8-10.依頼してみよう

翌日、朝と言うには遅い時間に目覚めた。

昨夜調子に乗って色々な魔剣を作りまくったせいで就寝時間が午前0時を過ぎちゃったんだよね。

お肌に悪いから気を付けないと・・・



寝ぼけ眼で腕輪型デバイスの立体ホログラム時計を起動する。


「う~ん?・・・10時前か~」


普段だったら大遅刻の時間だった。

欠伸をかみ殺しつつ伸びをすると少しサイズが縮んだせいで胸元のボタンはミシミシと鳴らなかった・・・ちょっとだけ悲しい。


「ふぁあ~あ、今日は何しようかな~」



あっ、監査項目の『依頼人への対応』って所が埋まってなかった。

さっさと仕事を終わらせるためにも今日のうちにやっちゃおう。


宿の食堂で朝食を食べようかと思ったらとっくに時間外だったので屋台でも探すかな~




ギルドの方へ向かいつつ街をフラフラと歩いていくと・・・


おっ?屋台があるよ!

焼ソーセージ屋さんだ!


肉の焼ける匂いが漂ってきて空きっ腹を刺激してくる。

ああっ、あれに粒マスタードをたっぷりつけて食べたい!

ビールも欲しくなるけど未成年だしアルコールに弱いこの体じゃ無理だし・・・悲しいし!


「お嬢ちゃん、ウチのチーズINソーセージは最高に美味いぜ!どうだい1本?」


腹ペコ感が顔に出てたらしくてオジサンの方から声をかけてきた。

チーズ入りか~すごく美味しそうだよ!


「チーズ入りのを1本下さい!」

「まいど!熱いからゆっくり食べるんだぞ」


わー♡すごく太くて立派なソーセージだ!チーズを入れる分だけ太目になってるんだね!


屋台には、マスタードが無いみたいだったのでアイテムボックスに常備していたものをたっぷりとかける。

ああ、もう我慢できない!


「いただきまーす!(あむ)」


!?アツーイ!


別に猫舌って訳じゃないんだけどチーズも入っているせいか熱すぎる!

ちょっとずつフーフーしながら食べよう!


ふーっ!ふーっ!

…う~ん、なかなか冷めない。



熱すぎるせいで何回も口に含んでは、出すのを繰り返していたら息の荒いオジサマ方が集まってきた。


「「「ハァハァ」」」


・・・?オジサン達もお腹すいたのかな?

あ、そっか!もうブランチの時間だから小腹が空くもんね!


少しは、冷めてきたのでかぶり付いたらソーセージの中からチーズが「パーン!」と弾けて一気に口の中に入ってきた。

勢いがすごくて顔にまでチーズがかかってしまった。



「ひぐぅッ…あついっ!」



受け止めきれなかったチーズが漏れだした。


ああっ!勿体ない!

串を持っていない方の手で受け止める・・・やっぱりアツーイ!


「ふぐぅ…! フー、フー」


何とか暑さを我慢できた。

危うくチーズが地面に落ちちゃうところだったよ。

ちょっとお行儀が悪いけど手のひらに零れたチーズをゴクリと飲み込んで顔にかかった物も剥がして食べた。



「「「ウッ…!」」」



手のひらに残ったチーズをペロペロと舐めとっていたらオジサン達全員が前のめりに倒れてしまった。

どんだけお腹空いてたの!?



まあいいか、熱かったけどチーズ入りソーセージ美味しかった~。

お腹も満たされたし、ギルドへ行こっと




◆◇◆◇




ギルドに着くと忙しくない時間帯なので閑散としていた。


今日は、モランシーさんが居なかった。

からかえなくて残念だったけど同じ人ばかりに接していると監査の評価が偏っちゃうから居なくて丁度良かったかもしれない。


依頼受付用紙にサッと記入して受付に向かって歩いていく。

受付けのお姉さんが私に気づいて怪訝な表情をした。

どう見ても普段着だし冒険に出れる様な服装じゃないからね。



「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「こちらの依頼をお願いします。」


「大金貨1枚(5万)で白蛇草5束の採取依頼で宜しかったですね?」

「はい、5束以上でも追加で買い取りますのでよろしくお願いします。」

「確かに承りました。」



よし、これでOK

後は冒険者待ちだからね。


ちなみに白蛇草は、地球の化粧水なんて目じゃないレベルの美容効果がある貴重な物なんだけど、効能を知らないからほとんどの人が見向きもしないの。


当然、情報公開なんてしない。

だって、他人に教える必要ないし~乱獲されたら困るからね。

私は、自分さえよければいいの!


