風呂と訓練

ロレンの家のお風呂はでお湯は千が沸かしている。ロレンは知らないが浴室を建てたのも次女のメィである。


お風呂に入ったのは何回もあるが、何度入っても面白みのあるお風呂である。何故なら

「あわわわわ。」

ジェットバスである。灯は火を用いているがジェットバス自体は緻密な計算の元、深成岩に穴を開けお湯に別途に取り付けた浄化装置に行き来する道にして、浄化装置から排出したお湯を浴槽に極めて小さな無数の穴を開けることでジェットバスの様な風呂に仕上がったというわけである。また深成岩を使っているためちょっとした温泉気分を楽しめる優れものでもある。


「ロレン、楽しいのは分かるがタオルが落ちそうになっているぞ。」

頭を洗いながら言う父。


「あ、父さんありがとう。」

そう言い頭に乗せていたタオルを整える。

ちなみにファニはお風呂の下でロレン足りない背丈の分を補っている。


「そういえば父さん十は?」


「後10秒数えたら来るから待ってろ。」

そう言いながら身体を洗う父


「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。たったよ父さん。」


「ロレン湯船の中見てみろ。」

顔を洗いながら言う父。


ロレンは潜ってみるすると十が流れるお湯の中心に居た。


「十、捕まえた!!」


「ニャー。」


十を捕まえたロレン。だが十はお湯の中に居たと言うのに全く濡れていなかった。


「ロレン、お前の今からやる修行は十の身体を覆っている氣のバリアを破ることだ。」


「なんで?」


「十は見ての通り濡れるのが凄く苦手でな。身体を洗おうとしてやっても今みたいに氣を体毛に使って水を弾いちまうんだよ。」

十を見てみると汚れてこそ居なかったが千よりも獣臭かった。


「そうなんだ。じゃあお湯につければ良いのかな?」

そう言い十をお湯につけてみるがやはり弾いてしまう。


「あー言い忘れたが十の氣はほぼ無制限に使えるからお湯につけるだけじゃ意味が無いぞ。」

父が忘れた様に解説する。


「えーそんなの狡いよー。」

ブーブー言うロレン。


「やり方自体は簡単だぞ。十の氣のバリアを打ち破るには昼の訓練にやってもらった氣を流してもらった奴を自分から氣を引っ張り出せば良いだけだぞ。」


「僕覚えていないよ。」

昼の訓練のときに受けた術の感覚なんぞ精一杯木に登ったり自分の分身に戦ったりとした為に覚えていないロレン。


「甘えるな。冒険者になったら何もかも自分でやるんだこれも練習だ。」

5歳の時期から自立を心掛けさせる父。


「うーんじゃあやってみる。」

そう言いながら何となく踏ん張って十を抱きしめてみる。


「ニャニャ。」

しかし、十は氣のバリアで護られいている。

そればかりか十は反撃してきた。


「うががががが!!!」


ロレンにとんでもない量の氣が流し込まれた。その感覚は電気風呂に入った感覚のようだった。


「ロレン離すなよ。もう少しで慣れっから。」


すると父の言う通り痛く無くなってきたロレン。


「ま、明日の朝までにその氣のバリアを剥がすことができなかったら別の修行をつけるから気長ににやった方がいいぞ。ついでにビアンカ達に本を読んでもらいな。」


「はーい。」


「じゃあロレンお前はそろそろ上がれ、のぼせるぞ。」


そう父に言われたのでファニがロレンを押し上げお風呂から上がる。


〜回想〜


お風呂から上がるとまだお風呂に入っていないビアンカがいた。


「ロレン、父さ…その十はどうしたの?」


ロレンが腕に抱えている十の事を指差しながら言うビアンカ。


「十の氣のバリアを破るのが修行なんだって。だからビアンカ姉さんに本を読んでもらいながらでもできるって。」


ファニが分裂体を無数に作り出し泡を表現して十を指差す事で補足する。


「あー十は濡れるの苦手だからね。」

ファニの仕草を見て納得するビアンカ。


「とりあえず私が十の汚れを燃やすか。」

そう言いながらメラメラと炎を燃やすラル。


「そうね。ラル[浄化の炎]」


ラルは十の汚れを焼いていく。十の獣臭さは無くなり代わりに焦げ臭い匂いが残った。


「ロレン、十の汚れは落としたから後は匂いを消す為に氣を打ち破れる様に頑張りなさい。じゃ、お風呂に入るから。」


「コラ、ビアンカ。レナが来るまで待ちなさい。」

