その日の夜
「父さん。」
「ああ、見てやる。」
氣を循環させている。
「もう氣の扱いは良さそうだな。」
「ああ、親父!」
大人形態に戻ったロレン。
「久々の訓練、いや修行を付けてやる。かかって来なロレン。」
歩き父に近づくロレン。
(隙がだいぶ無くなったな。)
一見隙だらけに見えるようで足運び、重心の置き方に抜かりが無かった。
父は小さな小石をロレンの眉間目掛け指で弾く。
ロレンは避けずに一点集中で吐息を吹いた。
石は弾かれたが、父は二つロレンの眼前に石を放っていた。
今度は手を回し石を払いつつ石を投げ返す。
父は体制を低くし突撃する。たが足は地に付けつつ足を大きく使い体重を前に常に前に行く状態を作っていた。
ロレンもまた体制を低くする。寧ろ倒れ込むように身体を揺らす。
父はその技の本質を理解しすぐに突撃を辞め蛇の如き動きでロレンに横から手を鞭のように扱い攻撃を仕掛ける。
同じく鞭のような手つきで攻撃しつつ砂煙も上げていくロレン。
父は目を瞑り、そのままロレンと接触しながら発勁の連打と指を上手く使いロレンの急所にことごとく当てて行く。金的、鳩尾、筋肉中枢部、喉笛。
「グフォ!」
だが黙ってやられるロレンではなかった。
「やるじゃないか。指を三本も折られたのは久々だぞ。」
そう言い指の関節を戻す。
「ふぐぅ、未だ未だやるさ。」
あれほど急所を受ければ痛いというよりかは悶絶してもおかしくないロレンだったが闘志のみで堪える。
だが、父は間髪を入れずに蹴りを入れる。
ロレンもロレンでその足を掴み、威勢を逸らしつつ折りにかかる。
だが、父は靴を壊し足指を突き出しロレンをねじ伏せた。
ロレンは地面に叩きつけられる瞬間反動で上がる足を利用し父の金的に当てる。
さらに反動を利用し立ち上がり威力を三等分にする。
父は思わず顔をしかめるが構わずロレンを殴りにかかる。
ロレンは攻撃の軸をずらした。そして骨同士を繋ぎ合わせるように手を突き出しそのまま父に激突させる。
「ゴフォア!中々いい技を使う。」
そして父は再度攻撃をする今度はとても小さく鋭い攻撃を激突しないように超近距離の技を繰り出していく。掌底、膝打ち、握撃、肘打ち、頭突き。近距離攻撃のオンパレード。
だがロレンも負けてはいなかった。
「ん?」
父の視界がブレた。
それだけではない。身体から悪寒と震えが止まらない。
「なるほど脊髄に振動を与えたな。」
これがロレンにできた最後の反撃だった。
父の攻撃を自分の骨を通し振動して伝える。それも父に気づかれないよう攻撃ごとに攻撃部位から軟骨をわざと通常時と同じにして軟体部位から硬い部位に確実に振動のみを通す。
結果父は違和感なく攻撃が入ったことに違和感を感じていた。だが攻撃は続けた。ロレンの策に敢えて乗ったのだ。成長を見るために。
「気絶か、あれだけやってそれだけか。俺もまだまだだな。」
そうロレンは気絶のみをしていた。それ以外に外傷、内傷共にほぼ皆無。
「おーいロレン。」
肩を叩いた。
「うおっ!」
父は投げられた。全ての関節を外された。
「ふんぬ。」
父は関節を即座に戻し構えた。
がそれは無意味な行動だった。
「気絶したまま投げたのか。」
一応石を軽くぶつけてみるが反応は無かった。
「しゅーじーん!そろそろ寝よー!」
「おうファニいいところにきた。ロレンを運んでくれ。」
「どうしたの?」
ロレンをツンツンし始めるファニ。
「俺が担ぐと投げられたからファニに頼みたいんだが。」
「ファニ、ロレンはどこ。」
「あ、レナ。」
「父さん、ロレンの成長を見てたんだ。」
「ああ、それで気絶したんだが今投げられたからファニに運んでもらうよう頼んでる。」
「じゃあファニと一緒に運ぶよ。」
「いや投げられ……へ?」
レナが近づくとロレンは子供体型に戻り抱きついてきた。
「むむむ。」
不思議に思い父が近づくと
「おわっつ。」
投げられる。
今度は関節は外されなかった。そこまでいって父は理解した。
「うーん多分兄貴のせいか。」
「ユウイチ叔父さんの?」
「ああ、寝てる間もやるくらいに身につけさせられたのだろうが。どうやって分別してるかはわからん。」
「それ知ってるよー。主人、加齢臭とか獣臭でやってるって言ってたよ。技はなんか書物で覚えたって言ってた。」
父、ショックを受ける。もうそんな歳である。まだ娘に言われないだけマシかも知れない。
修行の成果は色濃く分かった。後は寝るだけだ。
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