幕間

閑話、女の子の日

スティファニーです。

今日は、3月3日火の日

後2ヶ月経つとアールストに住んで満6年になる。

早朝から私の体調は、すこぶる悪かった。とにかく胸が張り裂けそうに苦しい。


「はぁ♡、はぁ♡、はぁ♡」

苦しいのに頭の中がエッチなことしか考えられなくてどうにかなりそうだった。

本能からなのかコップを用意して、はち切れそうな胸から溢れ出るものを搾り出す。コップの8割ほどを満たす頃には胸の苦しみは楽になっていた。


「私…急にどうしたんだろう・・・うぐッ!」

お腹に違和感を覚えたので急いでトイレに向かう・・・


いやー、すっかり忘れてた。今日は10ヶ月に1度の生理の日だった。


理由が分かって納得、ムラムラするわけだよ。

さっさと魔法で体調を整えて部屋に戻ろう。


部屋に戻るとアル君がコップを口に当ててぐいっとやっていた。

「ぷはぁー!あ、おはようティファ姉ちゃん」

「あ、アル君!・・・それ、飲んじゃったの!?」

「ごめん、ちょっと喉が渇いてたから牛乳もらちゃった」

あ、あああああ!感情をどう表現して良いのか分からない!恥ずかしいのを振り切りすぎて逆に冷静になってきた。

とりあえず、アル君の状態を確認しないと!


「アル君、体は何ともない?」

「え?もしかして悪くなってた牛乳なの?生暖かったけどすごく美味しかったよ?」

ああああ!ダメだズレた答えしか返ってこない!美味しいとかの情報なんかいらないし!

本当のことを言って聞くわけにもいかない、もう黙っておこう。そして忘れよう。


「何ともないならいいのよ」

「何だか体の中から力が湧いてくる感じがするよ!」

ブッ!アル君の魔力が数倍に跳ね上がってる!?何これ恐い!

しかも視た感じ一時的なものじゃないっぽい。


こんな危ないもの世の中に出せないよ!元々出すつもりもないけど!

ああ!時間もあんまりないし朝食を食べて出勤だよ!


「ティファ姉ちゃん、オレも来月で9歳になるから孤児院まで一人でいけるよ?」

「アル君、子供が変な遠慮なんかしなくていいんだよ?それとも恥ずかしいのかな?」

「恥ずかしくなんかないし。ただティファ姉ちゃんが通勤するのが楽になるかなって思って」

「そういうのを遠慮って言うんだよ?アル君はホントに良い子だねウリウリ」

頭を抱き締めておっぱいを当ててあげる。もうアル君から胸へのお触りは禁止になってるからね。


「や、やめてよ街の人達がみてるよ?」

「姉と弟だからいいんだよ♪・・・あ、パリスちゃんが手を振ってるよ!」

「え゛?」

アル君がチワワの様に震え出した。よっぽど嬉しいんだね♪

パリスちゃんは、前々からアル君にベッタリな女の子でいつも仲良くしているんだよ。モテモテだね♪


「おはよう~パリスちゃん」

「おはようございます。ティファお姉さま。・・・アル、OHANASHIがあります。」

「は、はい(ぷるぷる)」

あら?アル君涙を流すほどパリスちゃんに会いたかったんだね。

ぐいぐい引っ張られていくアル君を見送りつつギルドへ向かう。



「おはようございます。セリーナさん」

「おはようスティファニー。」

「ぱいぱい!」

セリーナさんの胸に赤ちゃんが抱かれている。昨年セリーナさんが生んだ男の子だ。

私のことを『ぱいぱい』って呼ぶのだけはやめて欲しいんだけど何回言っても全く直る気配はない。


「おねーちゃんだよ?」

「ぱーいぱいだお!」

くっ、ワザとじゃないよね?


「そういえば、そろそろ生理でしょ?体は大丈夫?」

「何で私の周期を把握してるんですか!?」

「前回と前々回フェロモンをまき散らしてエライことになったじゃない!忘れたとは言わせないわよ?」

いひゃいれす痛いですほっへはひっほっぺた引っはははいえくああい張らないで下さい!」

「とにかく体調に異常を感じたらすぐに言ってね。」

「はい、分かりました。」


滞りなく業務をこなして朝の忙しい時間が過ぎたので交代で休憩に入ることになった。


3月3日の為に用意した秘蔵の菱餅ひしもちを取り出したところで体調が急に悪化した。


「はぁ♡、はぁ♡、はぁ♡」

朝搾ったのにまた胸が苦しくなってきた。

部屋にカギをかけてから備品のコップに搾りだす。危うくコップから溢れそうになるところで何とか落ち着きを取り戻した。


「ふぅ・・・うぐッ!と、トイレ!」

股間に湿り気を感じる。大変、シートを取り替えないと!

身なりを整てから慌ててカギを開けて一目散にトイレに向かった。




◆◇◆◇




Side:スギル


俺は、知麻夜 杉流ちまよい すぎるだ。

アールスト冒険者ギルド所属のBランク魔法使い・・・・・・・・だ。

この2年半ほどでかなり成長することができた。

スティファニーもおまけ程度に考えていた魔法の方が俺の適性に合っていたらしくてメキメキと腕を上げることができた。

今では、大概の魔物に負けることは無い。

欠点は、魔力量の少なさで長期戦になると不利になる。これが改善できればもっと上を目指せるってギルド長も言ってくれてるんだが地道に頑張るしかないな。


やれやれ数日振りにアールストの街に帰ってこれたぜ。

スティファニーからの個人依頼で肌にいい成分が出るとかいう薬草を採取に行ってたんだがマジ疲れたわー。


ギルドの扉を開ける。

「チョリーッス、依頼の品を持ってきたんすけどスティファニーは何処っすか?」

「今は休憩中、奥の休憩室にいる。入っていいよ」

「じゃ、お邪魔します。」

エミリーさん相変わらず淡々として何考えてるかよく分かんねー。よく彼氏ができたな。エミリーのポッコリ膨れたお腹を横目に見つつ休憩室に向かう。


コンコン・・・


「あれ?居ねぇな?・・・お!菓子と牛乳?これ食って待ってろってか?腹減ってたし丁度いいな」

これは、ひな祭りで食ったことがあるモチだな。もぐもぐゴクゴク、この牛乳!生温いけど滅茶苦茶ウメーな!


「プハー!生き返るぜ!」


ガチャッ




◆◇◆◇




「プハー!生き返るぜ!」

扉を開けたらスギルが居て、飲み干していてた。またなの!?

かぁああっと顔に血が集まる。ア゛ーーーーーーーー!!!!

部屋を空けて3分しか経ってないのに何でこんなことになってるの!


「ど、どうしたんだスティファニー、すげぇ顔してるぞ?具合でも悪いのか!?」

お前のせいだよ!

でも口には出せない!


「わ、私のぼ…菱餅ひしもち食べちゃったの?」

「あ・・・わりぃスティファニーのおやつだったか。てっきり用意されてると思って食っちまった。あ、コレ頼まれてた薬草な。」

バサリと依頼しておいた薬草を渡してくれたけどそれどころじゃない!

「あーモチもウマかったけど、牛乳が滅茶苦茶ウマかったぞ!もっとないのか?」


「無いよ!スギルのバカァーーーー!!!」

バチーン!

「ぶべらぁーー!!!」

しばらく顔を合わせたくないので報酬をポケットにぶち込んでギルドの外に叩き出しておいた。


全くもうっ!もーー!!


何て日だ!



補足:何故スギルに個人依頼をしたのかと言うと、ヘビがたくさん生息する森だったからです。

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