ゼネコン蟻の巣1

ドッチボールの試合に勝ったロレンは一先ず賭けに勝った要求は保留にしてミーナが村を案内してくれると言うのでみんなでお散歩をしていた。


「あ〜、ロレンをずっと抱きしめたかった。」

願望垂れ流し中の敗者のレナ


「レナはブレないわね。私だったらロレンを着せ替え人形にして妹になってもらうわ。」

サラッと恐ろしいことを言っているビアンカ。


「それ、名案!」

レナも賛同する。


「そうでしょう。確か昔使ったリボンなんかもあった筈だから母さんにも言ってやってみましょうよ。」

母まで巻き込む予定らしい。


そんな会話が聞こえたロレンは身震いする。


「この村にはね。ロレン君のビアンカちゃんたちより上のお兄ちゃんお姉ちゃんの作ったものがいっぱいあるの。」


「あーそうね。特に次女のメィ姉さんとか相棒のモハメドと大規模なの作っていたわね。」

そんなことあったなあと思うビアンカ


「確かにアレは凄かった。」

レナがもう昔のことのようにつぶやく。


「ねえ、アレってなに?」

兄弟姉妹のことを知らないロレンは疑問を浮かべる。


「今から行くところだからもうすぐ見えるからちょっと待っててねロレン君。」


ミーナそう言ってから歩くこと10分後何やら主に土壁で作られた建物が見えてきた。


「これがメィ姉さんと相棒の建築会蟻けんちくかいぎのモハメドで作った蟻塚よ。」


ビアンカが紹介した蟻塚は蟻塚と言うよりも完全な要塞と言った方がまだ信頼できるほどに大きく立派な城だった。


「メィお姉ちゃんは《蟻の祝福》なの?」

《蟻の祝福》は下から数えた方が早い祝福である。


「ええそうよ。その相棒である建築会蟻は別名ゼネラルコントラクターアントと呼ばれていて父さんの故郷の更に東の極東と呼ばれる場所のお城を経った一晩で建てたと言われるほど家を建てるのが得意な蟻よ。」


「へえそんなに凄いんだ。けど、メィ姉さんはモハメドだけでこれを作ったの?」


「あー、モハメドはファミリーネームで蟻を束ねている女王蟻と契約しているんだけどその配下にある職人蟻も一緒に作っていて蟻モンスターのように常に群れで生息するモンスターは一個体として扱われるの。ほら、ファニやマッコリの分裂体だって一つとしてなっているでしょ。そんな感じ。」


なるほどとロレンは理解したようだ。


「でも、モハメドとはどうやって契約したの?森ではこんなに大きな建物は無かったけど。」

そう、ロレンがファニと契約した森には建築会蟻のように巨大な巣を形成するモンスターは存在しないのである。


「私も父さんから聞いた話だけど、叔父さんが連れてきてくれたって言ってたわ。」


「叔父さんってどっちの?」


ロレンの言葉に叔父は2人いたと思い出すビアンカ。


「長男の方で確か名前はユウイチだったかな。」


「へえユウイチ叔父さんってやっぱ凄いんだね。」


「私は一回だけ会ったことがあるけどレナとロレンは無いものね。」


「そんなことよりもロレン君、中に入ってみたいでしょ。アンネおばさんから鍵はもらっているから入ろうよ。」


「うん、入る!!」


そう言ってからロレン達は城の中に入って行った。城の中は真っ暗だった。


「今、明かりつけるからちょっと待ってね。」


パチン


そんな音が聞こえて明かりがついた。


明かりをつけると石造の空間が広がっていた。尚、床にはレッドカーペットが敷かれていた。


「うわあ凄いね。これみんなメィ姉さんとモハメド達が作ったんだ。」

壮大な城の中に感激するロレン。


「半分正解で半分違うかな。ロレン君。」


「え、違うの?」


「うーん、建物はメィさん達が作ったんだけどカーテンとかの布の物はロレン君のお兄さんのラオスさんとその相棒の繊羊おりひつじのシルクが作ったの。」


「ラオス兄さんは母さんと同じ祝福なんだね。」


「うん、そうなの。ロレン君のお母さんは牧場にいる全ての羊と契約しているけど。ラオスさんは、シルクとだけ契約しているの。だけど布を作る技術はとても凄くてシルクもロレン君のお母さんが契約している羊達とは違って色んな繊維を出せるからよく服を作ってもらいに私のお母さんも行ってたくらいに上手だったの。」


