ある牧場の朝、母の授業 一限目 一般常識
奇妙な感覚にあった。どこか懐かしい感じがした夢でも見ていたのだろうか?
ゆっくりと目を開けると姉のレナの顔があった。一定のリズムの規則正しい呼吸だ。
寝ている間ずっとロレンを抱き枕にしていた為汗ばんでいるがロレンを離そうとしない。
まだ日は出ていないし起こすのは無理そうだがそろそろ奴等が起こしに来るだろう。
「コッケェコケコケコッコー!!(起っき出せ出せ人間)」
「「「「コッケェコケコケコッコー!!(起き出せ出せ人間!!)」」」」
「コッケェコケコケコッコー!!(俺達もうもう腹ペコだ!!)」
「「「「コッケェコケコケコッコー!!(俺達もうもう腹ペコだ!!)」」」」
「「ピィヨーピィヨーピヨピヨ(フレーフレー人間)」」
「「ピィヨーピィヨーピヨピヨ(早くー早くーご飯)」」
「「ピィヨーピィヨーピヨピヨ(フレーフレー人間)」」
我が牧場の目覚まし時計、
そうこうしているうちに姉が起きた様だ。
「ふわぁ。ん、ロレンおはよう。」
レナ姉さんが起きたがまだ眠そうだ。
「ロレン、レナおはよう!!」
ビアンカ姉さんも起きた様だ。
「ビアンカ姉さん、レナ姉さんおはよう」
と挨拶すると二人の姉はなにを思ったか
僕の頬をつねってきた。
「ふぁにふんのねえひゃんふぁひ」
すると姉達は、
「いやなんかいきなり大人びたっていうか、
いつものロレンと違う様に感じたから。」
「うん、偽物かと思った。」
そう言いながらまだロレンの頬をつねっている。
「ふぁわしへよねえひゃんふぁひ」
と流石に痛そうだと思ったのか話してくれた。
「ごめん、ロレン疑って」
「ロレン、お詫びになんでも聞く。」
そう謝ると、ロレンは承諾した。
「うん、わかった。じゃあレナお姉ちゃんは、もう僕を抱き枕にしないでね。」
するとその瞬間レナに母と般若の雷以上の衝撃が起きた。
「ロレン、嘘だよね。」
その言葉にロレンは
「だって夏なのに抱きついてられたら暑くて寝れないよ。」
ロレンのその言葉に姉は言い訳する
「今は冷たいファニがいるから大丈夫」
しかしここで思わぬ伏兵登場、ファニが
ロレンの服の中から出て来て何故かレナに向かって触手を出して罰点を作った。ロレンがなんとなく通訳してみると
「もしかして、レナお姉ちゃんに抱き枕されるのが嫌?」
すると触手が丸に変わる。どうやら正解の様だ。
「レナがファニにまで否定されたわ。ワハハハ、ラル面白かったわね。」
「ええ、傑作だわ。」
そうビアンカとラルが笑っていた。そしてレナの方を見ると真っ白になり息をしていなかった。レナが天に召される寸でのところでマッコリが体当たりをして連れ戻したのであった。
今日の朝ご飯は野菜スムージーと焼きたての胡桃入りのライ麦パンとトマトジャムを掛けたヨーグルトだった。野菜スムージーの中身は完熟トマト、オクラ、ゴーヤ、人参、モロヘイヤ、梅、プルーンが入っている。甘い果物が入っている為ビアンカ姉さんでも飲める料理である。
ライ麦パンの中に入っている胡桃は昨日森から採ってきたもので普段の食卓には中々並ばない。
なんでもこの胡桃は
そんな胡桃が食卓に並んでいるので家族は上機嫌だ。
「いやぁ、朝から豪勢だな」
とは父の話し、ビアンカとレナは未だにロレンの謎の異変に頭をひねっていた。
「母さん、父さんおはよう。」
父と母はなにも驚かず平然としていた。
「ねぇ、母さん父さん、ロレンに何か違和感を感じない。」
「うん、ビアンカの言う通り。」
との姉妹の質問に対して両親は少し疑問を浮かべたが納得したのか。父が母に目配せをして、説明を促した。
「えっとね、ビアンカ、レナまだ教えていなかったけどね。契約したモンスターとパスが繋がっていてモンスターの方が賢いとそれに引っ張られる事があるのよ。ファニは、触手を器用に使っているから。多分、昔主人がいてその人に色々教わったんだと思うし。だから、ロレンの口調や雰囲気が違っても気にならなかったのよ。これでわかったかしら。」
母の丁寧な説明に納得した姉妹達。
ロレンはもっと早く教えてくれれば頬をつねられなくて済んだのにと思っていた。が、しかし自分が賢くなったかと言うと実感はわかなかった。
「牧場の仕事が終わったら、そこについて授業するから。ロレン、貴方も参加しなさい。」
母は毎日ビアンカとレナに授業をしている。
ビアンカとレナの言葉がはっきりしているのは母が授業している時に矯正しているからである。
その時はロレンは邪魔をしてはいけない為牧場の羊たちと戯れていたが授業を受けられるとなると自分が賢くなったと実感する。
・・・・・
朝の牧場での仕事はまず餌やり、これは父達がやってくれた。次に家畜達を牧草地に出す
これは家畜達は一応母が契約しているモンスターなので知能が高く扉を開けると勝手に出て行く。それは子供も同じだ。うちの牧場では、乳飲み子は基本親と同じところに繋いでいる為餌やりも楽チンだ。
