第12話 幼女参上!

「はぁ……………見つかるかなぁ?」


 素材表も、薬剤師ギルドも。何もないよぉ…………。あるのは少ない金とステータス。流浪の身である。………それはちょっと違くない? 


「よし、『探知』」


 杖がなくても、魔法は使えるのだよ。杖はもう、古代の遺物と化したんだよ、うん。


 なぜ『探知』か? 薬剤師ギルドないかなーって希望にすがっただけ。だいたい、知らん人ばっかの中から更に知らん人ピックアップするんだよ? 希望は紙ストロー。



「うん……………?」


 『探知』に引っ掛かったのは、ボロボロの兵士達と冒険者。そしてピンピンの盗賊達。兵士達の後ろには小綺麗な馬車。因みに、『探知』っていうのは、人の魔力を探知する。頭の中にどこぞのストリートビューみたいな映像が流れるわけよ。『探知』を発動。相手は死ぬ。いや、死なないけど。


「いやいや、早く助けに行かないと!」


 今日襲われる人多くない? 治安大丈夫? 異世界だから荒れ荒れでした。


 私は馬鹿なことを考えつつ、盗賊達に襲われている馬車の方へと走っていった…………雪、邪魔! なので、魔法で飛んでいくことにした。




◇◆◇◆◇



「お、お嬢様! お逃げ下され!! ここは、儂らが足止めします!」


「嫌よ! それじゃ、じいが!!」


「…………お嬢様、儂は領主様より、お嬢様を守るよう、仰せつかっております。ここでお嬢様を死なせるなど、末代までの恥になってしまいます」


「でもっっ!!」


「…………お嬢様、大丈夫です。あれぐらいの盗賊、何とかしてみせましょう。儂だって、由緒…………はないが、魔法使いの端くれ。簡単に負けはしませぬ」


 爺と呼ばれた人物が、お嬢様を宥める。お嬢様は、涙を強引に拭い、グスッグスッと泣きながらも問いかける。


「……………生きて帰って来るって約束して」


「ええ」


 爺はニッコリと笑う。お嬢様はそれを見て満足したのか、泣くのを止める。側近の兵士達に抱えられ、その場を去っていった。時折こっちを向き、心配そうな目をしていた。


 爺は、今まで展開していた障壁を解除する。


「ちっ………逃げられっちまったか…………まあいい。そこのくそジジイを倒して、後を追えばいいだけだ」


 盗賊の頭らしき男が、吐き捨てるように言った。口元がニヤリ…………と歪む。これだから、盗賊相手には不快感しか湧かない。もっと紳士な盗賊はいないものか………いや、いたらいたである意味不快だし、盗賊は盗賊だった。


「よお、爺さん。死ぬ覚悟はぁ………って、その前に寿命か。残念だったなぁ、寿命を全うできなくて」


 下品な笑いが場を支配する。


「んじゃ、死ね」


 盗賊達が一斉に襲いかかってくる。その数…………二十ちょい。多い。


「燃えよ、燃えよ、燃え盛れ、『火炎』!」


 爺の周囲の雪が炎によって溶ける。盗賊がびちゃびちゃになった地面でスッ転び、一斉に倒れる。


「ぐげぇ!?」


 下敷きになった盗賊の呻き声。醜いものだ。


「死ね、ジジイ!!」


 盗賊の頭らしき男が倒れた盗賊達を踏み台に爺へと襲いかかる。



「くっっ…………!?」


 詠唱が間に合わず、簡易的に障壁を展開。とりあえず凌いで─────


「よっと」


 盗賊が球形の物を爺へと投げ込む。それは─────障壁破りの魔道具、クラック。クラックにより、爺の障壁はあっけなく砕け散る。


「ぐっぬぅっっ……………!!」


 杖と短剣の拮抗。だが…………長くは持たない。





バキィ!!





「つ、杖がっ……………!?」


 杖が、折れたのだ。


「ヒャッハ─────!!」


 短剣が迫る。不可避。爺は目を瞑った。



 ……………申し訳ありません、お嬢様…………約束、果たせそうにありません。



 お嬢様の笑顔が思い浮かぶ。


「─────かひゅっ」


 


ドゴオオオオオオォォォォ──────!!




 爆音が響く。短剣は………刺さってない。恐る恐る目を開けると……………


「ふぅ…………間一髪だった」


 幼女と、岩にめり込んだ盗賊の姿が映った。


「…………………へ?」


 爺はポカンとした。

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