8-9.武器屋さんへ

お昼ご飯を済ませた私は、武器屋を探してフォーレの街を歩き回ることにした。

いつも魔法で自作していたから武器を買うのは初めてで、武器屋の位置は覚えてないんだよね~。


なかなか見つからないので一旦ギルドに行ってお薦めの武器屋を紹介してもらおうと思ったら、いかにも繁盛して無さそうな武器屋らしきものを見つけた。



うーん、武器屋・・・だよね?



正直、今にも潰れて閉店してしまうんじゃないがっていうくらい寂れている。

でもこういう所に腕のいい鍛冶師が居るのが相場だよね?



「ごめんくださーい」



誰も居ないので声をかけたのだけれど反応がないね。

上半身をカウンターに乗せて身を乗り出しながら大きい声で呼んでみる。



「ごめんくださーい!」

「うるせぇーーー!!!聞こえてるからデケェ声で呼ぶんじゃねぇーーー!!!」



すごく大きな声で叫びながらずんぐりむっくりなオジサンが出てきた。

筋肉もあるし私好みの見た目をしているんだけど酒臭いのがいただけない。昼間だし仕事中だよね?


「うるさくしてごめんなさい。武器が欲しいんですけど」

「ああ゛?そんなぴらっぴらの服着たお嬢ちゃんが武器だと?」


「はい、強い武器が欲しいんです。」

「その耳・・・お嬢ちゃんエルフか?帰りな!貧乳で非力なエルフなんぞに売ってやる武器はねぇ!!!」


オジサンは、しっしと帰るように促しているので素直に帰ることにした。


「じゃあいいですぅー」


カウンターに乗せていた上半身を起こす。





ばるる~んッ!(←押し潰されていた何かが躍動する擬音)





「しかーし!お嬢ちゃんはラッキーだ!今のオレは機嫌がいい!エルフだろうが関係ねぇ、どんな武器でも打ってやる!」



うーん、断られちゃったしギルドでお勧めの店を聞こうかな~(←先ほどのセリフを聞いてなかった)

ギルドに向かって歩きはじめると・・・



「待ってくれぇ!いや、待って下さい!」

と叫びながら武器屋のオジサンが店から転がり出てきた。



「え?どうかしました?」

「何でもしますから!オレに武器を打たせてください!」


あるぇ~?ツンデレなのかな?

あんなに怒ってたのに1分もしないうちにデレちゃったよ。


よくわからないけど、やる気が出たならお願いしちゃおうかな。




◆◇◆◇




武器屋のオジサンは、ロドヴィックって名前でドワーフなんだって!


「私、ドワーフって初めて見ました。皆ロドヴィックさんみたいにムキムキでカッコイイんですか?」

「まあ…例外は居るかもしれねぇが大体ムキムキで男前だな。って言うかお嬢ちゃんはドワーフが嫌じゃないのか?」


「・・・?何でですか?」

「基本的にドワーフとエルフは仲が悪いっていうか、いがみ合っているっていうか・・・とにかく昔からそうなんだ。」

「ああ、そういうのがあるんですね。」


前世でいうと肌の色の差別的なアレが近いのかな?

平和な時代に生まれた元日本人には、よく分からないよ。


「私は、エルフだからとかドワーフだからとか一くくりにするのはしたくないですね。」

「そうか・・・お嬢ちゃんは心が広いんだな。」


ロドヴィックさんは、私の胸を見ながらそんな事を言った。

っていうかこの人、さっきから胸しか見てないんですけど!?


「オレは、エルフは嫌いだが巨乳なら許せる!!!」


そんな声高らかに言われても・・・やっぱり帰った方が良いかな?



