3-2章 フォーレ出張

8-1.駆け出し冒険者スティファニー

スティファニーです。

私は今、王都から西にあるフォーレという街に居ます。


この街には冒険者ギルドを抜き打ちで監査するために来ている・・・って言うのは、ほぼ建前でアル君としばらく離れて過ごすのが目的なの。

出会ってからずーっと一緒にいたからね、お互いを見つめ直すのに丁度良い機会だ。


行きに4日、監査に4日、帰りに4日の予定だったけど音速飛行で移動したので出発から10分もしない内にフォーレの街に着いちゃった。


いやー、やっぱり音速は速いね~

おっとパンツチェック・・・うん、ちゃんと穿いてる。

移動時は、防風シールドを張っているんだから脱げる方がおかしいんだけどね。


今の装備は、狩人風のミニスカ戦闘服で全てスパイダーシルクで出来ているからものすごく軽い。

軽すぎて脱げても分かりにくいという欠点を除けば物理・魔法防御が高いから、とても良いものだよ。


まだまだ早朝なのでギルドもこれから開くところだね。


元々監査の方もゆるーい感じなので、せっかくだから期間一杯ここのギルドで冒険者活動をしてみようかな~

あんまり依頼を受けてなかったからFランクのままだしこの際1つランクを上げても良いかもしれない。


ギルドが開くのを待っている冒険者達に紛れていると周囲から視線を感じる。まあ、余所者だから仕方ないね。


慣れない場所に来たせいなのか視線が不快だし気持ち悪い。

何故だか分からないけど恥ずかしいと言う気持ちが湧き上がってくる。

とっくに見られることには慣れたつもりだったんだけど・・・柄にもなく緊張でもしているのかな?


オープンの時間になったら依頼争奪戦の開始だ。


むぅ・・・依頼は結構あるんだけど1人では受けられない依頼が結構あるんだね。

別の街に来て薬草採取くさむしりをするのもどうかと思うし・・・。

掲示板の前で悩んでいたら私に向かってくる気配を感じる。


「なあ、そこの君。俺達と一緒にゴブリン退治をしないか?」


声をかけられた方を見ると自信に満ち溢れた表情をした剣士の青年だった。

日に焼けた小麦色の肌、黒髪・黒目で背も高くてそれなりに鍛えられているし顔もカッコいい。


まあ、私の好みじゃないんだけど。


連れに2人女性がいて、オレンジ髪の貧乳魔法使いさんと青髪の美乳戦士さんだ。


彼等の出で立ちを見るに駆け出しの冒険者だね。

年齢も成人して間もない感じだし見た目が同年代位に見えるから私に声をかけてきたんだろうね


「私に言ったの?」

「ああ。君、エルフのレンジャーだろ?索敵とか罠解除とかそれっぽいことできるよな?」


それっぽいって・・・まあ、できるけど。


「できるわよ、ゴブリン退治で罠解除ってことは、巣穴ごと殺るの?」

「ああ!俺達で苦しんでいる村の人達を救うんだ!丁度良かったよ、君みたいな人がいてくれて!」


まだやるとは返事してないんですけど・・・まあいいか。せっかくのお誘いだし彼らに混ざってみよう。


「スティファニーよ。Fランクだけどヨロシクね。」

「俺は、ジョージだ。ヨロシクな!」


魔法使いは、アナ。魔法がメインのようでワンドを持っている。

戦士は、デミ。武器は槍だね。

ジョージ達のパーティも全員Fランクとの事だった。



依頼票を受付に持っていくと難色を示された。

依頼料が格段に安い上に事前情報が曖昧な所が多いため危険度が跳ね上がる可能性があり、経験の少ない駆け出しにはお薦めできないとのことだった。


うん、的確なアドバイスだね。

彼等は冒険者になって1年も経っていないはずだ。

駆け出しパーティだけでゴブリンの巣に突っ込もうとしている時点でお察し、完全に冒険者家業をなめてるよね。


しかし、ジョージが強硬に問題ないと言い張ったので受付のお姉さんは渋々と依頼の受付をした。

あの様子だとこっそりおりの冒険者を付けてくれるだろうね。


早速、依頼元の村に向かう事になった。

巣を攻略するって言うのに何の準備もしないのはどうかと思うんだけど・・・まあ、私からは言わないでおこう。




◆◇◆◇




Side:ジョージ


俺達の故郷の村がある辺りにゴブリンの巣ができたらしい。

村からギルドへ依頼が出ているけど金額が低いせいか受けてくれるパーティがない。


ここ数日協力者を求めて奔走したが誰もが首を縦に振ってくれなかった。

俺達で討伐するにしてもあと一人、斥候役だけでもいいから欲しいのだが・・・


ん?やけに真新しい装備を纏った巨乳の美少女エルフがぽやーっと掲示板を眺めている。

短弓を背負っているからレンジャーってところか?


