第11話 遠退く
「パーティーにですか?」
「ええ、私達のパーティーには回復役がいないの。防御役もいないけど」
「ええ………………?」
じゃあ、みんな攻撃型? アンバランス過ぎない? 冒険者ギルドもパーティー編成のアドバイスとかしないのかな? …………しなさそう。脳筋多発地帯だもんね、あそこ。
「それで、どうかな? ユナちゃんが入れば、うちのパーティーも安定すると思う」
セルルさんが必死に進めてくれるけど、私の心は決まってる。
「…………ごめんなさい。パーティーには入りません」
私は頭を下げる。申し訳ないけど、神出鬼没の薬剤師ギルドを探さなきゃだから。私も神出鬼没にならなきゃいけないの。…………あれ? 筋が曲がってる。………気にしないが吉だね、うん。
「そう…………」
セルルさん達も諦めてくれた。落ち込んでるけど、これは仕方ない。薬剤師ギルドを探すんだから!(二回目)。押しが強かったら思わず頷いてたよ、私。…………押しに強い幼女になりたい。
「それじゃ、私はこれで。いつまでも長居してたら、悪いですし」
私は立ち上がってテントを出た。セルルさん達も見送るために外に出てきた。
「じゃあ、また何か縁があれば」
「じゃあな」
セルルさん達の見送りに軽く会釈しつつ、雪の中に足をズボッと入れながら歩き出す。
「あ、そういえば、薬剤師ギルドってどこにあるか知ってます?」
「……………ごめんなさい、ちょっと知らないわ」
「そうですか」
……………薬剤師ギルドの情報、求む。
◇◆◇◆◇
「……………あの子、一人で行かせてよかったのか?」
「…………大丈夫でしょ。エイプ一撃で切り捨てちゃうくらいだし」
「むしろ、付いていった僕達が足でまといになるでしょ」
「…………そうだな」
フォウグが苦笑しつつ、そう呟いた。
◇◆◇◆◇
「そういえば………上着って作れるのかな?」
着る用じゃなくて売る用。コーネリアスさんのところに卸せばガッポガッポ稼げる…………。げへへ、金が私を待ってる。
「取り敢えず現状で作れるものの確認でもしようっと」
確か、【メニュー】から確認できたはず。ステータスを開いて、【メニュー】をタップ。予想通り【作成可能アイテム一覧】があった。
「どれどれ…………」
早速タップしてみると─────ありゃ?
「い、一個もない……………?」
空欄、ブランク、Not Found…………大体意味同じじゃボケ!! 一個も作成できるアイテムなどなかった。いや、一応薬品系のアイテムは表示されてるから、空欄とかじゃないけどっ。ということは、まさか…………違うよね? ないよね?
ピロン♪
軽快な音ともに【メール】の欄に未読マークがついた。私は、ひきつった笑みと共にそれを開く。
『すいません、言い忘れておりましたが──────』
「ふ、ふざけんなぁ───────!!」
【メール】の内容に思わず私は叫んだ。ポーションとか、そういった薬品系のものを作るのに、『素材表』は必要ない。私の職業、『調合師』は、薬品系作成に特化してるからだ。『素材表』とは、元は紙切れみたいなもので、集めれば一枚の紙になる。だけど、それとまったく別系統のものを作るとなれば、『素材表』が必要。ここまで言えば、お分かりいただけたことだろう。【メール】の内容が。
端的に言おう─────引き継げませんでした、だ。
「ストーブぅ………………」
ストーブが遠退いたことに、愕然と膝を着いて、雪で手や足が冷えるのすら忘れ、悲しみにくれた。
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