茶屋 和洋中
「へえロレンはそんなことやってたんだ。こっちは相変わらずだけどレ「ビアンカ。」ごめん何でもない」
「レナ姉が父さんの訓練つけてもらってるって話のことだろ。レナ姉を見れば判るから隠さなくてもいいよ。」
「む。」
レナは既にバレていたことにしょんぼりした。だがロレンはそっとレナを抱きしめる。
2人は何も言わない。
側から見れば仲のいい子供達が抱き合っているようにしか見えないだろう。だがその場にいた夫婦は気づいた。自分達同等かそれ以上の信頼の為せる慰めだと。
「さ、レナ姉行こうか。」
ロレン達は再び歩き出した。
「色んな意味で成長したなあロレン達は。」
涙ぐんでいる父、ユウゾウ。
「そうね成長したわね女狐に。(ゴゴゴゴゴゴゴゴ)」
「アンネ素直に感動しよう。2人とも可愛い我が子なんだから。」
「それでもよ。」
「まあまあ甘味処まで行ってみよう。ついでに俺たちもデートしようぜ。」
久しぶりにしないかという夫からの甘えに妻はかつての初恋を思い出す。
「そうねユウゾウさん。」
イチャイチャし始めるユウゾウ達、ロレン達を尾行していたとき打って変わりとても笑顔絶えない夫婦の像が見えた。
「レナ姉、ビアンカ姉さん着いたよ。」
茶屋 和洋中
「いらっしゃい。あらとても可愛いらしいお客さん達ね。坊や達は何食べてく?」
「アレっ!」
ジュピっ
ファニの触手が素早くメニューを指差す。
「あらあら賢いスライムね。わかったわ。他の子達はどうする?」
「じゃあファニと同じのと栗きんとん。」
ロレン、趣向が渋い。
「私は杏仁豆腐とスイートポテト!」
ビアンカはロレンと似たような趣向で行くようだ。だがこちらは子供らしい。
「私は端から端まで全部!!」
何処ぞの成金趣味の人間のような注文の仕方をするラル。
「私はこのりんごを使ったものを」
レナは皆と違い一つだけ頼むようだ。
「これ。」
「私は主人と同じモノを頼みます。」
「私も主君と一緒だ。」
各々メニューを決めるが一応財布ロレンとなっている。ロレンは修行がてらもらう冒険者の依頼の報酬を一割程度だが貰っている。残りは将来的に見聞を深めてから渡すということでユウイチが保管している。なので実際に端から端まで全部買えてしまうのだ。
「私は梅のタルトを頂こうかしら。」
「俺はずんだ餅を頼む。」
「父さん母さん。つけてたんだ。」
「当然だろ。ロレンが甘味処に行くって言ってたし場所は兄貴との修行場所に限られる。こんなにもヒントがいっぱいで乗らない手はないだろう。」
「そうねア、ナ、タ。」
チュッ
(謎の声S:夫婦愛がお熱いことでヒューヒュー。)
「ヒューヒュー!」(ラル)
「ヒューヒュー!」(ファニ)
「ヒューヒュー!」(さっきの店員)
何も熱いのは夫婦愛だけではない火花を散らす般若と魔女の姿がそこにあった。
父、場を和ませようとしたが無駄に終わる。
冷戦
互いにロレンと楽しみに来ているため静かに武力を見せつけている。ちゃっかりロレンの右隣に陣取るレナ、残る左はファニがいるため母が行くのは不可能。しかし母は父とのラブラブさを出すことでレナに挑戦状を叩きつける。
「さあさあどうぞ、お茶とお菓子ですよ。」
ロレン達の前にお菓子が運ばれてくる。
ファニが注文したのは味噌田楽。
豆腐に甘味噌を塗り焼いた物。
「はむはむ。おにく〜?チーズ?」
「これ不思議だけどとっても美味しいね。レナ姉も食べる?」
「ありがとうロレン。私のリンゴの葛桜も食べる?」
「ありがとうレナ姉。」
「はい、ロレンあ〜ん。」
その瞬間、レナはロレンと抱き合い自分の身体を襲い来る脅威の前に突き出した。
なぜ襲い来る脅威の前に自分のその身を突き出したのかレナ自身理解できなかった。
