後後編

 ここで話は最初に戻る。

 三回も企業の説明会で一緒になった子で、胸が大きくて、笑顔がかわいくて、ショートボブが似合っていて、胸が大きくて、八重歯が素敵で、胸が大きかった。スーツのズボンは尻を強調しているようにいつもぴっちりしていた。

 説明会の終わりに成り行き(!)で夕食を食べに行って、その後も連絡を取り合い、一ヶ月後にデートに行った。大阪、神戸、京都、どこに行くべきか、行かぬべきか。奈良と滋賀は論外。我が麗しの故郷、姫路も断じて論外! 結局梅田で会うことにした。というのも、神戸だとあからさまだし、京都だとカップルじゃない? 気取らず軽くというデートコースを提案してくれた親友M君よ、恩に着る。

 スーツを着ている彼女しか見たことなかったので、私服とのギャップは悩殺レベル。彼女は僕の印象ではきっちりとしたお姉さんという感じだったのに、私服で会うと甘いんだな、これが。プリンみたいに、いや、プリンはカラメルが苦いでしょ、じゃあマンゴープリンみたいにって、マで始まってコの濁音で終わるんじゃだめね。チョコプリン!

 彼女とプリンは密接な関係にあって、というのもプリンは甘いし美味しいし、彼女も好きだったし、ぷるぷるはそのまま彼女の肉体のメタファーとして機能しうる。

 二回のデートの後、付き合うようになって、僕にも初めての恋人が出来たわけだ!ちなみにハーバーランドで告白。チープなロマンチックスポットの使用はPTOをわきまえるべきなのだ、TPO?就活の合間を縫って、僕らはデートを繰り返した。彼女は京都の繊維会社から内定をもらった。僕はというと、恋人にかまけて就活はおざなりになっていた、なおざり?

 夏の終わりに二人で鎌倉へ行き、そこで初めてセックスをした。私にとっては初めての快楽愉楽極楽悦楽。


 遅すぎた春

 水門に佇むまだ見ぬ君よ

 深淵なる肉の奈落で待ち受ける黄金の王宮

 侵略者たる我こそ、ディオニュソス

 陶酔と饗宴の演壇で滴を垂らす葡萄の恵み

 その汁が果てるまで私が飲んでやろう


 おお彼女よ、我が股間の炎よ。彼女の割れ目を這い進む我が宝刀よ。生ぬるいまとわりを与える舌よ。ちなみに僕は彼女にとって七人目の恋人で、性的に奔放で、淫蕩で、妖艶で、艶かしくて、ああ、これほどの技法を彼女が得るようになったすべての過程としての男どもを恨んだ憎んだ嫌悪した!

 それらは嫉妬とほぼ同意義語として理解してほしい。言葉の記号的側面、あるいは意味の不確定性故の代替可能性こそ、我が嫉妬を表すのにふさわしい。

 何度も何度も僕らは交わった。その権利しか与えられていないかのように。部屋で、ホテルで、車の中で、夜の公衆トイレで、神社の森の中で!

 性交にかまけて、俺は就活なんてほっぽりだした。クソ野郎ども!へつらいへつらうことしか求めぬクソのような社畜ども!泥の経済め!私は私はなんと甘い快楽快楽に溺れているのか。盲目。盲目に次ぐ盲目。目玉などハナからないような盲目。僕にとっての光は決して物理現象やエーテルなどの賜物ではなく、ましてや創造主の創り給いしものなどでもなく、彼女だった。彼女は太陽で、私だけが持つことを許された黄金で、私にだけ開かれた密壺であった。隠喩。下卑た隠喩。

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