駆け出しの冒険者だろうが、見ない顔だし身綺麗な感じからすると良い所のお嬢様かもしれない。

しばらく彼女(主に胸)に見惚れていたら幼馴染のアナとデミに左右から抓られた。


痛い!


駆け出しとは言えエルフなら人間より多くの時間を過ごしているはずだから戦力になると、アナとデミを説得してエルフの彼女をゴブリン退治に勧誘してみた。


「スティファニーよ。Fランクだけどヨロシクね。」


彼女は迷わずパーティに入ってくれることになった。

スティファニーか・・・いい名前だ、それにすごく良い匂いがする。あと、巨乳だし。一度でいいからあの胸で乳搾りをしてみたい。


受付で一悶着があった。

経験の浅い駆け出し冒険者には薦められないと受付嬢は言う。


ゴブリン程度の雑魚に俺たちが遅れを取るはずがないと説き伏せて何とか依頼を受付けてもらった。

まったく、ひよっこ扱いしやがって!


4人もいるんだからゴブリンの巣ぐらいすぐにブッ潰してやるだ!・・・おっと興奮してなまりがでちまっただ。


そうだ、依頼が出されてから何日も経っているから急がねば!




◆◇◆◇




村には、お昼前に着いた。

フォーレからは、だいたい10kmぐらい離れているね。


私達は、依頼主である村長の家に向かう。


「おーい!親父は居るか?」

「うるせー誰だべ!でけぇ声で言わんでも聞こえとるわ!・・・ってジョージか?アナにデミも・・・」


チラッとオッサンが私の胸をガン見してきた。何だか無性に腹が立つ。


「ああ、ただいま親父。」

「よー帰ってきた。やっぱり冒険者は合わんかっただろ?・・・それにしても随分べっぴんな嫁っこさ連れてきたな!」

と、こちらを見ながら言ってきた。


おいオッサン!誰が嫁だ、ぶっ殺すぞ!・・・っと、いけない何だか情緒が不安定になってる。

深呼吸して落ち着こう・・・ヒッヒッフー、ヒッヒッフー


「違うだ!ゴブリン退治の依頼さオラ達が受けてきただ!」

「バーカ言うでねぇ!この間まで農民だったオメェ達になーにができるって言うだ?」


「バカにするでねぇ!オラ達は冒険者になって強くなっただ!ゴブリンなんてこの剣で一撃だっぺ!」

「アタシの火魔法でゴブリンなんて黒コゲよ!」

「アタイの槍だってゴブリンなんか軽々貫くわ!」


「なん・・・だと・・・?」

オッサンは、プルプルと震え始めた


「ひょ、ひょっとしたら・・・ひょっとするぞー!」

急に飛び跳ねながら喜びだした。


一体何がひょっとするんだろうか?


「ジョージ!アナ!デミ!オラが悪かっただ!村のためにゴブリンを倒してけれ!」

「ああ、オラ達に任せるだ!」


ガッシリと親子は抱き合った・・・暑苦しいな~

ジト目で見ていたらオッサンと目があった。


「嫁っこも頑張ってけれ!」

「嫁じゃありません!臨時でパーティに参加しているだけです!」


・・・やっぱりぶっ殺すか?



オッサン・・・ジョージの父親が村長だった。

巣に居るゴブリン達は10匹弱で大した規模ではないらしい。(私は、この情報を信用していない)

主に昼に活動していることから深夜~夜明け前に攻撃を仕掛けることとなった。


15時頃に就寝して深夜0時過ぎに出発することになったのだけど・・・

隣の部屋から聞こえてくる音に起こされて私の機嫌はすこぶる悪かった。


自分でしっかり休めって言ったのにジョージ達は、3人で激しくお楽しみタイムを満喫している。ギシギシアンアンうるさいよ!

あと3時間で出発するのに体力の残量は大丈夫なの!?


普段の私なら嬉々として覗きに行ってハァハァする所なんだけど今は、不快感ばかりが込み上げてきてそんな気分じゃない。

原因は分からないけれど性に対して嫌悪感と言うか潔癖気味になってしまった気がする。


とは言え防音するわけにもいかない。


ゴブリンの巣が村の近くにあるのだから、もうここは安全な場所じゃない。

防音なんてしていたら知らない間に村が襲撃されて私以外が殺されている可能性だってあるからだ。


不快感に耐えつつ出発時間を待つ。



私は、準備万端で体臭や装備の臭いなども完全に消してきたのにコイツ等ときたら・・・アレやコレの臭いがムワッと漂ってくる始末だ。

ゴブリンの鼻をなめているんだろうか?

