レナの覚醒

家に着いたロレン達は事のあらましを母達に伝えていた。


「それでレナはこんな風になっちゃったの?」


レナはもうブツブツと言うのをやめ、床に丸を書いている。


「うん。僕がミーナお姉さんに勧められた本を受け取ったときにこんな風になっちゃった。」


「うーん、それだけだと多分レナはこうならないしどうしたのかしら。」


「ママさんママさん。レナの野郎こんな物を持っていやしたぜ。」


ラルは小声でアンネに近づき何処からか本を出した。


【男を上手く落とす方法ベスト10(R18)】


「……ラルありがとう。報酬は好きなお菓子食べ放題で良いかしら。」


「ええもちろん。アップルパイをワンホールで。」


「わかったわ。」


それだけを言い無言でしまう。


「みんな、レナの説得は私がするから。ご飯までには今までのレナに戻らせるから手を洗って来なさい。」


ラルとの間に何があったか知らないロレン達は疑問を浮かべるが母が言うなら間違いないだろうと思い手を洗いに行った。


「さてロレン達は居なくなったわね。」


ロレン達が完全に居なくなったのを確認したアンネはレナに話しかける。


「レナ、貴女私が隠していた本を読んだでしょう。」


レナはピクリと反応する。


「別に怒ってないわ。私もそんな本読んでお父さんにアプローチなんてよくしたなあとしか思ってないし、何よりあの本を置いといた場所なんか忘れてしまったしね。」


レナがまたピクリと反応する。


「けれどねレナ。私がお父さんを射止めたのはあの本のおかげじゃないわよ。」


「どうやって父さんを射止めたの?」

ようやくマトモに声を出したレナ。


「ふふ、それは秘密と言いたいところだけど教えてあげるわ。お父さんが冒険者だったのは知ってるわね。お父さんは色んなところ駆け巡っていたわ。私と出会ったのも丁度レナと同じくらいだったわね。」


懐かしみながらレナに話す母。レナはそんな母の話を熱心に耳を傾けていた。


「その時依頼で来たお父さんにその場でプロポーズしたの。その時のお父さんはまだ13歳でかっこよかったのよ。今でもかっこいいけどね。それでその時お父さんはね「うーんそうだな俺がRランクのプロ冒険者になるまで覚えていたら考えといてやるよ。」ってね。それからただ単にずっと一途に好きで居続けて8年経った頃にもう一度依頼でお父さんが来た時にね。その時既にRランクになっていたから私が6歳の時に約束したことを訪ねたの。レナはどう言ったと思う?」


「父さんは覚えていた。」


なんだかんだで物覚えの良い父であるためそう考えたレナ。しかし母は首を振り、


「お父さんは覚えていなかったわ。だから私は泣いたわ。そんな時に読んだのがレナが読んだ本。これを読んで絶対お父さんをモノにしてやるってね。」


「それで成功したの?」


「しなかったというよりも出来なかったわ。だってお父さんは依頼が終わったらすぐに別のところ行ってしまったもの。」


じゃあどうやって今のような夫婦になったと言わんばかりにプンプンしてるレナ。


「レナ怒らないで、今話すから。それで私はお父さんのことが諦められないまま待ち続けるしかなかったの。牧場のこともあったからね。そんな時母さん、レナのおばあちゃんがお父さんの帰ってくる人になりなさいって言ったの。それから2年お父さんのことを近くに来ないか調べながらチャンスを待って突撃して告白したわ。私を貴方の帰る場所にしてくれますかってね。」


「返事は?」


「もちろん振られたわ。自分は結婚しないってね。私はそれでも諦められなくてせめて今まで頑張った成果を見てもらったわ。」


「何を見てもらったの?」


「あの人が好きなお酒に合うおつまみと最後に食べるお菓子よ。それを食べてもらってからちょくちょく家に来てくれるようになってね。それで何とか結婚したわ。レナ、お母さんが言いたいのはね。一途に想い続けてそしてその人の為になるナニカを見つければおのずと想いは伝わるものよ。」


「うん、でもロレンは私のことが嫌い。」


「ロレンがレナのことを嫌いなものですか。ロレンはレナに対して度が過ぎているところは少し引いているけれどロレンを抱き枕にしてもそこまで怒らないでしょう。だからロレンはレナのことを好意的に思っているわよ。」


このほぼほぼ母の惚気話であったが弱ったレナには何かくるものがあったらしい。


「じゃあ私は何をすればいいの?」


「そればっかりは自分で決めるしかないわ。レナ、貴女自身がロレンのことを誰よりも何よりも想う心があるならできるはずよ。」


「うん、ロレンが振り向いてくれるナニカを見つける!!」


「頑張りなさい。でもロレンはお母さんも婿にはやる気はないからね。(精々這いつくばってろ。貴様は今はまだ我が息子に値する器ではないわ。)」


突然の般若の登場と般若自身が母の言動に一致してないことにビビるレナであったが勇気とロレンと一緒に居たい思う気持ちを持って答えた。


「絶対母さんからロレンを奪ってみせる!」


「ならちゃんとお料理や家事も覚えないとね。(うちの味、製法(作業方法)を盗めるもんなら盗んでみな。)」


「うん、頑張るだから母さん、夕飯の準備を手伝わせて。」


「いいわよ。先ずはお皿洗いとお皿拭きからお願いするわね。」


側から見れば仲のいい親子の会話だったかもしれない。だがそこには息子を守護する親とその男を奪うがために技を盗まんとする女の挑戦が叩き込まれた瞬間でもあった。


〜回想〜


夕食にて

本日の夕食は麦粥とアスパラガスと夏辣子蓮根と豚のガツ直腸てっぽうの炒め物である。尚アスパラガスは成長し過ぎたものを使っており全体的によく噛む必要のある炒め物となっている。子供達はそれでは食べられないので厚さが半分になるようスライスされていながらも顎の力を強化できるような献立であった。ちなみに食卓には千、百、十も居る。みんなそれぞれ羊肉を食べている。