続いて、飼育小屋の清掃だこれに関してはすることがほとんど無い。何故なら、先程言った通り知能が高いため、排泄などもちゃんと作った処理場でしてくれている。なので清掃は、草の張り替えぐらいなのだ。これならロレン達もやる事ができるので一人一室の清掃は任されている。
そして、そこに繋いであった羊たちの身体を綺麗にするのも仕事の一つだ。
これで午前中の仕事は終わり。
さあ、これから母の授業だ。
母の授業はリビングで行われる。ちなみにファニ達は勉強の邪魔をしないように他の部屋で遊んでいる。
「はい、じゃあ昨日やった一般常識のところの復習からやって行くわよ。ロレンはそのまま聴いててね。ビアンカ、人間族の男女比と階級別の王国の結婚状況について昨日やったところを答えてみなさい。」
「えぇとたしか、人間族の男女比は1:3で階級別の結婚は貴族は一夫多妻が義務づけられていて平民は一夫多妻、一夫一妻のどちらでも良いとされているだったわ。」
姉の威厳をロレンに見せようとするビアンカ
母の採点を待つ。さあ点数は、姉の威厳は保てるのか。
「うーん。70点、惜しかったね。平民は確かにどちらでも良いけれど、推奨しているのは一夫多妻の方よ。これも昨日言ったからね。」
70点と微妙だが姉の威厳は保てたようで、ビアンカはホッとした顔をしている。
「じゃあ次はレナね。銅貨と銀貨があります。それぞれ一枚で何が買える?」
「マライア王国では銅貨はお野菜、銀貨はお肉で海に面してる所では塩が銅貨、面していない所では銀貨。」
この答えに対し母は
「凄いわレナ文句無しの満点よ。塩この辺りだと海に面しているから銅貨で買えるけど内陸の方では銀貨に変わることをきちんと覚えているのね。偉いわレナ。」
とビアンカを超える高評価だ。ビアンカが悔しそうにしている。
「じゃあ復習も終わった事だし授業を始めるわよ。ロレンも参加しなさい。」
「「「はい、母さん。」」」
「まず、マライア王国の義務教育制度から、これは上の子達が言ってるからビアンカ達も解ると思うけどこの制度の目的を言います。
まず王国民の学力向上、そして貴族と平民の《世界の祝福》による差別の緩和ね。ではその結果はどうなったでしょう。はいみんな自分の意見を出してね。」
すると
「どっちも成功したと思うわ。だって国の偉い人達が考えたんだもの。」
シンプルな(ズボラとも言う)解答のビアンカちゃん。
次にレナが
「学力向上は成功した、けれど貴族と平民の《世界の祝福》による差別は緩和しなかったと思う。何故なら、私のように孤児だった者が生まれるはずがないから。」
中々に重い解答のレナちゃん。
最後にロレンが
「僕もレナお姉ちゃんと同じかな。だって貴族の上位的立場にある感覚は早々直るものじゃないもん。だから貴族と平民の差別は緩和しなかったと思う。」
うーんなんか大人目線な解答のロレン君
「正解はレナとロレンの言う通り結果は、学力向上は成果が出たけど差別化はあまり変わらなかったわ。それとロレンが補足を入れた所が全く一緒だったんだけど。その答えが出たのはファニとパスが繋がったことによる記憶の共有化が起きた事に関係があるわ。朝ご飯の時は端を折って説明したけれど。契約を結んだモンスターは主人と経験したことを共有できるのよ。つまり、ロレンが賢くなったのはファニの前の主人が勉強した事を共有してそれをさらにロレンが共有したからなの。といっても誰もがそうなるわけではないわ。余程前の主人と今の主人とのパスが似ていないと起こらないの例え双子の兄弟だったとしてもパスは全然違うから探すのにとっても苦労するの。まあこれはロレンだけのものって事でレナがファニと契約してパスを繋いでもならないから諦めなさい。」
とズルをしようと思っていたのかレナがしょんぼりしていた。すると母は手を叩いて
「さて話しがずれたけど授業に戻るわよ。」
と仕切り直すと授業が再開した。
「次は冒険者について話すわ。まず冒険者とは別の大陸から来た人が伝えた職業で起源は別の大陸のを目指して調査するお仕事のことをそう呼んだらしいわ。今ではだいぶ制度が出来てきて何でも屋に近くなってるわね。まあそれでも、プロの一部は最初伝えた通りの冒険者をしてるけどほんの一握り。今、プロの冒険者と言ったけれど、冒険者にはアマチュアとプロがあってプロには冒険者連盟加盟国全ての永住権がある。しかも、国には税金を払わなくていいし、ある程度なら罪も免除される。一様年齢制限も無くてアマチュアなら0歳児でも成れるわ。あとはランク制度があることかしらこれはアマチュアとプロどちらも一緒で功績に応じてランクが上がるシステムだったかしら。まあその点はお父さんに聞きなさいあの人は昔冒険者やってたから冒険者連盟の会員証をもってるわよ。あとは確かランクが上がるにつれて冒険者連盟から特典がつくことぐらいね。…ともうそろそろお昼の準備しなくちゃ、今日の午前中の授業はここまでお外で遊んでらっしゃい。」
気がつけば日がだいぶ南によっていた。母は慌てて台所に向かった。お昼まで暇なのでロレン達は母の言う通り遊びに外に行くことにした。
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