第3話 早く脱げ


 「まずは、色々見て回りたいわね。

街にはおしゃれなカフェもあるから途中で寄ってそれから――」


 部屋の外で待つ私は今日のデートプランを確認中。

 この日の為に新しい服も買った。

 デートプランを練るために下調べもちゃんとした。

 

 「・・・・・・よし! 完璧!」


 デートプランをまとめた紙を見ながら、小さくガッツポーズをする。


 ギィー。部屋の扉が開く。


 「待たせたな、勇者よ」


 支度を済ませた魔王が部屋から出てきた。まったく遅いのよ。女の子待たせるとかありえないってーの。

 

 「時間かけたんだから、おしゃれな服装・・・・・・なん・・・・・・じゃそりゃー!?」


 魔王の服装を見て愕然とした。

 黒の鎧に黒のマント、黒のブーツに黒のガントレット。トドメに魔剣を装備。完全武装。全身真っ黒、黒一色だ。


 パタッ。

 手からプランを書いた紙が落ちた。


 「・・・・・・」


 言葉が出てこない。と、同時に怒りが込み上げてきた。

 落とした紙を拾い私は魔王へと歩みよる。


 「アホーーー!」


 パコーンと筒上に丸めた紙で、魔王の頭を叩く。


 「勇者よ? なぜ叩く?」


 叩かれた所を擦りながら、そう聞いてくる。


 「アホ魔王! なんで完全武装なのよ!? あんたどこに行くつもりなの!?」


 「街に行くのだろう? なら当然人間の兵士がいる。戦闘になるかもしれん。安心しろ、負ける事はない」

 

 腕組みをし、真顔で話す魔王。

 そりゃあただの人間には負けないよ?

 だけど今日だけは戦う事を忘れて欲しかった。


 「戦闘になんかならない!っていうか私がそんなことさせないんだからっ!」


 せっかくのデートを台無しになんかできない!

 ならば、私ができる事はたったひとつしかない。


 「魔王今すぐ鎧を脱ぎなさい。あと魔剣は置いていく事」


 「なぜだ? それでは丸腰――」


 「はーやーくぅぅぅ・・・・・・、脱げぇぇぇ!」

 

 「は、はい・・・・・・」


 私にできる事。それは鎧を脱がせ、武装解除させる事だ。

 とはいえ怒りに任せて、はしたなく大声をあげてしまったけど、そんな私の迫力に圧され、魔王は鎧を脱ぎ始める。

 やがて鎧を脱いだ魔王は黒のインナーに黒のズボンというさっきと変わらず真っ黒だけど、全然おしゃれじゃないけど、武装していないだけまだいい。

 ようやく出掛ける準備ができ、私は釈然としない表情の魔王の手を取り、「早く行こっ! 魔王」と笑顔を交えながら言うと、魔王は少しだけ頬を赤くしたのだった。

  

 


 


 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る