根源種

一通り泣き終わったロレン達はここにいたる経緯を話し合っていた。


「そうかやっぱりファニ達は先に戻っていたのか。」


「うん、主人は精霊達に何かされなかった?」


「そりゃあなあ。」


ロレンはため息をつきながらもレイを見やる。


「スーホ。」


「やったのはもう一体の風の精霊だったが危うく死にかけたぜ。水の精霊がいなけりゃと再戦出来ない身体にされてたよ。」


「おーいロレン君遅いから心配してきたぞ。」


ロレンが本題に入ろうとした時ユウイチとセイゴが、心配して様子を見に来たようだ。


「うお!根源種だと。」


ユウイチは来るなりレイを見て驚いていた。


「誰?」


「ユウイチ叔父さん。俺の叔父さんだ。」


「血。」


「ああ繋がってないぞ。」


「了解。」


会話が成り立つのが不思議なほどの言葉数の少なさにユウイチはポカーンとしていた。


「叔父さんなんで契約できたか知ってるか?」


「知らないなあ。ってか契約したから会話が成り立ってたのか。」


ユウイチは未だに情報が整理できていないながらも会話に関しては納得する。


「そうだけど。ユウイチ叔父さんも知らないのか。」


「信仰。」


自分を指差して言うレイ。


「信仰、つまり水か。」


「正解。」


「ということは身体の割合がほとんど水分なら契約可能なのか?」


「不正解。」


「じゃあなんだ。」


「私、水。」


「水?、まさかそんなはずはない。アレは信仰の対象には無かった筈だ。」


ユウイチは冷や汗をダラダラと流しながら恐る恐る自分の出した答えを出す。


「お、おまえいや、貴女はを司っているのか。」


「そう。」


「実在していたのか、最創原主と呼ばれる存在が。」


「ユウイチ叔父さん?」


ユウイチは口をパクパクさせながら怯えている。もはやロレンの言葉は届いてなかった。


「原初のモンスターがスライムなのか?」


今度はロレンが質問した。


「そういう意味ではない。原初、これを信仰の対象にするには神に匹敵、いやそれ以上のことが必要となる。そして精霊としての場合、それは源を意味する。」


答えたのはハゲことセイゴだった。ロレンはユウイチの知り合いという程度にしか知らない人物だがアールブの里に居たということはわかった。


「どういう意味だ。」


「水は生命の起源であり原初の概念に当たる。創造するにも外す事のできないものであり、同時に全てを混ぜることのできるものでもある。言わば創造の源、混沌と呼ぶに相応しい。その存在は人に置いて認知できない領域。故にダークマター、ダークエネルギーと呼ばれている。」


「それがレイだってのか?」


「正確には水に全てを溶け込ませた存在という結論だ。昔、ユウイチと魔力について考えていてな。その過程で得られたものだが、そこの精霊は根源種ということはそれを望んだ人間達が居たということに他ならない。即ち認知不可と呼ばれたものを認知し信仰された高度な文明が未だ未発見であり、記録が無い可能性があるがそれでも人類最高の文明を築いていたと推測できる。当然それを使った兵器もな。ユウイチが恐れているのはその兵器だ。」


セイゴもまた平静を装ってはいたが冷や汗をかいている。


ロレンは理解しきれずわかっていない。


「正解、特殊、転生者。」


レイはまた単語を並べて行く。


「特殊な転生者ってなんだ?」


ロレンは新たな聞きなれない単語に反応する。


「それは僕から話すぬん。」


経験値がいっぱいもらえそうなボディを持った液体金属生命体がセイゴの服からでてきた。


「うおおアンタ、スライムか!?」


「そうだぬんでも違うぬん。スライムの特殊個体ぬん。普通種とは根本的なのが違うぬん。」


そのスライム?は口があった。


「へえ特殊個体、そんなのがあるのか?」


「あるぬん。でもぬん、君は契約できないぬん。」


「なんでだ?《スライムの祝福》だぞ。」


「根源種の一種だからぬん。君のスライムも根源に近づいているぬん。だからもう君以外とは契約できないぬん。」


「根源種とは契約できないのか?」


「そうぬん。詳しくは知らないぬん。話を戻すぬん。特殊な転生をしたセイゴぬんは会った当時既に根源種だったヌンぬんに契約をしたぬん。セイゴぬんは前世で死んでから身体そのままに来たぬん。だから《世界の祝福》を持っていなかったぬん。でもヌンぬんが契約したいと思っていたらできたぬん。」


