実の姉
事の顛末をユウゾウに話しつつサヒフ皇国の工作員を運び出したロレン。
「ふむ、確かに俺のところにも工作員は来ていたしユウゾウのところにも来ているだろう。おそらくロレンが捕まえたのはその主人だな。」
「へえ、ユウイチさんのところにも来てたのか。」
「ああ、下級天使が数体。丁度セイゴと戦った悪魔と同じくらいだ。中々の使い手だが神の尖兵と言った感じが強いからバックに何かいると思うぞ。」
「そういえばファニ、俺と似た感じがほんの少しだがするって言ってたよな。」
「うん、なんか主人に似てた。」
「じゃあ起きたら尋問するか?」
「そうだな。」
「する必要は無い。私はお前の異母姉だ。」
彼女は起き上がり瞳に真っ直ぐな意志を持ってロレンを見つめていた。
「何故確定して言える?」
「ロッツォ、そう呼ばれたのは私の異母、神崎 佐奈江の息子に他ならない。そしてその《スライムの祝福》が何よりの証拠だ。」
「本名は?」
まだ疑問が残るし不確定要素が多過ぎる為ユウイチは追求する
「それは◼︎◼︎◼︎だ。」
その声を認識できなかった。
「む、何故だ。言えない、違う言葉がわからない?」
自分が何故わからない発音をしたのかを理解せずまた名前も思い出せなくなっていることに気付くサヒフ皇国の工作員。
「認識阻害系の術か、それとも代償系?」
ロレンはすぐさま考えられる状況を思考する。
「ふむ、ロッツォから考えられる名前から推測はできる。それとお前の言うところのロッツォは記憶喪失で今はロレンという名前だ。」
ユウイチは冷静に考えていた。
「なんだ?」
「今それを教えるにはリスクが高い。代償系及び認識阻害系の場合、呪いもセットで付いてくる。だからそれらを解除するには施した本人との会話が必要になる。」
「それは無理じゃねえか?」
「そうでもない方法は存在する。だが俺の知る方法はマライア王国には存在しない。プロでないと行けない国だ。プロ試験への修行を早めるぞ。それとサヒフ皇国の工作員の君は現状は理解しているか?」
話を元に戻すユウイチ。
「私の記憶の影響を考えると侵食され始めたのは神崎さんが死んでからおかしくなり始めた。元々差別意識の低かった父も神への敬念を抱き始めたのと同時期でそして私の記憶が朧げになり始めたのもその頃からだ。今の私は皇国にとって利用価値は無に等しい。軍部の情報は父が握っていたし私はただ命令に疑問も持たず神への為とだけ思い遂行していただけに過ぎない。与えられた下級天使達もその手先だろう。以前は感じられていたパスが切れている。」
「それでアンタの名前は?」
ロレンの放った純粋な質問。それが現状
「私の名はタニア・フォン・ガロリア、サヒフ皇国エルフヘイム領より公爵家ガロリアの次女で歳は11。ロッツォは三男で妾の子で私の3つ下の現在8歳の弟で5歳児では無い。」
「ふむ、それで大体の魔術体系は絞れるが最も確実な方法が1つになってしまったな。」
ユウイチはすでに確証に辿り着いていた。だがユウイチは語れない。知り過ぎたモノであり今の時代を作る者の1人としてヒトである者の一人として彼は人を作らないために語るわけにはいかなかった。
「ロレン、お前は今はロレンだ。ロッツォというのはお前の記憶とは確証めいては言えない。だからこそお前はロレンだ。スライムにより引き出された先祖の細胞を活性化させようともお前はロレンで要られた。だからこそロレンを進化させろ。それがプロ試験が行われるまでの修行だ。ファニも同じだ。」
ロレンとファニのその瞳に煉獄の如き烈火が宿された。
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