ゼネコン蟻の巣2、展示室

「ロレン君、ビアンカちゃんはきちんと謝ったんだから許してあげないとダメだよ。ビアンカちゃんだってロレン君のためを思ってい言ったと思うよ。」

ロレンの事を諭すミーナ。


「けどビアンカ姉さんが悪いんだもん。」

しかしながら、耳を貸そうとしないロレン。


「じゃあお姉さんは案内してあげないぞ。」

この城の中はとても広く案内無しでは確実に初見のロレンは迷子になる為案内は必要である。


「ファニがいるもん。」


しかしファニはミーナの肩に飛び移りミーナを指差し丸印を作る。どうやらミーナの言うことが正しいと伝えたかったようだ。


「わかったよ。ビアンカ姉さんに謝るよ。」

流石に迷子になると困るので折れたロレン。


「そう、偉い偉い。」

そう言いながらロレンを撫でるミーナとファニ。


そんな事をしているうちにビアンカ達が戻ってきた。


「ビアンカ姉さん、さっきはそっぽ向いてごめんなさい。此れからはビアンカ姉さんの理由を聞くようにします。」

心の底から謝るロレン。


「ロレン、私は気にしていないから大丈夫よ。多分ミーナから聞いたでしょうけど、私がロレンのためを思って言ったの。ロレンが父さんとの訓練で夢を追いたいのは分かるけど後ろを見ることも大事よ。」

ビアンカ7歳にして母アンネの面影あり。


「うん。」

ロレンは少しばかり理解しきれていないのか頭を捻っていた。


「例えば今日父さんから休みがもらえなかったらミーナとは会えなかったでしょう。つまり夢ばかり気にしていると友達が作れないってこと。ミーナと遊べなかったら寂しいでしょ。」

補足とばかりに付け足すビアンカ。


「うん、寂しい。」

ミーナと遊べなくなることが信じられないとばかりに思うロレン。たったの数時間ではあったがロレンは少なからず家族とは違う人との交流に惹かれたいた。


「そういうことよロレン。別に父さんの訓練をするなとは言わないわ。ただ訓練ばっかりしていると家族以外の人と話せなくなるわよ。せめてレナぐらいまでは交流を持ちなさい。」

今までにないくらい真面目な顔でビアンカは話していた。


「うん、分かったビアンカ姉さん。頑張って友達を作るよ。」

ビアンカの想いが伝わったのか素直な返事をするロレン。


「そこまで頑張って友達を作らなくてもいいけど、せめて誰とでも最低限の会話はできるようにしとかないと冒険者になったときに他の人たちから情報をもらったりできないでしょ。」


「そうだね。情報を知らないと森にも入れないもんね。」


「そう、だからそれくらいできるようにはなっときなさい。趣味を合わせる必要はないわ。ただ、日常の会話をして町の流れを知る。これはユウイチ叔父さんも言ってたことだから肝に命じておきなさい。」


「うん、わかった!!」

元気のいい返事のロレン。


「ま、ビアンカはこんな事言ってるけどロレンと遊びたいだけだからな。」

そう言って茶化すラル。


「そんなじゃないわよ。ただロレンのことが心配なだけよ。ミーナ、ロレンを案内しましょう。」

恥ずかしくなったのか話題をそらすビアンカ。


「うん、ビアンカちゃん。ロレン君、もうすぐで展示室に着くから入る前に注意があるから説明するよ。」

まるで校外学習の先生のように促すミーナ。


「展示室ってどんなところ?」

展示室の意味がわからないのか質問するロレン。ファニも触手でクエスチョンマークを出す。


「展示室っていうのはさっきも言ったけど絵とかが置いてあるところだよ。」

どことなく男の子っぽい口調で話すミーナ。


「絵ってなんの?」

どんな絵が置いてあるのか気になるロレン。


「それは見てからのお楽しみにしておいて、展示室に入るときは展示物に触らないこと。これはちゃんと守ってね。」


「はーい」

ファニも触手で丸印の返事を出す。


「うん。よろしい。じゃあ入るよ。」


そう言い展示室に入っていくロレン達。そこには様々な大自然の景色が書かれた絵画や村全体の模型が展示されていた。


「ここは村の近辺の景色やこのお城のモニュメントが置いてあるのすごいでしょう。」


「え、こんなところが村にあるの?」

まだ村に詳しくないロレンは期待に満ちた目をする。


「うん、あるよ。ロレン君はまだ村に来て1ヶ月だから知らないところもたくさんあるだろうけどこれ全部村にあるものや村の周辺にあるものを書いたものなんだ。ほら、これなんかロレン君の家の牧場の様子だよ。」


その絵には牧場の羊達がのんびりと牧草を食べている風景があった。


「すごーい。こんなに本物とそっくりな絵なんてかけるんだ。」


そうこの絵画はまるで写真のように描かれており、細部まで緻密に描かれていた。この絵画だけではない殆どの絵画がまるで写真のように綺麗に描かれていた。


「これを書いたの三女のベレー姉さん。私とロレンと同じ《スライムの祝福》で相棒はパレットスライムのクリアで絵の具を作るのが得意。ここにある絵のほとんどはベレー姉さんが描いた。」

