目が覚めて+相棒の思い出

「.........ロレン、ロレン」

 暗闇の中叫ぶ声がする

「うぅぅ」


 目を開けると

「ロレン、大丈夫か!」

 眼前に父の顔があった。


「うわぁ!!」

 思わずびっくりして声を上げた

「おいおいロレンそれは傷つくぞ。」

 流石に悪いと思い


「おとうさんごめんなさい。」

 そうロレンが頭を下げて謝る。


 その真摯な対応に父はバツ悪そうに頭をかきながら

「まあ、俺も世界の祝福の際にパスが繋がる事を忘れていたのも悪かったしな。」


 ふと父の言葉に疑問を感じた。

「とうちゃん、パスってなに。」

 すると父は説明してくれた。


「ああ、パスってのはいわば契約を結んだモンスターの今までの生涯のことさ。ロレンが気絶したところそのスライムは壮絶な過去があったんだな。」


 キョロキョロとあたりを見回したロレンは、眠っているスライムを見つけた。


「ねぇ、とうちゃんそれでさっきのはわかったけどけいやくするときのことばってひとによってちがうの?」


 ロレンの質問に対して父は

「ああ、違う。正確に言うとモンスターごとだな。それに加えて契約する際の言葉は他の人には聞こえない。後は、契約に関しては早い者勝ちだ。まあ説明はこのくらいにしてそこのスライムに名前付けで帰ろうぜ。母ちゃんに怒られちまう。スライムも目を覚ましたみたいだしな」


 気がつけば夕方近くになっていた。

 怒った母は怖い。急いで名前を付けなければ


「うーん、じゃあファフニールバハムートティアマトヴリトラヤマタノオロチで」


 するとスライムは体当たりをかましてきた。ロレンは寸でのところで避けた。


「うわぁ、なにすんだよ。」


 父は呆れたように

「そらぁ、ロレンお前の名付けがドラゴンの名前並べただけだろう。もっと簡単でわかりやすいのにしろよ。」


するとロレンはしばし考えスライムを触ると

「じゃあ、プニプニ」

スライムは再度体当たりをかましてきた。

今度はロレンの顔に直撃した。


「ウゥ、いたい。」


 すると父はアドバイスをしてくれた

「じゃあ、ドラゴンの名前の中から文字ったらどうだ。」


 するとロレンは

「ファフニールからとってファニ。」

 するとスライムは触手を出して拍手してくれた。


「気に入ったみたいだな。じゃあ帰るぞ。」

 そう言い歩いて行くところをロレンは相棒となつたスライムと追っていった。


「しっかし、野生のスライムにしちゃあ賢いからこりゃ元々主人がいた可能性があるな。」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ロレンの家にて 夕食の時間

テーブルの上には黒パンとライ麦パン、サラダ、羊肉(マトン)とトマトのスープがあった。羊肉とトマトのスープには羊肉の独特の香りを消す為にパセリが入っていた。


「それでロレンはそのスライムと契約を結んだのね。」


そうテーブルの上でご飯を食べているファニ指刺して話しているのは四女で姉のビアンカだ。髪と目は共に紅色をしている

ビアンカは夫婦の実子でやんちゃな娘だ。歳は7歳

《世界の祝福》は《炎精霊の祝福》

相棒は炎のはぐれ精霊で名前はラル、身長8cm体重は「あん、それ以上言ったら燃やすぞ。」

性別は女だ


「ラルあんた誰に言ってんの?」

とビアンカは疑問の声を持らす。


「スライム、ファニ可愛い。」


そうファニを見ながら目を輝かせて呟くのは五女で姉のレナだ。 髪は銀色での美しい艶を出している。目は金色をしている。

レナは孤児院から来た義理の娘で大人しくあまり騒がないが今まで一番下だったこともあり、ロレンをお世話しようとする。歳は6歳

《世界の祝福》はロレンと同じ《スライムの祝福》

相棒は様々な血を好むクリムゾンスライムの亜種、ミルクスライムで名前はマッコリ、今はテーブルの上で羊の乳を飲んでいる。

今ここにいない兄弟姉妹は10歳になると国民全員がいくことになる5年全寮制の学校に通っている。一番上の姉は更に上の高等教育が受けられる三年制の学校に通っている。ロレンもレナとビアンカより上の兄弟姉妹にはまだ会ったことがない。