で、その貴重な草を何で自分で採りに行かないのかと言うと群生地には白ヘビがいっぱいいるの・・・

遠距離攻撃でヘビを絶滅させればいいと思いきや白蛇草の生育には、白ヘビが欠かせないってことで私が取りに行くのは無理!


前は、スギルに頼んで採ってもらってたけど今は、気軽に頼めなくなっちゃったからね。

そろそろ在庫が底をつきそうだし補充したかったんだ~


用も済んだのでギルドから外に出た。



―――ッ!



緊急のバックステップでその場を飛び退くとさっきまで私が居た場所で上昇気流が発生した。

私じゃなければ危うくスカートを捲られるところだったよ!



「出てきなさい!そこに居るんでしょ!?」


「あーあ、しくじったぜ。」

「バカ!早く謝った方が良いよ!ティファ姉キレやすいから!」


んー? んんッ?


どこかで見たことがあるようなムカつく顔の少年は・・・

以前、孤児院で私のスカートを捲ったクソガキだ!


隣にいる苦労してそうな少女も見覚えがある。

二人とも数年前に孤児院を巣立った子達だ。



「ええと、久しぶり~?名前なんだっけ?」


「ああ~、ティファ姉はアル君にべったりだったし名前覚えるの苦手だったもんね・・・とりあえずライ君が死んじゃうから胸倉をつかんでる手を放して欲しいんだけど?」

「(ぐがががが)」


確かに死にそうだから仕方なーく解放してあげる。



「あー、そうそうライ君だったねライ君。」

「ゲホッ、はぁはぁ・・・完全に忘れてただろ!?こいつの名前言えるか?」


そう言って相方の少女を指さすライ君。



「確か、アレよ!アレ! 『マ』から始まって・・・」


二人から思いっきり残念そうな顔をされた。



「いや、こう喉からでそうなアレで『ミ』から始まる・・・」

「ティファ姉、ワタシはリアだよ?」


「・・・うん、ごめん。」


正直、名乗られても分からなかった。顔は覚えてるんだけどね。

仕方ないじゃない!何十人も名前なんて覚えられないよ!




◆◇◆◇




「私は、出張でフォーレに来たんだけど二人ともここに住んでるの?」

「いや、オレ達いつもは王都に居るぜ」

「ティファ姉『アールスト・チルドレン』ってクラン知らない?」


はて?


「何それ?」

「ウソだろ!?王都じゃ有名なクランだぜ?」

「アールストで活動してる子達も所属してるんだよ?ギルドに居れば自然に情報が入ってくると思うけど?」



「・・・聞いてない。」



なに?私ってば、ハブられてるの?



「王都組は、半年前ぐらい前に全員Sランクなったから結構ウワサになってるはずだぜ?」

「『アールスト孤児院の出身者はバケモノか!?』とか『Sランク冒険者のバーゲンセールか!?』って言われてるよね。それに・・・」



全員Sランクですって!?



「メンバー全員が武技アーツと魔法を使えるし、読み書きと計算も完璧だから指名依頼がいっぱい来るんだよ?」

「うわぁ・・・」



アル君のついでと思って教育したら優秀になりすぎちゃったみたいだね。



「優秀過ぎるから、やっかみも多いんだけどね。」

「う、うーん?ごめんね?」


「いや、ティファ姉にはみんな感謝してるんだぜ?冒険者だけじゃなくて色々な仕事に就いてる奴らも結構いるし、やりたいことができるからな。」

「孤児だからってバカにされないし・・・ホントならね、ワタシたちみたいな孤児院出の人ってロクな仕事に就けないことが多いんだよ?」

「・・・そっかー、よかった。」



「そういえば、アルは来てるのか?」

「・・・アールストでお留守番してるよ。」


「ティファ姉・・・何かあったの?」



少し悩んだけど、ライ君だけに『アル君棒をゴシゴシ事件』について相談することにした。

事が事だけにリアちゃんのような女の子には言いづらい。




「・・・・・・オレには、本当の姉ちゃんが居ないから分からな…あ、アルも血はつながってなかったか。まあ・・・しばらくそっとしとくしかないと思うぜ?」

「・・・だよね。」


私も、前世でやらかした時に妹のみことちゃんの優しい笑顔が何よりも痛かった。

罪人の私ごときがががががガガガガガガ



「おい、だいじょぶかよティファ姉!」


頭を抱えてグネグネしだしたので心配されてしまった。



「大丈夫、ただの発作よ」

「大丈夫に聞こえないんだが・・・」



とりあえずアル君のことは保留で、せっかく二人と再会したんだしお昼ご飯を一緒に食べることになった。

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