ。」
「じゃあ国外活動の人が偶々来たのかな。」
ガヤガヤと教室から話し声がする。
「ファニ、準備はいいか。」
「うん、主人♪」
ファニは触手で丸印を作りチュッと顔に身体を寄せた。
「それでは私が呼びますのでお願いします。」
担任のゴリラを従えた女性教師は一瞬スライムにすら私は負けたのかと思っていたのだがグッと心の奥底に仕舞い込み表情を引き締めるとロレンに事前の打ち合わせをする。
「ああ、学園長の言う通り現実を見せてやるさ。」
ガラガラ
「貴方達、今日は予告していた通りプロ冒険者の臨時講師の方を及びしているわ。今から紹介するから静かにしてなさい。」
「「「はーい!!」」」
ガラガラ
生徒たちはスライムを連れた俺を見ると一瞬落胆のような表情を浮かべたがすぐに顔を戻した。
「今回依頼を受けたロレン・シンキョウとその相棒のファニだ。」
俺は黒板に名前を書いていく。生徒たちはその名字に反応した。
「え、《スライムの祝福》の人でシンキョウってことはもしかして。」
相棒に雷精霊を連れた女子生徒が思わず声を出す。
「ああ、俺はユウゾウの義息子の1人でユウイチさんの弟子だよ。」
「「スゴっ!!」」
生徒たちは興奮しながらも相棒たちがそれを宥めていく。
「一応ランクはAだ。プロになったのは5歳くらいの時だからまあ経歴としては中堅もいいところだがな。」
実際問題プロ冒険者はプロ資格を取るとすぐに名を上げるの者がほとんど。ユウイチやユウゾウがこの国で一際有名なのも一重にプロ資格を取ったという有名税に加え功績によってさらに上乗せされたからである。ロレンは取った瞬間に他国に行ってしまったこともあり功績らしい功績も報告されていないのであまり知られていない。
「それでもスゴいですよ。どうやったらロレンさんみたくなれるんですか。」
生徒たちはその答えを今か今かと待っていた。彼らの殆どはまだ名を挙げていない貴族と平民。早く自分を認めてもらいたいというチャンスが巡ってきたのだ。逃さない手は無いだろう。
「うーんそうだな実際に経験した方がいいんじゃないか。担任の方、今日の校庭は確か一つは貸切にしていい手筈だったよな。」
「ええ、私の方からもそのように聞いておりますのでどうぞお使いください。」
そして俺と担任は静かに微笑んだ。
生徒たちはまだ迫り来る現実を知らない。
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