無意識だった身体が勝手に引き寄せられたようだった。(元ネタを知らない人は二部最終回で検索してください。)
しかしレナの肉体は知っていた生き抜こうとすレナの肉体が動かしたのだ。レナの生命の大車輪がレナの直感をプッシュしたのだ。
そしてそのエネルギーは襲い来る脅威の愛情の噴火活動のパワーとなって頂点に
「ロレン〜お母さんとも食べあいっこしましょう。」
「母さん、レナ姉と食べあいっこしちゃダメ?」
襲い来る脅威は愛情の噴火活動によって既に大気圏外から宇宙の彼方へ吹き飛ばされた。そして二度と戻ってくることは無かった。
「レナ、もう貴方にロレンは任せるわ。ロレン、いいわよ。」
「うんありがとう。」
「なんで?」
「覚悟は見えたからよ。もう私より恋をするのが早いから少し妬きすぎちゃったことに気づくのに遅過ぎただけよ。アナタ、私も昔のこと思い出したからいいかしら。」
ずんだ餅を食べながら父は頷く。
「まったく子どもに妬くのはいいがそれで盲目になり過ぎるのがアンネの良くないところでありいいところでもある。ラオスに彼女が出来てもきちんとラオスが愛しているなら受け入れる。そのくらいの寛容さが親ってもんだろう。俺達は貴族でも王族でも無ければ島国の住民でもない。自由がモットーだろ。」
父の威厳復活か?
「そうね。結婚できて愛を見つけてたけど恋を忘れてたみたい。ごめんなさいアナタ。」
「いいんだよ。こんな恋をしたアンネに俺は惚れたんだから。」
「「「………」」」
まじまじと夫婦になる前の純情さを見せられなんか負けた気がしたレナとこんなところで何やってんだと思うロレン達。
「んん〜美味しい。」
ラルはマイペースにガツガツと物理法則を無視してお菓子を食べていく。そんなラルを見てレナはロレンにお菓子を再度差し出す。
「ロレン、あ〜ん。」
というか無理矢理口に当てる。
突然口の中に入ってきた爽やかなリンゴの香りと甘い葛の味に驚きはするも顔を笑顔にするロレン。
中の餡はリンゴの風味がいっぱいに広がる酸味がやや強めでいてリンゴの果肉も楽しめるものだった。
「レナ姉、お返し。あ〜ん。」
ロレンは栗きんとんを匙ですくいレナに食べさせる
「ありがとう、はむ。」
この栗きんとん栗きんとんにして栗きんとんにあらず。栗の渋みの中にほんのりと香ばしい香りがあった。
「これはもしかしてウスターソース?」
「よくお気づきになられましたね。独自に栗きんとんに会うように作ったウスターソースをほんの一滴だけ入れておりますの。」
店員が答える。
「へえ。レナ姉、こっちも食べる?」
豆腐田楽を差し出すロレン。
「うん一口ちょうだい。」
パクリ
「これは発酵?」
「これまた正解。」
「なるほど和洋中言い得て妙だな。」
父はプロ冒険者として同時極東の出身としてあることに気づいた。
「そうですうちのオーナーは極東のプロ冒険者でして様々なところを旅しておいでです。故に馴染みやすいよう和をベースに西洋と中華の料理を付け加えております。」
「このずんだに山椒がほんの少し入っているのと小豆のメニューが無いのもその為か。」
「そうですね。やはりこの辺りの方々からすると小豆のお菓子は甘過ぎる為か小豆のお菓子が敬遠されがちですからかろうじてずんだは受け入れてもらえたのですが小豆のお菓子は常連さんの方々の中でも甘いものが特に好きな方々だけにお出ししております。よろしければお出ししますか?」
「いやいい。俺もそこまで好きでは無いからな。しかしお赤飯があるならいただきたい。」
「でしたらお持ちしますね。」
どこか父の懐かしげで悲しげな面影が子供達には見えた。
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