そう説明したのはレナである。


「こんなにカラフルな絵の具を出せるんだ。」

と感心の声を上げるロレン。


「と言っても出せる絵の具は食べたものに依存するのよね。だから、果物の皮とかを食べさせて絵の具を調合していたわ。」

レナの言ったことに補足を加えるビアンカ。


「調合?」


ロレンが疑問の声を上げる。ビアンカはしまったとばかりに調合の意味を理解していなかった。


「調合っていうのはものを混ぜたり熱を加えたりして新しいものを生み出したりすることを言うんだよねビアンカちゃん。」

ミーナがそう言いビアンカに目配せをする。ビアンカはまるで女神でも見るような目でミーナに感謝する。


「ええそうよ。」


「混ぜたり熱を加えるとどんなものができるのビアンカ姉さん。」

しかし、ここで追撃が来る。しかも名指し。ビアンカ今度こそ絶体絶命のピンチか。


「ええと料理みたいなものよ。ただそれが美味しいものだけじゃなくて人が使う上で便利なものってことだったはずよ。詳しくは母さんに聞いて。」

なんとなく説明して後は母に任せ逃げるビアンカ。


「うん、わかった。母さんに聞いてみる。」

しかしロレンはそのことに気づかない。


「他にも絵があるから見てみようロレン君。」

別の絵画も観てみようと促すミーナ。


「うん。」


ロレンは絵画を見て行くふとその中で気になったものがあった。


「ねえミーナお姉さん、この絵の場所はどこにあるの?」

そう言い指を指すロレン。


その先には桜の花と銀木犀の花が咲いていた様子が描かれていた絵画であった。


「この絵の場所はどこだったかな。ビアンカちゃん覚えてる?」

ミーナも知らないようでビアンカに話をふる。


「えっと確か私がラルと出会った近くだった気がするわ。」

うろ覚えながら答えるビアンカ。


「そうだった気がするわさ。確か私とビアンカが会った場所は確かに桜の木があったわさ。」

ビアンカの言葉に肯定を示すラル。


「そうなんだってロレン君。でもどうして気になったの?」


「確かにロレンが気になったところは普通にあるところだしなんで質問したかわからないわね。」


「私もそう思う。」

ロレンの質問の意味がわからないミーナ達。


「だって桜と銀木犀は一緒に咲かないもの。桜の中にも寒桜っていうのがあるけどそれは銀木犀が咲き終わってから咲くもの。」


ロレンの言葉にハッとなるミーナ達。確かに桜の中には冬の初め頃に咲くものもあるのだがこの世界では旬は違うことはあっても花が咲く時期は変わらない。

その為、夏辣子蓮根は夏に咲く。ロレンが父の作業を手伝っていた時も咲いている。そして何故旬が夏になるのかというと花を咲かせ栄養を花に盗られた時が一番辛味と甘味のバランスが丁度よくなるからである。

このように花を咲かせることでその植物本来の味を引き立てることはあっても花を咲かせる時期は変わらない。そのためロレンは疑問に思ったのである。しかしながらロレンが桜の知識を豊富に持っていることにも疑問が出るがビアンカ達はそれには気づかなかった。


「確かにそう。これがいつ描いたものなのか父さん達に聞いてみる。けれども他の絵は全部季節ごとに咲いてる。これはなんでだろう。」

探偵のようになぜこの絵が描かれたのか推理してみようとするレナ。


「まあ、1つわからない絵はあったけどみんな綺麗だったでしょうロレン君。」

謎のことは一先ず置いておきロレンに感想を求めるミーナ。


「うん綺麗だった。」

山の景色だけでなく湖の景色もあり観ていて飽きなかったと思うロレン。


「私も少しは知っているところがあるから今度から遊べる時はそっちの方に行ってみましょう。」


「連れてってくれるの?」


「うんもちろんだよロレン君。ビアンカちゃん達と一緒に行こう。」


「うん!」

元気のいい返事をロレンが


「そうねいきましょう。」

大人ぶった返事をビアンカが


「ロレンお菓子を持って行こう。」

最後にレナが行くことに対する意思を示した。


「じゃあ行くことは決まりでいいね。レナちゃんの言う通りお菓子を持っていった方が楽しいから持っていきましょう。」

レナの案に賛同し次回遊ぶ時はお菓子を持って村の名所巡りになった。


「さあロレン。後この建物にあるのは図書館だけだから、そこを見たら帰るわよ。」


「そうだぜロレン。絵なんて見てもつまらないからな。早いとこ帰ろうぜ。」


そう言いビアンカとラルは展示室を出て行く。


「ビアンカ姉さんはせっかちだね。」

少しばかり姉の性格を非難するロレン。


「うんそうだねロレン君。でもね、そんな性格のビアンカちゃんだけどいざと言う時はみんなを想って率先して注意してくれるの。だからビアンカちゃんはとっても良いお姉さんなんだよ。本人は恥ずかしがっているけどね。」

ビアンカの良いところを伝えるミーナ。


「そう、ミーナの言う通り。私だって家に来た初めはずっとチーズの研究をしてた。けれどもビアンカが外に連れ出してくれたおかげでミーナとも遊べてる。」

ミーナの意見に賛同するレナ


「そうなんだ。ビアンカ姉さんって信頼されているんだなぁ。」


「うん、だからビアンカちゃんは良い人なの。さあ追いかけましょう。」


ミーナがそう言うとロレン達もビアンカの後を追うように出て行った。

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