「それでファニって名付けたのねロレン」

そう母が訪ねてきた


「うん、かあさん」


母はビアンカと同じ紅髪紅目でおっとりした雰囲気だ。《世界の祝福》は《羊の祝福》で

牧場の家畜達の世話をしている。

パートナーはいるらしいのだが見た事がない。曰く、神族に近い種族らしく他の世界から召喚する為気軽に呼べないらしい。

そして、父が話しに入ってきた。


「ロレンのために一旦兄貴に合わせようと思うがおまえはどう思う」

すると母は賛成した


「いいんじゃないかしら。義兄さんなら、面倒見もいいしファニのことも何か知ってるかもしれないし」


するとロレンが気になることがあったのか質問してきた。


「ねぇ、とうちゃんなんでおじさんがファニのことしってるの?」


すると父は納得した顔になり説明する

「兄貴は物凄いデカイ商会で働いてる人でな

スライムが生きている間に恐怖を抱くのは良くあることなんだが《世界の祝福》で契約を結ぶ際に早々気絶するなんてのは有り得ないんだ。だから、余程大きな戦争かなんかあったところから逃げてきたか、ドラゴンの群れにでもあったんだろう。そう言う情報に詳しいんだは商人ってのは。だから、兄貴は何か知ってる可能性が高いっていうことだ。」

そう父が話し終えらとロレンは納得した。


「ビアンカ姉、サラダちゃんと食べる。」

こっそりとロレンの皿にサラダを乗せていた

ビアンカがいた


「ちょっ、レナ何バラしてんのよ。

ロレンなら食べてくれるのに」

ここで殺気を感じたビアンカ振り向くと般若の幽波紋を顕現させた母が居た。


「食べなさい、大きく成れないわよ。(ちゃんと食わねえと飯抜きだぞ)」

と母と般若が叱るとビアンカは恐怖を感じたのか


「はい、ごめんなさい食べます。」

と言いつつサラダを自分の皿に戻していた。


「ビアンカおねえちゃんサラダはスープといっしょにたべればおいしいよ。」

とロレンがビアンカを宥めながらサラダとスープを食べる。


「うぅ、苦手だぁ」

そう、苦悶の表情を浮かべるビアンカ


「ビアンカ姉は好き嫌い多過ぎ。姉の威厳がない。」

半端、追い討ちを掛けるレナ


「余計な事言うな!!」

と顔を真っ赤にして怒るビアンカ


「はい、はい喧嘩しないで食べる。(飯は楽しく食うもんだ。)」

母と般若の印象が違う雷がビアンカとレナの下に落ちる。


「「ごめんなさい」」

我が家には絶対に怒らせていけない存在が要る。


・・・・・


夜 子供部屋

普通は灯は消しているのだが炎精霊である

ラルが灯代わりとなって部屋を照らしている。

「お母さんはやっぱり怖いわよね」

各々ベットに入って話したのはビアンカだ。

ちなみにレナは強引にロレンと一緒にベットに入っている。ファニとマッコリも一緒だ。


「そうさせたのは元々ビアンカの所為。」

そのれレナの言葉にビアンカは抗議する


「ちょっとそれはレナがチクるからでしょ。

大体あんたがサラダのこと言わなければ、ロレンは黙って食べてくれたのに。」


その言葉にレナは

「好き嫌いは良くない」

ごもっともである。


「別にいいじゃない。野菜なんて食べなくても」

この姉、反省していない。


「もう、ねようよ。かあさんにおこられちゃうよ。」


すると姉達は


「そうね、寝るわ。」

「おやすみ」


そういうとラルが炎を消した。

するとファニはロレンの服の中に入ってきた

しかしこのスライム、ロレンから離れようとしないまるで久しぶりに会った恋人の様に。


子供たちは安らかに眠りについていく

しかし、ロレンは眠れない何故なら真夏だというのに自分を抱き枕にする姉レナに加えて相棒のマッコリがいるのだから。せめての救いはファニが冷たいことか。夜はまだまだ長い。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある青色のスライムの夢


それは主人である少年と母方の母方の曽祖父とその弟子であった人の家に向かっている記憶であった。


その弟子であった人の顔や特徴は女性であったことしか覚えていないが、家に行った時に出してくれたハーブティーとお菓子は覚えていた。


ハーブティーは子ども用に苦味と渋味が抑えてあったがほのかな甘味があり、シナモンと柑橘系の香りがして良かった。お菓子はミルクレープだ。しかも、とてもミルクが濃厚で砂糖を入れていないのかミルク本来の優しい甘味が口いっぱいに広がったのを覚えている。

スライムがその時思ったのは隠し味に甘味を引き立てる為に微かに生地に酸味があったことだった。

主人である少年も美味しそうに食べていた。


女性と曽祖父はハーブティーではなくコーヒーが入れてあり、少年が来たことを配慮されてだろう。曽祖父は甘いものが苦手なのか、ケーキは無かった。


女性と曽祖父は会話を弾ませ、その後女性は自分達と遊んでくれた。その際、女性はスライムである自分の触手の操り方の特訓に付き合ってくれた。触手でコップを持てた時は少年も自分を沢山褒めてくれた。

とてもいい思い出だ。




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