「ところで、お嬢ちゃんはどんな弓を作りたいんだ?」

「え?弓じゃなくて剣を作りたいんですけど?」


「ん?見たところ弓使いアーチャーなのに剣なのか?」

「はい、元々長弓がメインでしたけど9年ほど前に胸がこの状態になったので仕方なく剣を使う事になったんです。」


一応短弓を持っているし、単発なら剣より威力が出るけど胸のせいで連射系の武技アーツが使い辛いからどうしても手数が足りなくなるんだよね。


「そうか、じゃあどんな剣だ?」


どんなって言われてもな~、口じゃ説明しづらいしミドルソードを1本とりだす。


「こんな感じの剣で、身体能力が向上する効果があるとありがたいんですけど」

「ふーむ、剣は反りのあるグラディウス系で・・・身体能力向上っていうと、魔剣だな。」


魔剣か~、初めて聞いたかも。

ロドヴィックさんは、ミドルソードを見てしかめっ面になる。


「この剣、造りは気持ち悪いぐらいにしっかりとしているが肝心の魂がこもってねぇ・・・確かに、こんなのを使っていたんならちゃんとした武器が欲しくなるわけだ。」


所詮、魔法で作ったインスタント武器だしね

造るのに数秒もかからないから・・・『こんなの』とかボロクソに言われても悔じぐな゛い゛も゛ん゛!(涙目)



「?お嬢ちゃん何泣いて・・・!?もしかしてこの剣を打ったのは、お嬢ちゃんか?」

「う゛ん゛!」


「いや、悪くねぇんだよ!すごく立派な剣だ!ただちょっとばかり気合とか信念が足りないっていうかだな・・・ああああ!!!な、泣くな!」


そんなことを言われても涙の方は、勝手に出てくる。

オロオロしたロドヴィックさんに頭をナデナデされて何とか泣き止むことができた。

ぅぅ・・・泣くつもりはなかったんだけど、ここ最近は精神が体に引っ張られて不安定になってるみたい。



「ほら、アメ玉なめるか?」

「わぁー♪ありがとうオジちゃん!」



あまくてしあわせ~♪・・・・・・ってアカン!思考が子供っぽくなってる!




◆◇◆◇




「結論から言うとだな・・・このレベルの剣を打てるお嬢ちゃんに教えられるのは、剣に気合を入れるやり方と魔剣の打ち方ぐらいだ。」

「え?ロドヴィックさんが剣を打ってくれるんじゃないんですか?」


「オレには・・・いや、どんな鍛冶師だろうとお嬢ちゃんの剣の完成度を超えるものは打てねぇ」

「この前、マイティゴブリンを斬ろうとしたら砕けましたけど?」

「んん?そんなはずは・・・砕けた剣はまだ持ってるか?」


アイテムボックスから砕けた剣の残骸を2つ取り出して見てもらう。


「これは、2本同時に砕けたのか?」

「はい。」

「ってことは、やっぱりそうか!」

「やっぱりって何ですか?」


「この剣は、お嬢ちゃんの闘気に耐えきれなくて砕けたんだ。マイティゴブリン程度なら柔らかい白パンみたいに斬れるはずだからな」

「うわぁ・・・」


なんてこったい、ミドルソード粉砕は私が原因だったよ。


「まず、どうやって武器を打ってるのかだな。最初の部分だけで良いから少しやってみてくれ」

「はい、〈武器創造〉クリエイトアームズ!」


ミドルソード一丁上がり!


「(会心のドヤ顔☆)」

「・・・・・・・・・。」



何故か酷く残念なものを見るような目で見られている気がするんだけど?



「いや、まあ・・・うん。それじゃ造りが良くても気合が入らねぇ訳だ。」

「じゃあ、どうしたらいいんですか?」


「魔法鍛冶って方法が悪いって訳じゃねぇんだが、完成まで短時間過ぎるのと精魂込めて剣を打つって感覚が足りねぇ。金属を打ったことないだろ?」

「はい、ハンマーとか持ったことないです。」


「仕方ねぇ、鍛冶場に案内してやる」


と言うことで鍛冶場に案内してもらった。

炉にはちゃんと火が入っている。



「まずは、気合を入れてコイツを打ってみろ」

「分かりました…そぉい!」


炉から出したばかりの金属に全力でハンマーを振り下ろす。




バキィ!




