修行30日目 最終試験
マライア王国東部辺境都市
東部チヤガ共和国国境
獄峰 ダダル山
この山は以前修行した活火山とは違い永久活火山と呼ばれ絶えず噴出するマグマと火山岩の数々と強力なモンスターの豊富さからマライア王国、チヤガ共和国と共に近づけない山となっていた。
ロレンはここでとある依頼を受けていた。
魔物爆発における魔物の間引き。
魔物爆発とは人口爆発の魔物版だ。
ロレンの現在のランクは初期のFのまま。
これはユウゾウの配慮でロレンがあまりに高ランクだと自信がつきすぎてしまう恐れがあるのと《スライムの祝福》が高ランクだと何かと目立つため騙されないようにとのことらしいがロレンは知らない。
そして魔物爆発の目安ランクはA以上。
あくまでも最低の目安、今回の地域の目安はランクS
生息するのは根源種の成り掛けのモンスターばかりでしかもドラゴン種が食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨する山だ。
この依頼がロレンのプロ試験を受けさせる上での最終試験であり同時に命がけの修行でもある。
「ファニ[最小魔王・一丸魔王軍・幸]チェシル[魔憲]」
モンスター達はびっしりと詰まっている。
「さあ未来の頂きを目指す時間だ。」
ロレン達の生存と成長を賭けた戦が今始まる。
「[草生・苔獣熊蟲]」
魔憲から産みでし苔が周りの栄養を吸い取り熊の姿を象る。
「[リロード・オブ・ロードオブゲノム]」
自分自身にナニカを込める。
準備は整った。既にこちらに迫り来る火属性のゴーレム系、爬虫類系、哺乳類系、オーガ系モンスター達の群れ、ロレンはその視界から姿を消した。次の瞬間ゴーレム系モンスター達が爆散した。
爆散し飛散したマグマの塊が他のモンスター達を襲う。
だが火属性のモンスターにとってそれは美味しいご飯でしか無かった。
そうロレンが何も仕込んでいなければ。
「「「Gyaaaa!!」」」
「[ロードオブゲノム]お前たちの遺伝子の最も弱い疫病を引き起こす。ただし身体の内側に入らなくてはならない。弱点があるが3割は駆除できたか。」
間引き自体はほぼ終わった。そう間引きを起こす必要のある原因の魔物を除いて。
「ヤレ苔獣。」
苔獣に残りを任せロレンは原因の魔物に挑む。
それはこの世界において全食物連鎖ピラミッドの頂点に位置することを許された存在であり全環境に適応する魔物。
古より災厄と豊穣の象徴とされたカミが一柱
その名は
竜
又の名を
神々への反逆者
ロレンが対峙したのは火山に適応し火属性を全身に身に纏う形態をした体長3メートルの竜だった。
「あんたが俺の相手か。」
「ほほう中々骨のあるスライムの源信者のようだな。」
竜は知能も高い。故に人語を操る。
「源信者?」
「知らんかったか。ぬしらで言う祝福授かりし魔物を根源にまで発展させた者達のことじゃよ。」
「へえ。」
「話し合いはここいらにして生存を賭けて戦おうか大人の姿の5歳児と根源の道を歩みしスライム達よ。」
「それをいうなら世代交代した癖にあーだこーだいって居座る歴戦の老竜のおっさん挑ませてもらうぜ。」
「「ふ」」
「Giraaaa!」
竜の咆哮と共に闘いの火蓋は切られた。
「[最小魔王・魔憲]」
今度はチェシルすらもロレンの体内に取り込む。
竜はその隙に超高温高圧の火炎放射を放つ。
……
ロレンのいた場所は跡形も無くキノコ雲が出来上がる。その余りの威力に音を通り越す程の衝撃波も辺りに広がる。
「ふむ、これで終わりとはつまらんの。」
ドカッ!ボキッ!
それはロレンの正拳突きが竜の頬を超えて歯にまで達した音だった。
「ほほう老骨には中々聞いたぞ童。」
大きな爪を用いて乱れ引っ掻きをしながら話す竜。
「嘘つけ既に新しい歯が生えてるじゃねえか。」
それを避けつつも爪の付け根に肘打ちを落とすロレン。
「ホッホッホ、当然じゃよ。まだまだ若い者には負けれんのでな。」
少しの怯みを見せず乱れ引っ掻きをしていく。
「若い者ね。今の俺は相当な老骨だと思うぜ。」
ロレンが指を振るい地面から植物が生え出し竜の爪を噛み合わせた。
「むむむ火山の土地に植物を植えるとはなんとも奇妙な魔よな。」
そう言いつつも炎を爪に纏わせ引き抜く竜。
「そうでもない。」
今度はロレンが竜の眼前に現れ眼球に拳を振るう。
「ヌフゥ、眼を狙うのはいいがちと儂の眼は丈夫過ぎたかの?」
再び爪を振るおうかとした瞬間
「[魔憲・空咲]」
竜の眼球が空間ごと抉り取られた。
「むむむ!?童、神への反逆者の力を扱うのか。」
だが竜は即座に他の五感を使い攻撃を再開する。
「神への反逆者か、神々の反逆者と呼ばれるあんたとは違う意味かい。[魔憲・花弁八百戦の舞]」
抉られた空間から無限の花弁を持つ花が咲きその花弁が竜を固める。
「違う意味じゃぞい。儂達の方が起源は先じゃしの。」
今度は全身の炎を活性化させ花弁を焼き尽くした。ついでに眼球のあった空間も焼き眼球を元の場所に戻す。
だが視界が元に戻ったとき竜はそれに切り替えてしまったことが仇となった。
スライムツイストドロー
その技は最小魔王がある一定の到達点に達したとき気づかされてできた技。細胞は全てが働いているわけでは無いということ。蟻の法則というものがある。蟻の巣では一定数必ず怠け者がいる。しかしその怠け者は窮地のときのみ誰より早く動き迅速に対応する。
細胞もまた同じこと。それを意識を持って動かせたらどうなるか。それはその身から放つ者だけが知れる境地かもしれない。
ロレンが編み出したのは生存本能による生物の逃げの初動における予備動作抜きの瞬発力とリミッターが外れることによって起こる筋肉の過剰運動の直接操作。
それがスライムツイストドローの正体であり同時に人間を超えたスライムとの合技でもある。
その技が竜の首の鱗目掛け放たれた。
「GIRAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
古来より竜の首の鱗に触れてはならぬと言われている。そう竜の逆鱗に触れてはならぬと。
ロレンは敢えてそこを突いた。何故なら
「フハハハハ!!最恐に勝つには最恐になるしかねえだろ![最小魔王・幸・魔憲]」
今までの技を組み上げ合わせ
昇華する
その名は
誰もが恐怖する象徴
この世で最も知られる恐れ
地震
雷
台風
津波
砂嵐
流砂
大寒波
吹雪
火事
噴火
そのどれにも当て嵌まらない
文明における最大の恐れ
病
人に病あれば伝播し病死に恐怖する
食物に病あれば飢え死ぬことに恐怖する
その病の起源たるや菌にしてあらず
呪いとして魔と呼ぶ
ウイルス
菌の魔物たるスライムがウイルスを再現しロレンを宿主とした。
生物の根源の力が今、顕現する
「[
ロレンの肉体は黒く瘴気を放っていた。
「さあ平等な時間だ。」
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