8-5.初心者講習からの~ダンジョンへ

一度ジョージ達と別れてお昼ご飯を食べていたら、気が向いたので私も初心者講習を受けてみることにした。

監査の参考になるだろうし初心を忘れないためにも良いと思うんだよ。



「スティファニーさんは、初心者講習は受けれませんよ。」

「どういう事ですか!?オモラシーさん!」


「私の名前は、モランシーです!」


顔を真っ赤にして怒るオモラ・・・モランシーさん昨日漏らしたりするから、ややこしいんだよね~


「スティファニーさんは、前回の功績でEランクへ昇格となります。それに9年以上もFランク冒険者をされていたのですから初心者講習の対象には、ならないんですよ。」

「確かに…それは、その通りですね。見学はできないんですか?」


「ああ、ジョージさん達が気になるんですね・・・分かりました。邪魔をしないのであれば見学をしても構いませんよ」

「ありがとうございます。」


ギルド内の講義室に初心者講習の参加者が集まった。


後方で席に座らず腕を組んで立っている私が気になるようでチラチラと視線を向けてくる。


って言うかこっち見すぎじゃない?

何だろなと思って組んでいる腕を解いたら残念そうなため息が聞こえてきた・・・胸を見てたんかい!

ホントにもう、男ってヤツは!



「時間になったから講義を始めるぞ」


髭もじゃのゴツイ講師が座学を担当するみたいなので心配になったけれど内容は普通だった。

締めくくりに模擬試験をしたらジョージ達は案の定、赤点だった。ダメだこりゃ。


1時間半もすると冒険者達は、じっとしていられなくなっていた。

絶妙なタイミングで実技の講義をすると言うことで訓練所に移動となる。さすがに手馴れてるわね。


実技では、各々の武器の基本的な取り回しについてだったけど・・・

ジョージ達が武器を構えると大爆笑が巻き起こった。


「ププッ、あいつ等の得物見てみろよwww武器じゃなくて農具だぞwww」

「ホントだwwwwww」

「ぶはははwwwひーひーぃwwww」

「やめてくれやwww腹筋が死ぬwwwwwww」


「「「・・・・・・。」」」


ジョージ達は、物凄くバカにされながらも黙々と素振りをしていた。



体が温まってきたところで髭もじゃ講師VS受講者で模擬戦を行うことになった。


「くっ…」

「そんな剣筋じゃゴブリン2匹にも勝てんぞ素振りからやり直せ。よし、次ッ!」


次々とひよっこ達がやられて講師からアドバイスを受けていきジョージの順番になった。


真剣にクワを構えるジョージを笑う者と、その様子を腕を組んで見守っている私の胸をガン見する者とで別れた。


ジョージの構えには、隙がなく技量の方も講師を上回っていた。…ってなんでやねん!


使い慣れた…言わば熟練度の高い武器は、人をこんなにも変えるというの!?


「おらおらおらおらおらぁ!」

「くっ、何と激しい攻撃だ…!」


攻防が始まり凄まじい剣戟とクワ戟が交わされ…


「参った」

クワが講師の首筋にピタリと当てられていた。


「やったー!オラが勝っただぁ!」

「座学は壊滅的だが、実技は申し分ないな。」


勝っちゃったし、褒められてるし



その後のデミ、アナも講師に勝利した…してしまった。


戦士のデミは良いとして、魔法使いのアナが武器だけで相手を圧倒していた。

唐棹からざおで脱穀…というか武器と服を剥ぎ取られた講師が素っ裸になって叩きのめされてボッコボコに負けた。


いくら慣れた武器だからって戦闘力上がり過ぎでしょ!?

武器は、私が魔法で作ったけど一般に流通している農具と品質は同じレベルだし・・・純粋に熟練度の問題かな?



「つ、つえぇ!」

「くっ、俺は農民より弱いって言うのか!」

「あんなダセェ奴らより弱い俺等って・・・」

「元Aランク剣士【暗黒の執行人】デニス(アールストのギルド長)と双璧をなすと言われたアンダーパインさんが負けるなんて!」

「何!マジか!」


ふーん、ウチのギルド長と同じぐらいか…


結論から言うと、バカでも講師を倒すほどの腕っぷしがあればやっていけるだろうということで次回以降の講習は免除(ある意味出禁)になった。


「オラ、何だかクワを持っていると力が湧いてくるだ!」

「アタイもスキを握っていると体のキレがいいべさ!」

「アタスもこの唐棹からざおさ使ったら誰にも負ける気がせんね!」


元Aランク冒険者を倒したことにより自信がついたようだし、よーく見ると3人から闘気が立ち上っている。

これは…すぐにでも武技アーツが使えるようになりそうだね・・・


ブォン!ブォン!と無駄に素振りをしまくる戦闘農民どもは、実力を試したくて仕方がないようだった。


うーん、まだ日程には余裕があるし近場のダンジョンに2泊3日ぐらい行ってみようかな?