力が強すぎたのかハンマーの柄が折れた。


「ぐぁあああああ!!!」


折れて飛んで行ったハンマーがロドヴィックさんの股間に直撃した。


「ご、ごめんなさい!〈アルティメットヒール〉!」


「はぁ、はぁ、総ミスリル製のハンマーが折れちまうってどんだけ力を入れたんだ!力じゃなくて気合を入れろ気合を!」


ちょっと何言ってるか分かんない。気合って力のことじゃないの?

今度は、力は程々にして私なりに気合ってヤツを込めて打ってみる。



「そうだ、そんな感じだがまだ綿菓子のようにフワフワしてるぞ。もっと気合を入れろ!」

「は、はい!」


感覚がつかめてきた気がするので、ちょっとペースを上げてみる。



カァン!(ばるんっ!)カァン!(ばるんっ!)カァァン!(ばるるんっ!)



「!?・・・いいぞぉ!もっとだ!」

「はい!」


炉の熱ですごく汗が出る。



「よし、もういいぞ。いいオッパ・・・つちさばきだった。お嬢ちゃんは、筋が良い」

「ありがとうございます」


ふっ、鍛冶って案外ちょろいね♪


「次は、魔剣だが基本的にはさっきのと変わらねぇ。つちを打つ時に剣に込めたい魔法を発動待機状態で流し込むんだ。」

「うーん、よく分からないんで見本の魔剣を見せて頂いてもいいですか?」


ロドヴィックさんは、壁に掛けてあった剣をこちらに渡してくる。


「こいつは、オレの自信作で身体能力150上昇の魔剣だ」

「確かに剣の中から魔力を感じます」


参考になったので今度は、魔力を込めてハンマーを打ってみる。



カァン!(ばるんっ!)カァン!(ばるんっ!)カァァン!(ばるるんっ!)



「その調子だ!!」

「はいッ!」


汗で下着がびしょびしょだ。


「止めていいぞ、本当なら形成とか研ぎとか色々大変なんだが魔法鍛冶ができるお嬢ちゃんなら時間をかける必要はない。」



そうなんだ?ラッキー♪



「今の感覚を乗せて時間をかけて剣製すれば、それなりの魔剣ができる筈だ」

「じゃ、やってみます。〈武器創造〉クリエイトアームズ・・・」



イメージは、身体能力強化と火属性・・・必殺技的なものが使えるとカッコいいかも?



「―――できました。」

「3分か、練習ならそんなもんだな…ブッ!!!」


私の魔剣に触れたロドヴィックさんが突然噴出した。



「身体能力3750上昇に火属性で真力…解放?だと…?なんじゃこりゃぁああああ!!!」

「え?何かおかしかったですか?」


「おかしいに決まってる!普通の魔剣は複数の効果なんてない!それに国宝レベルでも身体能力上昇は、せいぜい300ぐらいだぞ!」


そんな魔剣をインスタント感覚で作られたんじゃたまったもんじゃないと・・・


ロドヴィックさん曰く身体能力3750は、一般人750人分らしい。

ふーんっていう事は、一般人の身体能力は5なんだね。



「真力解放とか聞いたこともねぇ!一体何なんだ!?」

「実演します。 真力解放!ヒートブレード!」


ヴォンッ!


剣身が超高熱の刃になる。



「たぶん大概の物は、溶断しちゃうと思います。」

「・・・ハガガガガ!!??(驚きすぎてアゴが外れた)」




◆◇◆◇




「良い物を見せてもらった。オレもまだまだだな。酒を飲みながら打ってる場合じゃなかったぜ。」

「こちらこそ魔剣の作り方とか教えて頂いてありがとうございました。」


私としても本当に僥倖だった。

各上が相手なら弓の弦で胸がパーン!ってなるダメージを覚悟するしかなかったけど魔剣でなら戦力を補えるね。


ロドヴィックさんには、お礼として先ほど作った火の魔剣と壊してしまったハンマーの代わりに作ったミスリル製の魔鎚をプレゼントすることにした。


「いいのか?こんなすげぇのを貰っちまって?」

「いいんですよ、然程本気で作ってない試作品ですからね。」


愛用の鎚は、壊れてしまったけどもっと良い物が手に入ったのでロドヴィックさんも嬉しそうだった。


私は、改めてお礼を言ってから店をあとにした。

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