メスの匂いなんてさせているとアイツ等は飛び起きてくるよ?


「よし、準備はいいか?」

自信満々にほざくバカとうなずくアナとデミ。


「ぜんっぜん良くないよ!貴方達、酷いにおいよ?」

「何だ?スティファニーも混ざりたかったならそう言えば良かったのに・・・」


ビシッ!っと寝言をいったジョージを短弓で叩く。


「痛い、何をするだー!」

「ふざけないで!こんなに臭いをプンプンさせていたらゴブリン達が一斉に目を覚ますわよ!」


不服そうな顔をするジョージ達だが、これだけは看過できない。

他にも落ち度はいっぱいあるんだけど臭いに関しては致命的すぎる。


実力を見るために手を出さないつもりだったけど強制的に浄化・消臭させてもらった。


やれやれだわ・・・やっとゴブリンの巣に行くことができる。




◆◇◆◇




巣穴に着くと見張り・・・のゴブリンが4匹いた。これは相当拙い。


「ジョージ、ヤバいわよ見張りが4匹も居る。撤退を推奨するわ」

「うん?見張りと言っても全員寝てるじゃないか。楽に倒せるだろ?」


駄目だこりゃ、気づいてもらうのはやめてハッキリ言おう。


「確かに見張りを倒すだけなら簡単よ。でもね、見張りが居るっていう事は見張りをさせている奴が居るっていう事なのよ?」

「まさか・・・上位種か!?」


ちょっとは深刻さが分かってくれたかな?それだけじゃないんだよ


「推測だけどね、見張りが4匹も居るっていう事は最低でも40匹はゴブリンが居るっていう事だよ」

「40匹だべか!?」


アナとデミも顔を青くしている


「最悪の場合は80~100匹ね」

諦めてもらうにも絶望的な事実を言った。

いくら経験不足でもこれだけ言えば分かるだろうと思ったんだけど・・・


「オラがやらなきゃ・・・」

「ん?」

ジョージがブツブツ言い出した。


「オラ達がやらなきゃ・・・誰がやる!」

おバカ!声がデカいよ!


ジョージが巣に向かって走りだした!アナとデミもそれに続く・・・ってバカァ!

見張り達の意識が覚醒し始めたのでやむを得ず急所を射抜いて声を上げさせず絶命させた。


「うおおおおおお!!!」

折角静かに見張りを倒したのにジョージが雄たけびを上げながら巣に突っ込んで行く。


何のために深夜にしたと思っているの!?

って言うか斥候を置いて突撃してどうするのよ!



「うわああああああ!!!」

案の定5秒もしない内にジョージの悲鳴が聞こえてきた。


「あ、足がぁああああああ!俺の足があああ!!!」

落ち着いて見ればバレバレのトラバサミに引っかかって血を流していた。


騒いだせいで奥から続々とゴブリン達がこちらへ向かってくる。


「ああ、もう!何やってるの!ジョージを助けるからアナとデミはゴブリン達を牽制して!無理に倒さなくていいから牽制するのよ!」

大事な事なので2回言いました!


「「まかせて!」」

返事は良いけど大丈夫かな?


「焼き尽くせ〈ファイヤーボルト〉!」

「せい!」

アナが一匹・・を魔法で仕留めて、デミの槍が一匹の体の中心を深々・・・・・と貫いた。


悪手だ。


アナは次の詠唱が間に合わずゴブリン達に組み付かれて押し倒された。

デミも重くなった槍のせいで防戦一方となりアナと同じく押し倒されてしまった。


アナは、ファイヤーウォールで足止めするべきだったしデミも石突を使って対処するべきだった。


「アナー!デミー!何をするだーッ!許さんッ!」


応急処置も終わってないのにジョージが走り出し足の痛みに呻いてスッ転んだ。

その拍子に鉄の剣が手からすっぽ抜けて転がって行きゴブリンに拾われる始末・・・


もう踏んだり蹴ったりだよ!


「・・・お願いしても良いかな?」

私は、背後の人物に声をかける。


「いいぜ、任せな。報酬は嬢ちゃんのキスでな!」


ダンッ!と爆音が鳴り響き20匹ほどのゴブリンが一撃で全滅した。




あとがき

「何をするだーッ!」 は、誤字ではありません。

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