第13話 入団テストの説明会はこちらかな?
ギルドとは所謂何でも屋である。
各地から依頼を集めてギルド員に選ばせ、派遣する。
ギルドは各国に存在しており、王国では
ギルドで名を上げた者は騎士として王家に招き入れられたり、名のある貴族に仕えることもできる。
ドラゴンを倒し莫大な富を得ることもできる。
民衆からしたら夢のある仕事だろう。
しかし、現実は厳しく最近では身の丈に合わない依頼を受けて死亡する例が続出している。
「そういうわけで、近年階級制度が設けられたわけだが、高階級、特にベヒモス級より上はいつも人手不足だ。よって月に一回、入団テストを行うことによって階級を飛ばして入団できる制度が追加された」
王国の二大ギルド、
「入団テストのルールは簡単だ。ギルドが出す依頼を
話が終わるとラムアは部屋を出ていき、他のギルド員達が入団テストを受ける者達に依頼を配っている。
出ていく寸前、ジェームズを見て睨むのに対してジェームズは笑顔で応える。
「狼の討伐ですね。魔物ではないけど油断できない敵です。依頼開始は明後日の昼。王都から出て近くのプルミエ平原での戦闘になるみたいです。狼の群衆はこの時期になるとプルミエ平原に集まり近隣の村を襲って食料を得るそうですから、依頼失敗は許されません」
パルテアが依頼書を読みながら気合いを入れている。依頼を失敗しても熟練のギルド員がいるため許されるのだが、騎士を目指していた彼にとっては到底許されるものではないのだろう。
「依頼開始は明後日、開始まで時間が設けられているのは狼達がまだプルミエ平原に到達していないからだけではありません。その依頼に向けての準備時間でもあるんです。どのような装備で向かわなければならないのか、時間をかけて話し合いましょう」
「お、おう」
パルテアの熱量に若干引き気味のジークとジェームズは依頼書片手に部屋を出る。
入団テストの説明はギルドの中の一室で行われていた。会議室として使われている部屋から出ると大きな酒場に出る。酒場では入ってきた時と同様に仕事終わりのギルド員、ハンター達が酒瓶片手にバカ笑いしながら談笑している。
「狼についての情報、特徴、あと罠だったり、飛び道具も必要です、それから…」
「わかった!わかったから、順番に見ていこう!な?」
熱くなっているパルテアを引き連れながらジークとジェームズがギルドを出ていこうとすると、何処からか殺気を感じる。気づいたのはジェームズだけだ。
「すまない、お呼ばれを受けてしまった。先に準備を済ませておいてくれ」
「お呼ばれ?よくわかんねぇけど夕食までには戻って来いよ?シア姉に殺されるからなー」
最近アレクシアは近くの教会に通いマリエと共に孤児達へ配る料理を作りに行っている。雀の涙ほどだが給金もくれるらしい。
ルミエは何故か教会には行きたがらず、『シュヴァル ドール』でバイトをしている。まだ見習いらしく表には立たせてもらえてないらしいが努力しているようだ。
リエルは相変わらず宿屋で他の子供達と寝ている。
本人は「働いたら、負け」と言っていたが、本当はまだ精神が回復仕切っていない子供達の面倒をみている。
「さて、何用かな?ラムア君」
殺気を送った人物に近づくと、その男は心底嫌そうな顔をジェームズに向ける。
「チッ、見下したような笑顔しやがって」
「そんな顔をしているつもりはなかったのだがね」
「まぁいい、テメェは別枠だ。来な」
ラムアはジェームズを連れて酒場の奥へと進み階段を降りる。階段を降りた先は大人数十人が暴れ回れるほど広いスペースが用意されている。
「ここは普段ハンター達が自主練習に励む場所だ。王都内で派手に暴れられる場所は少ないからな。で、本題だ。テメェ、このギルドに何をしに来やがった」
「何、とは?」
「しらばっくれんじゃねぇよ。臭うんだよ。血の臭いが、テメェからな。どうみたって堅気じゃねぇだろ」
「臭いって、犬かね?君」
「殺されてぇのか。テメェの持ってるそのステッキ、中に刀身が入ってるな?ハンターになりてぇ奴がそんなん持ち歩くかよ」
「ふむ、バレてしまうのか。まぁいい。確かに私はギルド員になるためだけに入団しようとしているわけじゃない。だが、安心したまえ。神に誓っても私はこのギルドに迷惑はかけないさ」
「少しは取り繕えよ。純度百パーセントで胡散臭い顔しやがって」
「いや、私初めからこの顔だから」
まぁ、私自身は迷惑かけないよ?他が迷惑かけるかもだけど…。
ジェームズは内心で屁理屈こねながら笑う。
「チッ、まぁいい。テメェの入団志願を認める」
「おや、いいのかい?」
「コッチは正直悪魔の手も借りたいくらい人手不足だ。近年魔物が大量発生してるみたいでな。各国のギルドとも連携してるが追いついていないのが現状だ。このままじゃ国をも揺るがす危険になるからって王国が動き出してるみたいだが、どうなる事やら」
「なるほど、それほど切迫している状況であるならば、私のような小動物の力も借りたいと、そういう事だね?」
「自分で小動物って言ってて恥ずかしくねぇのか?」
「ふはははは!断じて無い!!」
「あぁそうかよ。死んじまえ」
ラムアは面倒くさい顔で腰に差した刀の鞘に手をかける。
「まぁそれも全ては入団テストを終えてからの話だ。言っただろ、テメェは別枠だってよ」
「ふむ、つまり君が私と戦って実力を測る、と?」
「まぁ、そういう事だ」
「ふむ、なるほど、全力かね?」
「当たり前だろ」
「なるほど、ならば━━━━━━━」
ジェームズは左手にステッキを持ち、腰の金具からマスケット銃を外して持つ。
「━━━━殺しても良いのだろう?」
ジェームズから殺気が放たれる。
深く、暗く、冷たい濃密な殺気。
ラムアはそれを受けてニヤリと笑う。
鞘を握る手が震える。
『感情抑圧』
殺気や怒気、目に見えぬはずなのに何故か感じ取ってしまうものがある。『感情抑圧』とはそれを相手にぶつけて相手の行動を恐怖によって縛る技だ。
ジェームズがいた世界では、この技を使えて初めて強者と名乗れる。
ジェームズが数十人もいる暗殺者を一人で殺し尽くす事ができたのも、この技があったからだ。
だが、ラムアを見るに『感情抑圧』の効果が上がっているように見える。
「おもしれぇじゃねぇか」
『感情抑圧』は同じ強者であれば完全に打ち消されてしまうもの。
ラムアは手の震えを止めて、もう一度しっかりと鞘を握る。構えは抜刀。
ジェームズは首筋に冷気を浴びる。
「どちらかが仕掛けてからが開始だ。いいよな?」
「もちろんだ」
二人は静かに構えをとる。
静寂の中、ラムアの姿が消え、刀の
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