「ロレンさっきは慰めてくれてありがとう。」

復活したレナがロレンにお礼を言う。


「レナ姉さんさっきはだいぶ落ち込んでいたけれどもう大丈夫なの?」

あれほどレナが落ち込んでいるのを見たことがなかったロレンは本当に大丈夫なのかと心配する。


「うん大丈夫だよ。お母さんのおかげで復帰したから。」


「そっか。」


「しっかしねえあのレナがあそこまで落ち込んだのは見ものだったわよねえラル。」


「確かにそうだったなビアンカ。」


「ビアンカ、ラルあまり蒸し返さないの。特にビアンカ、貴女もいずれそうなるかもしれないんだからレナに仕返しされるわよ。」


「そんな母さん、私がレナみたいになるわけないわよ。」

そんなことあるわけないと一蹴するビアンカ。


「それはビアンカがまだ子供だからよ。」


「じゃあレナは大人になら歳が上の私も大人じゃないの?」


「レナも大人ではないけど乙女ではあるわ。そこがビアンカとの違いでもあるし、普通は大人になってから成るものなんだけどレナは少しばかり早くなったのよ。」


ビアンカは釈然としないがとりあえずは納得した。

ここでふと父が会話に入ってきた。


「そういえばロレン、夜の訓練は百の術が使えないから十の術だけするぞ。」


「えー父さん、夜もロレンに訓練させるの?」

珍しくも抗議の声を上げたのはビアンカだ。


「なんだ他の兄弟姉妹のときはやらせてたが何かロレンとしたいことでもあるのか?」


「今日、図書館に行って絵本をロレンが借りたの、だから私が読ませてあげようと思って。」


「なら大丈夫だぞ。本も読みながらでもできる訓練だからな。」


「え、父さんはロレンにどんな訓練をさせるの?」

さすがに本を読みながらでもできる訓練と聞いてどんなことをするのか気になったのかレナが話しかけてきた。


「十の氣を無理矢理ロレンに流し込んでロレンの身体を頑丈にするだけだぞ。」


「本当にそれだけ?」

疑い深くレナは聞く。


「ああ、もちろんだ。痛いくらいで済む。」


「じゃあロレン、レナと一緒に読みましょう。」


「うん、お願いビアンカ姉さん。」


「うん、でも私はこれからお母さんの手伝いをするからそれが終わってからにするね。」


「レナ貴女大丈夫?いつもならロレンに構うじゃない。やっぱり図書館でのことが残っているんじゃない?」

レナの豹変ぶりに


「大丈夫。私はこれからロレンのためになることを見つけたいから。」


(謎の声S:く、量産品から新たな型に成りやがった。〜英語で直訳して下さい〜)


「ビアンカ、これが乙女というものよ。」

母はレナに覚醒の呪文を唱えた。レナは変態ブラコン姉から清純ブラコン姉にジョブチェンジした。


「母さん、顎が痛い。」

先ほどから殆ど喋っていないロレンであったがどうやらアスパラガスと夏辣子蓮根と豚のガツ直腸てっぽうの炒め物を食べるのに苦戦して顎が筋肉痛になったようだ。


「ロレン、硬かった?少し切るのが厚かったかしら。」

少し調理に失敗したと思う母。しかし、子供のうちに顎を鍛えておかないと永久歯になったときに歯が弱くなりやすいため今のうちに歯と顎を丈夫にしておきたいという心情があった。


「もう、食べれない。」


「少し待ってね。今切って細かくするから。」


そう言い母はロレンのお皿を持っていく。


「ロレン大丈夫、どこが痛いの?」

そう言いロレンを見るは覚醒レナンゲリオン


「耳の下が痛い。」

心底痛そうにするロレン。


「少し待ってね。マッコリ、[結液]」


するとマッコリは分裂体を作り出しロレンの顎の筋肉の中に入りなるべく神経に近いところから筋繊維を一本一本乳に含まれる凝固成分で繋ぎ筋肉を腐らせないようにする乳酸を助けながら痛みを引くように鎮痛作用のあるアドレナリンを出して治療した。


「レナ姉さんありがとう。」


「うんどういたしまして。」


すると母が戻ってきた。

「ロレン大丈夫、今切って炒め直したものを持ってきたけれど食べれそう?」


「レナ姉さんが治療してくれたから大丈夫。」


「あらレナが。レナ、いつの間にそんなことできるようになったの?」


「ロレンと図書館行ったとき改めて学んでみて思いついた。けれども基本的にはマッコリに全て技の制御を任せているから詳しい原理はわからない。」


「そうなの、それじゃあお母さんのスフィンクスにでも技の原理を聞いてあげるからそれまで使うのはやめておきなさい。後で後遺症が出ると困るから。」

そう注意する母。


「うんわかった。これからは相談する。」


「レナとマッコリの治療法がわかったらレナに頼んでも良いか?」

聞いてきた父であるが頼むというのは訓練後の治療についてである。


「うーん、スフィンクス次第ね。」


「じゃあとりあえずロレン。食べ終わったら十と風呂に入るからお前も一緒に来い。」


「うんわかった。」

パクパクと炒め物を食べながら言うロレン。


こうして楽しい食事の時間は過ぎていく。


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