「この真っ赤なカーペットとかもラオス兄さんが作ったんだ。」

そう言ってカーペットをフミフミするロレン


「ふふっ、楽しい?ロレン君。」

そんな様子を見て頬を緩ませるミーナ。


「うん!でもこの建物ってどうやって作ったの?」


「これは叔父さんが持ってきた設計図と施工図を元に作ったそうよ。」

なんか小難しく話すビアンカ。


「施工図ってなに?」

聞き慣れない言葉にロレンは耳を傾けた。


「えっと施工図っていうのはまず設計図は建物の大まかな図面で施工図っていうのは細かいところまで書いてある図面なの。」

なんとか覚えていることをひねり出すビアンカ。


「うーん、細かいところってなに?」


「えっとそれはわかんない。」

やはり理解していなかったが為に説明できないビアンカ。そこでミーナが解説をする。


「ロレン君、細かいところっていうのは今明かりがついたのに使っている電気っていうものを使えるようにする道だったり火を安全に使うために建てるトンネルみたいな普段目には見えないように隠しているところのことを言うの。」

比較的年齢の低い子供にもわかりやすい解説をしたミーナ。


「へえそうなんだ。ミーナお姉さんありがとう。」

天真爛漫な笑顔でお礼を言うロレン。


ズッキューーン(何かが刺さる音、なにわからない?察しろ。)


ミーナは凄く身悶えていた。


「可愛い。」


思わず口にしたミーナ。


「ダメ、ロレンは私のもの。」

ブラコンセンサーに反応があったレナ


「わかってるよレナちゃん。」

なんとか理性の名の下に帰るミーナ。


(謎の声S:これはレナのライバル登場か。)


「本当?怪しい。」

レナはとても警戒している。


「大丈夫だよ。ロレン君は可愛いけどロレン君のお父さんと同じ冒険者になるっていう夢があるんでしょ。それを私は邪魔したくないしから。ロレン君もお父さんと訓練して早く冒険者に成りたいでしょ。」


理性と萌えの葛藤の渦巻く中レナの言葉を媒介としまた一つ大人になったミーナ。


「うん、冒険者に成るかはまだ決めてないけどファニを神と戦えるくらい強いスライムにしたいんだ。だから父さんとの訓練も辛いけどやりたい!!」

そう言って楽しそうに夢を語るロレン。それに続いてファニもロレンの肩に乗り顔に体をスリスリしてくる。


「ロレン、そこまで父さんの訓練をやりたがるなんてどうかしてると思うわよ。」

凄い良い雰囲気だったところをぶち壊すビアンカ。


ビアンカは父の訓練を受けたことはないが上の兄弟姉妹がやっているところを見てきたため内容は知っている。そのためあの狂気染みた訓練を喜んで行うロレンが信じられないのだ。


「ビアンカ姉さんには解ってもらえなくても良いもん。僕はファニと強くなりたいんだもん。」

半分くらい拗ねながら話すロレン。ファニも援護するため挙触手(?)をする


「そうは言うけど3日続けば良いわね。」

少しばかり挑発じみたことを言うビアンカ。ロレンは涙目になる。しかし此処で2人の救世主が現れた。


「ビアンカ、それはダメ。ロレンは頑張ってる。お姉ちゃんは応援するよ。」

昼食の時に自分の言ったことを棚に上げているレナ。


「そうだよ。ビアンカちゃん、ロレン君は頑張ってるからダメだよ。そんな風に言っちゃあ。」


「わかったわよ。ロレンごめんね。」

2人の救世主の力によって謝るビアンカ。


「いいもん。ミーナお姉さん、このお城の中に何があるのか教えて。」

しかし、ながらすっかり拗ねてしまったロレン。


「あ、うん良いよ。あっちの方に絵が飾ってあるから行ってみよう。」

ビアンカ達に目配せをしながらミーナはロレンを引き連れていく。


「ビアンカ、アレは言い過ぎ。」

小声でレナが言う。


「わかってるわよ。でもロレンのことが心配だからこそ言ってるのよ。ロレンの夢のことはわかるけどそれでロレン自身が苦しんだら元も子もないでしょう。」

なにも前に進むことだけが人生ではないと思うビアンカ。そのことを教えようとこの姉は嫌われ者を買って出たのだ。


「わかった、けどロレンは拗ねてる。だから、余計無茶すると思う。」


「その時はその時よ。けどロレンが拗ねたままなのは嫌ね。帰っても続いているようなら母さんに相談するわ。さあ、ロレンを追いかけましょう。」

そう言ってロレンとミーナの後を追う。


〜補足〜

ゼネラルコントラクター(ゼネラルコントラクションと諸説あり)とは日本では総合建設業者のことを指し、通称をゼネコンという。基本的には建築に関することをまとめて承る業者と考えればいいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る