彼の者の名

「俺の名は◼️◼️◼️。ああ認識できないんだったな。愛称はロッツォだ。」


今度は連続で拳圧のソニックブームを行う


『君、代償型の魔術を使ったのかい?』


ソニックブームに対して分厚い光の壁で防いでいくノン。


「それを言う程お人好しじゃあ無いぜ。[業魔・一全]」


「な、私まで!?」


チェシルを無理矢理一本の棒にした。そこから彼の言葉は無くなった。


棒高跳びのように棒をしならせ高い弾みをつけ弾丸の様に飛び蹴りをする。


『君、本当に何者?』


光の壁を砕いたのだ。しかしまだ標的に距離がある。そこからロッツォが放つのは身体によって隠された棒からの螺旋回転突きだった。


それは銃を思わせる速さと正確無比の小さな的に大きな威力であり槍の突きのような突き刺すモノとは一線を化していた。腰から放たれるその仕草はどこかロレンとファニの使うツイストドロー系の技を思わせていた。


『[レインアリア]』


ノンは相殺こそするが既にロッツォは別の攻撃に入っていた。棒から繊維を一本剥がし見えない何かしらの力を用いて矢を創り出し番えた。そして放たれた矢は光矢と化した。


『本当に人間?』


今度は光を側面に出して光矢の起動を無理矢理逸らす。


だがロッツォは休む間も無く光矢を放っていく。弓の棒を回転させながらその遠心力で弦を早く戻し矢を次々と量産し放つ。


『流石に効いたよ。でも[レインカルテット]』


今度は4本に及ぶ光束を同時に放つ。


だがロッツォも変化させる。棒が分解し五節棍と化した。柔らかくしなやかな鞭の如き攻撃は光束の方向を次々とノンに向けた。


『自分の攻撃が効くと…不味い!』


光束は闇を生み出しノンを侵食した。


棒の形状に戻し薙ぎ払い、居合の構えをしたかと思うと抜刀する幻覚すら見えるほどの斬撃を放ち一刀両断した。そしてトドメに槍の突きを眉間に突き刺し、教科書通りの武術を叩き込んだ。


『まさか思念体の私をここまでやるとはね。』


「そうか偽物の愛を作った神よしばらく眠っていろ。」


そしてロッツォはファニとチェシルの技を解除した。


「ここからはよく見ておけロレンの契約者達よ。[魔憲・獄仙]八熱八寒から初まり八百となりし系譜の力をその身に刻め。」


鎧が変化し禍々しく虚しく哀れな和鎧を纏った姿がそこにあった。太刀を左手に持って右手の手甲と籠手は漆黒の刃こぼれした牙があしらわれていた。ロッツォは右手で掌底の構えを取り牙で太刀の刃を挟み研ぐように静かで静寂的な音を鳴らした。


『馬鹿な、あくまでも分体のはず、何故本体までもが封印されているんだ。』


「魔術と魔獣の王から学んだ術、[業魔]は貴様が拒み恐れた力の一つであり同時に最も認識しづらくには過ぎた力。ロレンや兄弟姉妹達に貴様は悪影響を与える。故にしばらく眠っていて貰おう。」


そしてロッツォは姿を消した。


「ファニ、チェシル。俺が俺で無くなってからどのくらい経った?」


「ロッツォとかいうのになって1分も経っていないよ。」


「そうか。すまない心配かけた。」


「ユウイチさんにも聞いてみましょう。」


「そうだな、これと一緒に運び出すか。」


ロレンは女騎士を担ぎ上げ火山を去って行った。

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