第一話 第七章「ソラと父の背中と」

自称「後輩こうはい」の恋縫こいぬちゃんは結局、放課後にも顔をみせなかった。


……と思ったら「あ、センパイ!」と自宅近くに現れた。

一礼して、てってっと寄って来る。本当に仔犬のよう。可愛いなぁ。

「今日はすみませんでした。用事でそっちに顔だせませんで」

「いいよ、明日でも明後日あさってでも。新入生も忙しそうだし」


「……こんな恋縫でも、未来はありますかね」

とつぜん妙な言い回し……未来?量産型が輝きたい……てあれなのかな。

「ん。んん、あたぼうよ!模型は愛を形作るもんさね、未来はキミのもんさぁ!」

「わうわう!わはー、有難うです。ではまた!」

にこりと一礼。尻尾をふりふりって仔犬娘は帰宅していった。


何だか不思議な子だ。いや、プラモ趣味のあたしが言うなって話だけど。

「……すぐにでも模型部紹介しなきゃなぁ。未来は有望だ」





「おう、蒼穹ソラか。お帰り」

「ただいまって……おとぅ、何で外に?……仕事は一段落?」

家に戻れば白い巨人は去って……るハズもなく、

何故か門扉もんぴの前で父が休憩していた。二階の大穴もそのままなのだろう。


父は……我が何故か家の上方を見上げてた。思わず目線がゆく。

「なんかお前……奇妙な事になってんな」

「え!?おとぅ見えるの」少し期待。


「デカいの空いてんのな」「え?」、とゼスチャーする父。

「あー。あ……そーだね、家古いし……壊れたのかな」

見えたのは破損した屋根か。相談相手出来たと思ったのに……。


「俺の親父の代の家だしな。修理の手配を考えなくちゃなぁ」

「ははー頼むね……穴以外に……何かみえない?」

ちょっと期待。何となく聴いてみた。

「白い……」

「し、白いなに!?」

「干してある

「ぬっころす!」

「はっはっ何が見えてると期待したいんだ?野生のタヌキでも隠し飼いか、あー?」

このノリだ。学生ですかアンタは。

「いや……もーいいっす。穴だけ見えてればいいんよ」

そっか、と苦笑すると、ぽわんとわたしの頭を撫でてくれる。


「まぁ、新しい出来事コトには覚悟が必要だ。学校も友人も、トンデモな事も。

 俺もすんげぇ目にあって、すんげぇ対処で青春した」

「話が見えないんだけど……」

「お前はマイペースで行けな、って事だ。俺もそうした、そゆことだ」

「んん?」よく分からない説法教え。それ以上は言葉もない

ぽわぽわ、ぐりぐり。流石おとぅの撫で方が一番うまい(気持ちいい)

んん~っと肩を回しながら、夕飯にすっか!と我が父。


ズボラで面倒くさがりで、思春期の少年ガキんちょがそのまま歳くっただけの父。

高校生の時、何だかしてこの街の有名人になったらしい。

ぶっきらぼうで言葉がちと足りない。あたしの母の事も聞かせてくれない。


でも友達の様な父親像……その背中はいつも大空をみている様だった。


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