第一話 第二章「ソラと我が家と見えない空と」
《はるる野市》は東京でも片田舎な方で、
我が一軒家はさらに街外れで、小高い丘みたいなトコにある。
裏の
だからこそ、
『ロボットの顔がのぞき込んでいる』がどうなっているのか。
顔がある、という事は胴体があり、
手足もあのサイズで存在しているハズだろうって事で。
あたしの中で最悪の想像が展開していた。
「ほわぁぁああああああ」
階段を駆け下り玄関から外観を……全貌を目視して目が覚めた!
「うっわ……リアルガチだ……コレ」
寝ていた。
想像は的中した。大正解だった。
巨大なロボット(らしき)物体が雑木林をクッションに寝そべり
顔だけが私の部屋に突っ込み、ゴキゲンヨウしていたのだった。
「……白い……ロボット……?」
そのロボットは全体的には《
何というか、予想以上にボロボロ。
もう……プラモで言えばポリキャップとか外装パーツが焼け落ちていて、
西洋の彫像と洋物の
焼け跡やら溶解やらで、台無しになっていた。
ほぼ武器や外装部品無しの、人型だけが寝そべっている感じなのだ。
「ありえない……ありえないって……どんなドッキリよ」
これは……ヤバい。
一か月はマスコミを騒がすネタが文字通り寝転がっているんだ。
取材が来る。近所にも裏の
大いに祭り上げるに違いない。
「やだ……あたしの《日常》が……破壊されちゃうよ……」
誰が、どんな理由で作ったロボットのオブジェなんだろう。
それをわざわざ我が家へぶっ倒すとか、どんなの嫌がらせだ。
もしくは自分からやってきた、なんて冗談みたいな妄想もしてしまう。
もう頭ん中、ぐるぐるで。アレを警察が回収しに来るにしたって
大騒ぎ確定じゃないか。
「そうだみんな、ウチのおとぅ……それに結菜さん家の人達は……?」
ここで解説。
隣りの一軒家は
ウチの父親と、隣家の
ばたばたと駆け戻り、ウチの居間へゆくと、
結菜さんとその息子の
従兄妹のお隣さんが『あたしの家で』普通に朝食をしてるっていう。
何だソレって感じだけれども。
「おばさん、朋輝、平気?…あの、その、ロボが……添い寝で……おとぅは?」
「ソラちゃん、おはよう。今日もママの天使ね、はい、朋輝にもおかず」
「おはよ、お隣さんでママじゃないけど。いつも朝食アリガト…じゃ、なくて」
兄妹なのにイカついウチの父と違い、柔和で可愛い系という、
十七歳でーす、と言いかねない容姿で近所で有名だ(あたしが姉妹に間違われる)
我が父はシングルファーザーで特殊な自宅仕事をしてるので、
家事全般はほぼ隣りの超美人な妹、結菜さんにおんぶにだっこだ。
旦那さんは海外赴任で永く不在しているので結菜さんも暇してるせいでもあり……。
「いい、今から信じられない
「まずはお前落ち着けよソラ姉。紅ジャケはもう焼けてる」
「わーお、紅ジャケ美味そ……じゃ、なくて!」
結菜さんの一人息子、
結菜さんも朋輝も自分の家があるってのに朝食だけは必ずウチ。
『食事は皆でするのが楽しいもの♪』という理由で
(強引に押し切って)いつもこんな朝の
「は、はは……落ち着いてられんのも今のうちだ……あたしはもうビビってる!」
「ソラ姉が落ち着きないのは知ってる」
この従姉弟、この春で高一なせいか分かり易く《反抗期》に入りました。
昔はあたしにべったりだったんですよ。容姿が結菜さん似で美形なのは嬉しいけど。
「――で?何が見られるって?」
言いつつも黙々と紅ジャケを頬張る従姉弟。小食だけど綺麗に食す。
「あぁ……待って。いきなし見たら心臓がズバっと惨状するからガチで。
カーテンゆっくり開けて、ゆっくり惨状して、ね?」
「結局、惨状するのか……」
すっかり身長を抜いてしまった従姉弟は、やれやれと起立して
あたしの指さす方向通り、カーテンを開けて覗きこんでくれた。
「何処?」「ほいほい――あたしのね、あの天井らへんに……」
窓際から二階のあたしの私室を見上げ、のぞき込む。
「――――どう?とんでもないもの、部屋にダイブしてるっしょ?」
「………………」
「……あ…………あれ?――”ちょま、ちょ待てよ”とか
しかし、朋輝は無言でテーブルに戻り、そそくさと朝食を再開させた。
「……言葉がない程のショック、わかるよ!」
しかし斜め上の返答が返る。
「ソラ姉……屋根の修理代、高くつくぞアレ」「……はえ?」
「ソラちゃん……ママ、素直に『屋根壊してごめんなさい』した方がいいと思うの」
「何で!?」エプロン姿が可愛い結菜さんは朋輝と同じ素だった。
「な、なんで?そこ、あそこにでっかいのどーんて寝てるっしょ?二人には見え…」
「あそこに……何が見えているのソラちゃん……」
「…………はい!?」
(あれ?あれ…………はええ?)あたしは息をのむ。
確かに、鼻血が出る衝撃が何かあったんだろう(謎の出血もあったらしいし)
だからってあんなはっきり見えてるものを幻覚に見てしまうなんてない。
あんなバカでかいのが、顔だけ我が部屋に突っ込んでるのですよ?
マスコミだって猫型ロボットだって黙ってない……ハズなのに……。
「……ソラちゃんには何かが見えるのね」「…………えっと」
「うん、結菜は信じたわ。根拠もなくソラちゃんを肯定します!」
ぱん。結菜さんは手を叩くと『ささ!朝食にしましょ』と
――――それっきり。
あたしのこの一か月の
《日常》が普通に戻っていった。
(私にだけに見える……ロボット……なの?)
腹がぐぅ、と鳴る。
その音だけが現実で、朋輝に鼻で
あたしにしか――――見えない……?
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