第15話 仲間が増えた

「はぁ…………ひどい目にあった」


 チャートさん来てくれなかったら、やばかったわ。あのダリア―――本人にそう呼んでと言われた――――の目はやばかった。あんな目初めて見たわっ。


 私は今城を出て、雪原にいる。いろいろな薬を試すためだ。因みに、ダリアに薬剤師ギルドについて聞いてみたところ、わかりませんが、ユナ様のために全力で探します!とか言っていた。顔も近かったし、鼻息が荒かった。


「えーと………ムロウリの葉と後は………火草と導火液か………」


 …………雪降り積もってる中に火草とかある? ないね。ムロウリの葉は既に結構な数取ってあるので大丈夫。その数63枚。


 導火液は火石と白透液を使って作る。私が作ろうとしてるのは、爆発ポーション。MP切れとかそういった非常事態の時に使えるから、持っておいて損はなしっ。白透液はスライムが落とすドロップ品。だからスラ君を探してるんだけど……………


「いないなぁ…………一匹もいない」


 なんで? いつもならめっちゃいるのに。わらわらいるのに。


「スラ君避けでも設置された…………?」


 キョロキョロ。スラジェットなし。ありえへん…………


「うーん……………【地図マップ】」


 とりあえず、今日は火のあるところに行こう。それがいい。えーと、この森を抜けたところにボルケエノ火山あるやん。ちょっと遠いけど………まぁ、魔法でどうにかなるっしょ。


「よし……………『浮遊』からの………『加速』!!」


 障害物関係なく一直線。これならすぐ着く。いええええぇぇぇい!!


 フライ・イン・ザ・スカイ! さいこー!


「――――――ん?」


 火山通り過ぎた。やべっ。止まらん。加速しすぎた。引き返さないと。ぐぐぐっと急旋回。


「あれ────?」


 ぐるぐる、ぐるぐる…………うむむ? ずっと同じとこ旋回しとるやん。方向わかんなくなった。やばい…………!!


「ぐえ!?」


 なんか当たった! でもおかげで止まれたよ。なんだかわかんないけど、助かったわー。


「──────およ?」


 上を見上げる。でかくね? ポヨンポヨン。モフモフ。いい触り心地。


「おわっ!?」


 下から鋭い蹴りが飛んできたので、急いで後退。やばくない? 後退したことで距離が空き、相手の全貌が明らかに。



「ウ、ウサギぃ!?」



 空中で止まってるウサギって何。こんなのGLOにはいなかったよ? しかもでかいわ。 攻撃パターンがわからん。どうしよう、やばい。



「キュッ!」



 ウサギが迫ってくる。鑑定スキルないの不便。だから素材集めも一苦労────じゃなくて、とりあえず何とかしないとっ。



「『防護磁場』!!」


 障壁よりも強固な防御魔法。前方に展開して、ウサギとの衝突を防ぐ。


「キュキュッ!」


 ウサギ、難なく避けて背後に。てか、空中なのに動き早いウサギって何? チーター軽く越えてる。


「魔法もまどろこっしいな……………よし、これでいこう」


 アイテムストレージから魔剣『ヒューリ』を取り出す。行くぜ、相棒よぅ。



「やぁ!!」


 

 『魔刃』を飛ばす。見えない斬撃。ウサギはステップで回避。『魔刃』、回避、『魔刃』、回避、『魔刃』──────かかった!



「キュッ!?」


 ウサギがジャンプして回避した瞬間──────背中に爆発魔法が直撃した。実は、『魔刃』を飛ばしながら、ウサギの近くで魔法を練っていたのだ。『魔刃』はいわば囮。こんな単純な作戦が通用するかな───―─なんて思ったけど、杞憂だったね。


 ウサギは爆撃を受け、へなへなと地上に落ちていく。ウサギが大きすぎて、周りの木々をへし折っていた。



「…………とと、とりあえず下に降りるか」



 魔力も大分消費したから、節約しなきゃ。無駄遣いはよくない、よくない。これぞ、日本人根性ってやつ?


 ウサギ、どうなってるかな?




◇◆◇◆◇



「うーん…………これは?」



 下に降りてみると、なんか、首輪らしき残骸があった。原型をとどめてない。粉々だった。



「鑑定したいっ…………! だが、断られた………」


 持ってねえ。まあ、なんでもいいか。



「キュッ…………?」



 おっと、ウサギが目を覚ましちゃった。とどめ差すの忘れてたわ。臨戦態勢に入る。また襲われたら、返り討ちにするまで。魔力にもまだちょっと余裕あるし、いけるっしょ。



「キュッ─────!!」



 頬擦りされた。モフモフ……………じゃなくて、意味わからん。敵意なし………? …………敵意ないなら、とどめはいっか。モフモフ…………たまらんっ!!



「キュキュッ!!」



 仲間になりたそうにこちらを見ている……………ような気がした。


「…………ついてきたいの?」


「キュキュッ!!」


「そっか…………でも、この身体の大きさじゃなぁ…………」


 街に入れないんだよなぁ……………。 っていうか、私の言葉、もしかして通じてたりする? 頷くタイミングとか、絶妙だし。


「キュッ!」


 私の言葉に呼応したかのように、ウサギが小さくなり、私の肩に乗った。モフモフはええのう~…………。はぁ………癒される。


「と、そうだ」


 私はウサギに回復魔法をかけてやる。これで、さっき怪我したところは大丈夫なはずだ。ウサギがお礼とばかりに私の頬をチロッと舐めた。くすぐったい。


「とりあえず、ボルケエノ火山に向かうぞ―――――――!」



「キュッ──────!!」



 よくわからないけど、ウサギが仲間になりました。

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幼女さんは今日も『調合』を駆使して異世界を楽しみます! Mei @reifolen

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