第2話 取り戻す使命

「君は…一体何者だい?」

誰かが僕に話しかける。

「・・・・・・・」

沈黙。

僕は、黙りこんだ。

何者と聞かれれば普通は名乗るだろう。

けれど、今は出来ない。

この姿じゃ…

「では、質問を変えよう君はどこでその力を?」

と誰かは僕に問う。

僕は振り返りながら答える

「たった今、ここで…」

そこには男がいた。

「ふーん。そう、なるほどねぇ。」

「君には、悪魔殺しエクソシストの才能がある。いや、それになる為の力を持っている。」

悪魔殺し…?

確か、一年前に現れた謎の集団…

「言ってる意味がわかりません…」

「うーん?そのままだよ。君は、悪魔の力を持っている。それが、悪魔殺しになる為の条件だ。」

悪魔の力を持っているのが条件…?

まさか、悪魔殺しは皆…?

「悪魔殺しは皆、悪魔の力を持ってるんですか…?」

「あぁ、そうだとも。まぁ、詳しい話は後でだ。とりあえず着いてきてくれないかい?」

「構いませんが、一つだけ聞いてもいいですか?」

着いていくのは構わない。けれど、一つだけ疑問がある。

「なんで、ここにいるんですか?」

男は腕を組みながら言う。

「波長…って言うのかな?俺に似た何かを感じたんだ。だからソレ確かめに来たんだ。」

言ってる意味がわからない。

波長?

この男と僕に共通点でもあるのだろうか…?

「・・・わかりました。着いていきましょう。」

どうせ、帰る家も無いんですから…

僕はそう呟いた。


シェルターから出ると知らない人達が一気にシェルターの中へと入っていった。

死体の処理でもするのだろうか?

「さ、乗って。えぇーと…」

「一です。」

「うん、一君。ささ、乗ってごらん?」

外には、真っ黒な車。かなりデカイ。

この車は多分…ハイエースだろうか?

かなり人が乗れそうだ。

僕は、車に乗った。

車内には男の人が一人。

ティーカップを右手に持ちながら優雅にティータイムをしている。

「おや?」

男の人はカップを置いた。

「君が、悪魔殺しの適正者だね。うん…実に悲しそうlamentandoだ・・・」

「はい?」

この人は何を言ってるんだ?

ラメンタンド?

意味がわからない。

なんで音楽の記号を?

「もぉー!駄目じゃないの!初対面の子には、普通に話なさい!と言ってるでしょ!!」

運転席の方から声がする。

座席と座席の間を覗こうとしていると、ドッ!と運転席にいた人が身を乗り出してきた。

「あらぁ!可愛い子ねぇ。。。食べちゃいたいぐらいだわぁ♡」

・・・・・これは、予想外だ。

ガタイの良い男は、口紅や付けまつげ等化粧をしている。

そして、口調からも察するに、オカマ…と言うものだろう・・・・

「宜しくね!私は、ドータよ。そして、そこの色男が不知火クンよ♡」

寒気がした。

悪い人では、無いのだろう。

けれど、ある意味危険な人だ。

「ところで、速くmosso戻らなくて良いのですか?ドータ。」

「もぉ!初めての子の前では普通に話なさいと言ってるでしょぉ。」

・・・まるで漫才を見てる気分だ。

僕は、ただポカーンとそのやり取りを見ていた。

「ドータ。そろそろ出してくれ。」

「はぁい♡リーダー。じゃあ乗ったらシートベルト着けなさいよ?新入りクン♡」

先程の男だ。どうやら悪魔殺しのリーダーらしい。

とりあえず、僕は不知火の横に座った。

ドアが閉まった。

僕はシートベルトを着けた。

「あれぇ?かおりちゃんいたの?」

「失礼です。先程からいたです。とりあえず、さっさと後ろに乗りやがれです。」

「う~ん辛辣だなぁ。」

何やら嫌な予感がする。

ドアが開いた。

「隣座るね?一君。」

「ええ…どうぞ。」

この後の僕は質問攻めされた。

そして、質問をした。

右隣の色男、不知火と悪魔殺しのリーダーである天真てんまにだ。


わかった事は幾つかある。

まず、悪魔殺しは、全員悪魔と契約していること。

そして、その内の数人が誰かの眷属としての契約であること。

悪魔と契約した者は、何かしらの能力を手に入れること。

悪魔と契約した者は、悪魔が近くにいるとそれを察知できること。

基本的には、悪魔殺しが悪魔と契約している事は、他言無用であること。

悪魔殺し同士のケンカは、してはならないこと。

その他幾つかの事も聞いた。

この後は僕の歓迎パーティーがある事も聞いた。

急に開くことになったから出るのは飲み物ぐらいらしいが…ハッキリ言ってそんな気分では無い。

友人も家族も死んだのに。

そんな呑気な事をしてたまるか。

そんな事を思っていると、助手席から視線を感じた。

ふと見ると、少女がこちらを見ていた。


中学生ぐらいだろうか?

座高からして、背もそこそこ低そうだ。

まさか、悪魔殺しはあんな中学生までも戦いに巻き込むのか?

