第15話 いざ、無人島へ


 「海!」

 「海だな」

 「太陽!」

 「憎らしい程の存在感だ」

 「憎らしい存在はあなたの方でしょ? まぁ今はそうでもないけど」


 城から歩くこと三十分。

 歩くのに疲れたリナリアが、「歩くの疲れたから転移魔法使ってよ」なんて言うもんだから、途中から転移魔法を使い一瞬で目的地に到着。

 お弁当は暑さで痛まないように、次元魔法によって別の場所に置いてある。

 ちなみにこれはクロヴァンスの魔法で、本気を出せばこの世界の一部を別の次元と繋ぎ合わせる事も可能である。

 繋ぎ合わせるのがめんどくさいのと、後で色々大変だから本気は出さない。


 「人が大勢いるな」

 「みんな涼しさを求めて来るんでしょ。こういう季節だから仕方ないわよ」

 「涼しさが欲しいなら次元魔法で雪国とここを繋げてやろうか? 涼しくなるぞ?」

 「やったらぶっ飛ばすわよ? それに雪国なんかと繋げたら涼しい通り越して極寒よ」

 「人間はひ弱だな」

 「そうよ。人間は弱い生き物なの。私だって弱いし、あんたと違って寿命は短いし・・・・・・」


 若干、空気が重くなる。

 しかし、その空気を変えたのはクロヴァンスの一言。


 「なら守ってやる。何があっても俺が全てから守ってやる」

 「じゃあ守ってもらおうかな。私だってできるだけ一緒にいたいし」

 「任せておけ。俺にとってもお前は特別な存在だからな」

 「ふぅーん。嬉しい事言ってくれるのね。昔とは大違い。変わったわね」

 「そうか? 自分では分からないが、お前がそういうならそうなのだろうな」

 「そうよ。まぁ今の方が良いけどね。誰も傷つかないし、平和だし」


 リナリアの能力が二人の存在を隠し、今ではこの世界では互いが名前を口にしない限り二人はずっと隠れたままで結果、争いはなくなり、平和が続いている。


 「立ち話はここまでにして遊ぶわよ!」

 「そうだな。そうだ、魔法を使うか? 波を自在に操ることも出来るぞ」

 「面白そうね、それ。なら人目の無い場所に行きましょ。他にも人がいるからあまり派手になったら目立つし」

 「なら、あの島に行くか? 多分無人島だろう」


 そう言って指差した島。

 

 「どの島よ? 見えないんだけど?」

 

 「人間には見えないが、水平線の先にあるぞ?」


 「あんたそんなの見えるの? おかしいんじゃない?」


 「そうか? まぁいい。 転移魔法を使うから手を握れ」


 差し出された手を握るリナリア。


 「やっぱり見えないわよ。ホントにあるのかしら?」


 目を凝らして水平線を見るが、見えるのは海だけで島なんか見えもしない。

 クロヴァンスには見えている水平線の先にある無人島に向かうことにしたのだった。

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