閑話

私は神を信仰させられていた。正確には子供の頃から感じられた神のようなモノが私の自我を侵食していた。


私は長く長くとても長い夢を見ていた気分だった。


そうわたしはみていた


ちいさくもちからづよいいしをもったものにあこがれねたみうらんでいたもうひとりのじぶんを


けれどなぜねたんでいたかはしらない


今現在、私は皇国からの任務でマライア王国の情報を集めていた。この国に居るシンキョウという人物達が我が国にとってどれ程の脅威になるかを測定するためだ。


ユウイチとユウゾウという人物を観ようとしたがアレらは化け物だ。私が情報を集めようとする前に殺気を放ってきたどころか私の放っていた相棒達を捕らえていた。だが所詮しがない天使達でしか無いため変えは効く。そちらよりもまず情報を本国に送るべく私のみ先に逃げた。


今日からロレンというRランク冒険者の義息子の情報を集めようとしていた矢先。ターゲットに見つかった。


ありえないと思った。


なんせ彼は5歳だ。彼らの親なら解る。他の家族も見たが大した奴は居なかった。だからあの2人だけだと思った。しかし老齢とはいえ竜を倒した男だ。ありえなくはない。だがどういう原理か彼は大人の姿をしている。戸籍情報を見る限り彼はまぎれもない5歳だ。


なぜかばれた。しかも私達の信仰の迫害対象の業魔と魔術を使っていた。私も見るのは初めてだったがアレらは歴戦の戦士にしか使えないと言われてきた者の筈で五年の歳月しか生きていない対象ができることが理解できない。


そう私はこの時知る由もないがアレらの修行は常軌を逸脱し精神崩壊しかねない程の濃密な過酷さ故に身に付けざる得なかったことを。


私は瞬く間に彼に攻撃を加えられ気絶した。


目を覚ましたときもう見れないと諦め切った憧れを再び見た。忘れる筈の無い鬼の如き彼女の力。でもそんな筈は無いと思った。彼は男だ。そして彼女は死んだのだ。彼女の娘と引き換えに。


だが彼が刃を研ぐ為に構えた瞬間、鬼が見えた。比喩などでは無い。彼の手が顔まで来た時、鬼の顔が姿を見せたのだ。


その刃は私の神としていたモノを斬り伏せていた。その技の数々はまるで教科書から作り出したお手本のように綺麗でいてまるで違う一切の隙が無いのだ。教科書で教科書でない。そう1+1=2というのが正しいかそう問われるようなまるでその答えが間違えていると言われているように思えた。


究極までに突き詰め探求した上で自分の答えを問い出した男の一撃はとても恐ろしかった。


そう彼女の息子に手を出したあの時のように鬼の如き顔とその金棒のように重厚で鋭利な殺意とその感情を。


思い出す、わたしは最恐にして最愛を欲したことを。願っても願っても叶えてもらえなかった、《スライムの祝福》を持つ末弟に。


そこから私の意識は途絶えた。

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