長ったらしい説明であった。そしてその説明に半端飽きてしまったのか的外れなことを聞いてみるロレン。


「なあアンタの名前ってヌンぬんなのか。」


「そうぬん。セイゴが付けたぬん。」


セイゴに視線が集まった。


「わかりやすくていいだろ?」


「まあいいそのヌンぬんの根源はなんなんだセイゴ。」


半端呆れてながらもまだ説明不足だと解説を促すユウイチ。


「俺がスライム、ヌンぬんに見出した根源は液体金属に対する恐怖心。それがヌンぬんの根源だ。」


「お前確か、二種取ってたんだっけ?」


ユウイチがふと質問する。二種とは電気工事士のことだ。


(謎の声S:他にも該当するものはあるが少々濁させてもらいます。ただ歴史的に結構言われてきたことなので予想してください。)


「お前に勧められてな。」


何こいつ忘れてんだって目でユウイチを見るセイゴ。


「悪いセイゴ。」


「まあいい、ヌンぬんの根源もわかったしな。つーか二種のテストなんで、あんな平成時代の問題が出てくるんだよ。俺たちの元号の五つも前だぞ。」


「まあまあ、俺の受けた年も出たしよ。空き家なんかでたまにあるらしいから気をつけて欲しいんだろ。」


「それを言ったらしょうがないけどな。実際労災保険の適用だし、長期で見ても危ないからな。」


「すまないユウイチ殿、私にはさっぱりわからないのだが。」


「あーすまない。前世の話だ。要はヌンぬんの根源は液体金属。」


「液体金属とはなんでしょうか?」


「水銀、この世で唯一無二に創られた常温での液体を保つ金属原子。神話の全ての銀の水はこれから造られている。それが故に根源となりえる存在であり生命である。」


「初めて聞きました。」


「その話は置いておくが根源種と契約できない理由の仮説を述べるがいいか?」


全員頷く。


「そもそも根源種は神に近い存在とされている。では神に該当するモンスターと《神の祝福》を持つ者たちはその強大すぎる力から一体しか契約は出来ない。ここまではいいな。」


ユウイチが話したことは修行中の母の授業で習っていたことである。故に皆は頷く。


「じゃあ根源種とはその強大な根源を引き出せれば全ての人間に契約可能なモンスターでは無いか、原初の精霊とヌンぬん?」


「正解。」


「多分そうぬん。自分は知らないぬん。」


「俺がすぐに見出すまではヌンぬんは明確な意思を持ってはいなかった。知識や言葉ば知っていたが聞かれたら答えるような感じだったし、多分精霊見たいに信仰とかはされたことが無かったもしくは偶像的崇拝がされなかった説が考えられる範囲だろう。」


今度はセイゴが話す。


「「「?」」」


ユウイチ以外の全員が首を傾げる。


「原初の精霊が正解と言ってはいるが補足があるだろう。契約者の器が大きくなければそれを受け止めることはできない。そのためここでロレンに疑問が残る。なぜ原初の精霊という強大過ぎる力を入れて他のスライム達と契約できている?」


「根源、神、否。」


「確かに神とは違うが何故そんなに契約できたんだ?」


ユウイチはさらにレイに質疑をする。


「根源、承認、契約。」


「根源種が承認すれば契約ができる、例え器が容量オーバーだったとしても、それであっているか。」


「肯定。」


根源種という祝福の垣根を超えたモンスターが契約できるという事実はもはや《神の祝福》や《ドラゴンの祝福》への反逆をやり兼ねない現実が判明した瞬間であった。



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