第14話 海とお弁当


 海の日、当日。

 リナリアは朝早く、それも太陽が昇らない、まだ暗い時間帯にクロヴァンスの城を訪れていた。

 お弁当を作るためだ。


 「よしっ! じゃあ作りますか! ねぇ、クロは好きな食べ物ってある?」

 「んん~・・・・・・眠い」


 場所はクロヴァンスの寝室。

 

 「ちょっと聞いてる?」

 「・・・・・・ん? 何か言ったか?」


 寝ぼけているのか、反応は鈍い。


 「好きな食べ物を聞いてんのよ! 海に行くって昨日言ったじゃない。で、お弁当作ってるから好きな食べ物は何かって聞いてるの!」

 「今何時だ?」

 「夜中の3時くらい?」

 「早くないか? 勘弁してくれ」

 「しょうがないじゃない! 楽しみでよく眠れなかったんだから!」

 「子供か」

 「うるさい! それよりも起きたんなら手伝ってよ。そうすれば早く終わるし。"働かざるもの食うべからず"、よ」

 「自慢ではないが、料理はしたことがない。包丁なんか握ったこともないし、厨房には入った事もない」

 「自慢にはならないわね。しょうがないから私が作ってあげるから食材、勝手に使うから」

 「あぁ構わない。出来たら起こしてくれ」

 

 再び眠りにつくクロヴァンスを尻目に、お弁当を作り始めるリナリア。


 その後、朝日が昇る頃にお弁当は出来上がり、寝ているクロヴァンスを起こし、二人は海へと出発。


 夏の海が二人を待っている。

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