母が台所から出てきてビアンカに注意を促す。


「レナは手伝いをしてるものね。じゃあ待つわ母さん。」

素直にレナの事情を考え待つことにしたビアンカ。


「ねえ母さん。レナ姉さんは何をしているの?」


「お皿拭きよ。レナはお母さんみたいに恋する乙女になりたいのよ。」


「恋する乙女ってなあに?」

ここでロレンによる子供にされると返すのが難しい質問が出された。


「ふふ、お母さんはお父さんことが大好きでしょう。レナにも大好きな人を支えられる様になりたいと思う時期が来たのよロレン。」

まるで若かりしあの頃を思い出す様に言う母


「そうなんだ。レナ姉さん頑張ってるんだね。」

流石にあれだけの好意を向けられれば鈍感にはなれないロレン。その今までのただの好意の押し付けとは違うベクトルの好意に興味津々といったご様子。


「そうよ。だから、少しばかり見守ってあげてねロレン、ビアンカ。」


「うんわかった。」

素直な返事のロレン。


「はーい。」

ズボラな返事のビアンカ。


「ビアンカ、後10分もしたらレナのお皿拭きと片付けも終わるから。それまでお風呂は待ってなさい。」


「うん。ロレン一緒にそれまで十のバリアを破ろう。」


「うん。ビアンカ姉さん。」


「まず十のバリアは私の知る限りだと十に害を成すものと嫌いなものを弾く性質があるわ。だから、さっきのラルの炎は弾かなかったの。それで氣を出す方法だけど姉さん達曰くヘソの近くから感じられるようになったって言ってたから、取り敢えず踏ん張ればなんとかなるわ。」

何の根拠も無しに踏ん張れと言うビアンカ。


「うん。」

ロレンはそのことに気づかず返事をする。


「だからロレン。十を撫で回して氣の緩んだ隙にバリアを破るのよ。」


「わかった。」

そう言いロレンは十を撫でる。


ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ


「にゃん。」

十が喘ぎ声と満足そうな顔をした。


「今よ!」


「ふんぬ。」


ビアンカが叫んだと同時に踏ん張ってみるロレン。


しかし、何も起こらなかった。


「うーん、出来ないわね。もっと気持ち良くなる様に撫でてみて。」


「じゃあ耳とかも撫でてみる。」


ナデナデ

うりうり

ナデナデ

うりうり

ナデナデ

「にゃにゃー。」

今度はくすぐったいのか少し抵抗した十。


「ふんぬ。」


しかし、何も起こらなかった。


「ここまで何もないと難しいわね。」


「じゃあ今度は色々やってみる。」

ロレンは以前この家に来たばかりの時、千がよく遊んでくれていたときにやったことをしてみた。


マタタビを出し抱きしめて顔に頬ずりしながらマタタビの匂いを嗅がせる。


「にゃにゃ〜にゃんにゃ〜。」

目論見通り十は酔っ払っている。


「よし、次は撫でて気持ち良くして寝かせたら多分出来そうだからやってみる。」


「そうね。流石に寝ながらは出来ないでしょうし、撫でるだけなら眠くなるしね。」

ビアンカも賛同する。


ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

「にゃふーん。」

十は眠そうだがロレンはさらに撫でる。


ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ

ナデナデ


「Zzz............」

どうやら十は寝た様だ。


まるで鬼退治でもするかの様に十を酔わせ眠らせる。


「じゃあ、ふんぬ。」


しかし十は寝たままで何も起きない。


「見た目は変わらないかもしれないし水をかけてみるわ。」

そう言いビアンカはコップを持って十に水を掛けてみる。しかし十の毛が水を弾いた。


「うーん、ダメかあ。ラル取り敢えず〔乾火かんび〕。」


「ほいっとな。」


ラルは十が弾いて落ちた水を薄い膜状の炎を乾かす。


「ビアンカ、ラル、レナのお手伝いが終わったからお風呂に入るわよ。」


「じゃあロレン。お風呂に入ってくるから。お風呂から出たら絵本を読みながら十を抱いてみれば多分キッカケはつかめるかもしれないから気長にやりましょう。」

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