僕は、天真を見た。

ただ黙々と。

「うん?どうしたんだい?あんな小さな子ですら戦いに巻き込む組織なのか…?みたいな顔をして。」

「・・・・別に。」

「あぁ、そうだね。彼女の説明をしてなかったっけ?彼女は、薫ちゃん。あんなに小さいけど年齢は君と同じくらいさ。あれでも高校生だとも。」

「はい?」

・・・失礼ではあるが、そうは見えない。

どう頑張っても中学生2年生ぐらいだ。

「冗談ですよね?」

「いや、ほんとだよ?ねぇ、薫ちゃん!」

彼女は、席の間からひょっこりと顔を出した。

「さっきから五月蝿いです。貴方達は、夏の蠅なのですか?」

急な毒舌に僕は戸惑った。

「酷いなぁ薫ちゃん。僕はともかく一君にそれは酷いと思うよ?」

「こら!薫ちゃん。ちゃんと座ってなさい!」

ドータさんが運転しながら彼女を叱った。

「すいませんなのです…。てか!これは、リーダーのせいなのです!私は悪くないのです!」

「えぇー。酷いなー薫ちゃん。まさか、一君と話すの恥ずかしいのー?」

「そんな事ないです!貴方は黙ってるです!」

まるで意地悪な兄とその妹の喧嘩のようだ。

度々ドータが彼女達を叱っている。

ハッキリ言って低レベルな喧嘩だ。

それを止める親のような立ち位置のドータ。

彼女?は信頼されているのだろう。

それにしても…他の皆はどんな悪魔と契約しているのだろうか?

そんな疑問を持ったまま僕は、とあるビルに到着した。


「はい!ここが悪魔殺しの基地だ!」

リーダーである天真は大声で言った。

「こんな目立つビルで大丈夫なんですか?」

ふと思った事を彼に聞いた。

正確にはビルの地下にあるのさ!と大声で言ったからか、ドータに怒られていた。


「ここが君の部屋だよ」

天真に連れられて地下にある空き部屋僕の部屋へ案内された。

室内には、ベッドにテーブルとイス、テレビ、壁にある受話器、タンス、小型冷蔵庫があった。

生活に最低限必要な物は揃っている。

僕が部屋をまじまじと見ていると、後ろで#リーダーは、ニヤけている。

「あぁ、トイレは、そこの廊下をずっと行ったところにあるよ。それと浴場は…まぁ、時間になったら迎えに来るよ。」

今からは、自由時間だからゆっくりしていてくれ、と言い残して天真は去っていった。

・・・ところで、この受話器は、どこに繋がっているのだろうか?

・・・・まぁ、いい。僕は椅子に腰掛けてテレビを付けた。


【緊急速報です。各地にて悪魔が大量発生しました。全員速やかに地下に潜り、静かにしていて下さい。】

悪魔の大量発生…多分、これに父さん達や僕らが巻き込まれたのだろう。

僕は、拳を握り締めた。

必ず奴等を殺し尽くすと誓いながら・・・・


気が付いたら僕は寝ていた。

どうやら疲れていたのだろう。

・・・それにしても、なんの面白味もない部屋だ。ゲームも無ければ本も無い。

テレビを付けても、どこの放送局からも受信されない。

全員避難している証拠だろう。

それにしても…奴等は、何匹いるのだろうか?

百匹?千匹?五千匹?

全員殺せるのか…?

いや、多分無理だろう。

全員が雑魚ってわけでもないだろうし、仮に全て殺したとしても時間がかかりすぎる。

さらに、奴等が活動するのは、夜だけで、正確には、21時~夜明けまでだ。

・・・奴等のでもあればいいのだけれど……

『お困りか?契約者。』

「誰だ…?」

僕は辺りを見渡す。

けれど、どこにも何もいない。

『おいおい、もう忘れたのか?』

「・・・・サタン…なのか?」

『あぁ、その通りだ。貴様が困っているらしいからな。声だけだかちょいと助言をしようと思ったんだ。』

「助言…?」

僕は、恐る恐る聞いてみた。

『あぁ。助言だ。貴様が今使える能力と、どうすれば悪魔俺たちを消せるかを教えてやる。』

「怪しいな。」

『怪しいとも。俺は、悪魔だ。時に、人を助けるし、時に人を騙す。そんな生物だ。』

さぁ、どうする?

と、悪魔サタンは問う。

僕は、考えた結果、サタンの助言を聞くことにした。


『まず、お前が使える能力は、だ。』

炎を生み出し、それを操る能力 イフリータ炎の支配者、鎖を生み出し、それを使って相手を縛り動きを封じる能力 堕天の鎖チェイン・フォールン

今使えるのは、この二つだそうだ。

炎の支配者に関しては、爆散させたり、纏ったりも可能で、応用が利くそうだ。

堕天の鎖もかなりの力が無いと破るのは不可能に近いらしい。

少なくとも無名の悪魔には、不可能だそうだ。

『そして、肝心の悪魔俺たちを消す方法は…現在の地獄の王、ベリアルを殺すことだ。』

「現在の地獄の王…?」

その言葉に僕は疑問を持った。

現在…と言うことは、過去に他の王がいたのではないのだろうか?と。

『あぁ、ベリアルの前はこの俺が王だった。地獄の支配者にして、悪魔の王…だが、奴にその座を奪われた。今の俺は、かつて王であった悪魔。それだけの存在だ。だから、奴を殺す。』

「意味がわからない。王の座を取り戻す、じゃ駄目なのか?」

『駄目だ。一度王では無くなった者は再び王になる事は出来ない。俺が王では無い地獄なんて存在する価値は無い。悪魔も不必要だ。』

・・・変わった奴だと僕は思った。

そして、目標は決まった。

ベリアルを殺して、この世から悪魔を消すことだ。

その為には、地獄の行く方法を探す・・・

まずは、そこから始まる。

不意に、コンコン。とノックをする音が聞こえた。

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