ジョージ達に明日から泊りでダンジョンに行くかと聞いたら、ますます気合を入れて素振りをし始めた。


「強くなって嬉しいのは分かるけど、明日ダンジョンに行くんだから程々にね。あと、ちゃんと準備をしておいてよね?」

「「「分かっただ!」」」


返事は良いんだけど多分駄目だね。実際に痛い思いをして覚えていくしかないかな。




◆◇◆◇




翌日、やってまいりましたフォーレ近郊のダンジョンです。

ここは、混合型のダンジョンで地上3階と地下1階までが遺跡で地下2階以降が洞窟になっている。


「ここが、ダンジョンだべか?」


「そうだよ。知っているかも知れないけど異界化した遺跡や洞窟がダンジョンって呼ばれているの。

最奥のダンジョンコアが破壊されない限り魔物やお宝・ドロップ品を生み出す資源でもあるんだよ。」


「「「ほーん」」」

コイツ等絶対分かってないよね…まあいいや


「基本的に、ダンジョンコアの破壊は禁止されているから気を付けてね」

「何で壊したらだめだべか?」


「あのね、コアを破壊するとダンジョンじゃなくなるの。ダンジョンじゃなくなったら踏破したらそこで終わり。魔物も出ないドロップもしないお宝も出ない出がらしの空間になっちゃうんだよ。」

「そりゃ大変だべ、絶対に壊さねぇようにするだ。」


アナとデミも頷いて何とか分かってくれたようだ。


それはまあ良いとして、ジョージ達の装備が軽装過ぎるんだよね~


「・・・そんな装備で大丈夫なの?」


「大丈夫だぁ、問題ねぇべ!」

「アタイも!」「アタスも!」


突っ込みどころ満載だよ!

前回の報酬でお金は十分あるはずなのに・・・


「明かり用のカンテラ、水、食料、寝袋、薬の類とか色々持ってないみたいだけど?」

「「「―――!?」」」


「なにィ!」みたいな顔してるので本気で忘れてたっぽい。



「スディファニーだって持ってねーべさ!」

「「んだんだ!」」


「私は、アイテムボックスに入れてあるからね」


一応中身を取り出して見せてあげる。


水、食料、小型のコテージ、寝袋、着替え等々

明かりは、魔法で代用するし回復魔法があるので薬はいらない。


「今回は私の物資を使っていいからとりあえずダンジョンに入りましょ」




◆◇◆◇




今回は、地下に潜ることにした。

地上の遺跡は難易度が高いのでダンジョンの素人は手を出さない方がいい。私も含めてね。

かなり性質たちの悪い罠があるみたいなの。

私はメンタルが弱いから気絶しちゃうかもしれない。いくら強くなったとはいえ、根は草食系日本人だからね。


地下1階は、安全地帯なので2階の洞窟につながる入口まで移動した。


何か入り口付近でガラの悪そうな冒険者達が装備を確認している。うわぁ、「ヒャッハー」とか言いそうだな~

私達が2階に下りるために近づいて行ったらリーダーっぽい人がジョージに声をかけてきた。


「おい、何で農民が女連れでダンジョンにいるんだ?」

「ん?オラ達のことだか?」


「他に誰がいる?さっさと帰って畑でも耕してな!」

「バカにするでねぇ!オラ達は冒険者だ!」


ビシッっと冒険者カードをみせたけど失笑されてしまった。


「はっ、確かに冒険者みてーだがFランクなんて誰だってなれる。俺達はBランクだぜ?・・・帰りな!もちろん女を置いてな!」

「ヒューッ、さすがオルカ兄貴!かっけー!」

「ケヒヒヒッ、オレっち貧乳の子(アナ)が良いな!」

「オイラ、青髪の子(デミ)のケツに顔を埋めたい!」

「アッシは、あの巨乳をモミたいでヤンス!」


「バカ野郎!巨乳はリーダーの俺からに決まってるだろうが!」


やから共は、勝手な事ばかりいいまくっている。

ジョージは、相手のランクが上だからなのか何も言い返せない。


ん?リーダーのオルカとかいう人の首から何か…

気になったのでスタスタと近寄る。


「何だ巨乳の姉ちゃん胸でも揉ませてくれるのか?」

「あのぉーすみません。…首からコンブが生えてますよ?」


ご本人が分かってないみたいなので指差して教えてあげる。


「バカヤローォ!それは、襟足えりあしじゃボケェ!」

「オルカ兄貴のオシャレじゃろがボケェ!」


親切に教えてあげたのに下っ端さん達が急に怒り出してしまった。


「肩にウニがくっ付いてるから、てっきりコンブだと…」

「アホかぁ!そのトゲトゲは肩パットじゃボケェ!」

「どう見たらウニに見えるんじゃボケェ!」



「えーと、もしかして態々わざわざ襟足を伸ばしているんですか?」


「・・・・・・ちげーし、この前髪切った時に…ちょっと切るのを忘れただけだしぃ!」

「「オルカ照れちゃったよ!!!」」

「「大丈夫、カッコいいからオルカ!!!」」


ナイフを取り出して襟足をザクッと根元から刈り取ってしまった。


「トゲトゲだって別にカッコいいなんて思ってねーしぃ!」


オルカは、ブチッと肩パットを引きはがして投げ捨ててしまった。


「お前等、今日は気分じゃねーから帰るぞ!」

「「「「え?待ってくれよオルカー!!!」」」」


拗ねたっぽいオルカを追いかけて輩共は去って行った。




・・・何だったんだろ?


「まあいいか、先に進みましょ」


ジョージ達に声をかけて地下2階に進んでいった。

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