毒の煉獄(2)

(コイツは一酸化炭素か!?)


ロレンは理解する。


ヘモグロビンとの結合率は酸素の結合率の250倍にも及ぶ一酸化炭素。酸素を取り込んでいたロレンだが呼吸は癖として早々辞められるものではなく、吸ってしまった一酸化炭素の結合率には抗えず身体が動かなくなった。


(思考が止まる。チェシル!)


チェシルはすぐさま魔力を極限まで込めた葉緑体をロレンの全ての細胞で作り出す。そしてすぐさま一酸化炭素を分解、除去し酸素と糖を生成する。


「ッハア!」


息を吹き返した。


だが既に死神の鎌はロレンの首を狩っていた。


ロレンの視界が空を舞う。


だがロレン体内のファニ達がすぐさま首の切り口から触手を放出、直ちに血管、神経器官を接合する。


次に龍は火を噴いた。吹いたのではなく噴いたのだ。そう活火山のようにまるで唸るように可視化された炎が激しく燃える。


(ヤバい!)


直撃する





かに見えた


ロレンは咄嗟に背を向け銃の引き金を引く。そして銃弾を地面に落としその爆風と共に吹っ飛ばされることで難を逃れた。


龍は最初から当たらなかったことに気づいていたかのように既に2発目を放つ。


(もっとだ。もっとスライムの根源を、ファニとチェシルが歩んだ軌跡を引き出す!)


ロレンとファニの作り出したアパッチリボルバーとチェシルの炎がロレンと融合し始めた。


「業魔は!

俺たちの生!

ならば俺たちは!

運命に抗いし、最恐だアアアア!!」


ロレンは吠える、自分に言い聞かせ暗示をかける。そうそういう自分であれと追いかけるように。


ロレンの腕は変化する。手の大きさは変わらない。だがその指の関節部はアパッチリボルバーのナックルバスターそのままにハンマーのようなり手の平は銃口のようなものが出来ていた。そして極め付けは腕はそのままの外見なのに刀を見ているような錯覚を起こす程のナイフ部と融合した部分だった。


チェシルとの融合は終わっていない。だがロレンはそのまま迫りくる閻を手の平の銃口から砲撃を放ち破壊した。


爆風が走る中、ロレンは腕をそっと振り下ろし空を斬りつけた。


爆風が斬り裂かれ龍の鱗を僅かに傷つける。


そしてチェシルとの融合が終わった。


ロレンはその瞬間とき、地獄となった。


「[八熱地獄]」


ロレンは叡智の主人達をイメージして熱を纏う。そして熱を足に一瞬だけ集中させ踏み出す。空気が一気に膨張し爆風となってロレンの推進力となった。


そして懐に入った。龍は既に毒霧を吐いていた。


「[八寒地獄]」


その瞬間毒霧が凍った。


「[舌抜き]」


今度は閻魔が3人現れ龍の3つの首から舌を鉄鋏で抜きにかかった。


だが龍は全ての鉄鋏を噛み切った。


閻魔達は鉄鋏が切られると霧散した。


だが隙は出来た。


ロレンはその真ん中の首に拳と肘を叩き込む。


だが、ビクともしなかった。


そして凶爪が再びロレンに迫る。


その凶爪をそっと撫で斬った。


初めてロレンの攻撃が通用した瞬間だった。


だが、龍はロレンの首を繋げるのと全く同じ行為をした。


そして、龍は先程の威力が月とスッポンに思える程のもはや煉獄というに相応しい炎を創った。


ロレンのその身を消滅させんばかりの威勢だ。ここまで来ては八寒地獄は無意味と判断したロレンはチェシルの地獄をファニの銃口に込める。


そして彼は引き抜く。ツイストドローを持って、最速の一撃を!


爆発が起きる。


爆風が晴れるとそこにはロレンは身体の殆どを黒焦げにされた姿があった。完全なる満身創痍、勝負は既に見えてしまった。


「貴様は我が根源の挑戦者の中では下の下もいいところだ。」


目の前のが喋った。


(喋れたのか。)


「故に問う。何故、精霊の力を拒んだ。」


「か、んた、ん、だ。お、、た、は。」


ロレンは死に絶えそうな声でさらに振り絞って宣言する。


「生きているのだから!」


「生きている、か。確かに力を与えられるのは侮辱に他ならぬ。」


生きている


この言葉に込められた真意を理解、否、既に知っていた根源種。


それが彼の根源なのだから。


「いいだろう我が試練、生身で受けるその時までせいぜい足掻け!そして人の道を踏み外すな童よ。」


根源種からのその言葉と共にロレンは精霊の世界に返された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る