第14話 可愛いもの好きのお嬢様

「この度は盗賊を討伐してくださり、ありがとうございました。じ………チャートも無事に戻ってこれてなによりでした。負傷者は出ましたが、幸いにも死者は出ず。これも、ユナ様のお蔭です。感謝いたします」


 後ろに控えているチャートさんもありがとうございました、と頭を下げた。


「いえいえ、そんな」


 間に合って良かったよね、ほんと。間一髪だったよ。


 私はお嬢様─────ダリア=マクファーレンと名乗った─────と自己紹介を終えて、机を挟んで対面でソファーに座った。目の前には、お菓子が置かれている。クッキーだ。あむあむ、クッキーおいしー!


「…………ふふっ」


 ダリアさんが笑った。どうしたんだろう? …………はっ、私の顔に何か付いてるとかっ?


「あ、あの、マクファーレン様。私の顔に何か付いてますでしょうかっ」


 貴族だし、一応敬語使っとかないと、断頭台行きになりかねん。前世のラノベとか漫画が大体そうだった(偏見)。


「…………いえ、何も付いておりませんよ」


 笑いを堪えたかのような表情。もしかして、からかって楽しんでる? そうなのか!?


「……………ユナ様。宜しければ、この後、私の部屋に来ませんか? そこで、きちんと報酬もお渡しいたしますので」


「…………へ?」


 ……………どういうこと? なんで?


「だめ、でしょうか…………?」


 ひ、瞳がうるうるしてる。ほんとにうるうるするんだねぇ…………。い、いや、っていうか、私が部屋に行っても大丈夫? 中身こう見えても大人だよ? 年頃の女の子の部屋………。で、でもっ…………


「…………っ、わかりました」




 うるうるには勝てなかった。なんやかんや、頼み事は断れない性格なのだ。し、下心なんて、微塵もないよ? まじで。


「やたっ」


 小さくガッツポーズしたお嬢様がいた気がしたけど、きっと疲れが取れなかったせいだ。



◇◆◇◆◇



「ユナ様ぁ、ユナ様ぁ…………!」


 頬すりすり。ベッドで抱きつかれてずっとユナ様、ユナ様言ってるお嬢様────ダリアの恍惚とした声が聞こえる。良い香りがする。…………どーしてこーなったぁぁぁぁ!!



◇◆◇◆◇



「こちらが今回の報酬です」


 最初から部屋で渡すつもりだったのか、テーブルに置いてあった袋を私にくれた。中には、ざっと大金貨300枚くらい…………多くね? 銭貨1枚=1リル、銅貨1枚=10リル、小銀貨1枚=100リル、大銀貨1枚=1000リル、小金貨1枚=1万リル、大金貨1枚=10万リル、魔法銀貨ミスリル1枚=100万リルみたいな感じだったはず。なんで小と大分けて中がないんだろ…………気になる………じゃなくて。これ、1リル=1円だから、単純計算で3000万だよ? 多すぎでしょっ。



「お気に召されませんでしたか…………?」


「いやいや…………これ、多くない?」


「多くない! 可愛い税だから!」


「はぁ……………?」


「うぅ…………やっぱり我慢できない!!」


「へっ!?」


 がばっと抱きつかれ、ベッドに押し倒される。


「はぁ………ユナ様…………!!」



◇◆◇◆◇


 こんな感じの経緯だった。私の下心云々関係なかったわ。そういえば、今気づいたけど、ぬいぐるみ多いな、この部屋。可愛いもの好きなのか、このお嬢様は。


「ユナ、様…………」


 目がとろんとしてる。アカン、貞操の危機や。


「生、人形………温かい………」


「ひゃわ―――――!?」


 生人形言ったぞこいつ!? やばいぃぃ――――――!


 冷静に考えてる余裕などなかった。その後、チャートさんが部屋のドアをノックするまで、額にキスされたりと、散々だった。貞操は死守した。

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