第9話 人助け

「ふぅ~…………食った、食った」 



 美味しかったなぁ。まさかこの世界にも焼き肉があったなんて。しかも、全部柔らかくて、ジュワッって溶けるように口の中に広がって…………それでいて甘い。



「残り9万5000リルかぁ」



 宿代が2000リル。焼き肉代が3000リル。実にリーズナブル…………って訳でもないけど、まだまだお金は残ってる。宿屋も良いところを取り、ベッドもふかふかになった。



「暫くここで過ごそっかなぁ…………」



 引きこもり癖が出てしまう私。本当にこのままここで暫く生活するのもありかもしれない。



「でも薬剤師ギルド、どうにかして見つけたい…………」



 薬剤師ギルド…………どこにあるんだろ? 薬剤師ギルドに入りたい。ギルドに入って、色んな事とかしてみたい。



「明日も、『状態異常緩和薬』を作りつつ、薬剤師ギルド探しってところかな」



 私はそんなことを考えながら、いつの間にか深い眠りに落ちていくのだった。




◇◆◇◆◇



 場所は昨日と同じ、大雪原が広がる場所。



「今日こそ薬剤師ギルドを見つけてやる」



 昨日はあんまり森の深くには入らなかったけど、今日は奥まで行こう。


 私はアイテムボックスの中身を見て、再度ふぅー…………と息をつく。今日、街を出る前に『回復薬(粗)』、『解毒薬(粗)』、『麻痺薬(粗)』など、色々な薬品を買っておいた。まあ、ないよりはましだろうというレベル。ぶっちゃけ酷いね。



 薬屋のお婆ちゃんから聞いたところによれば、魔法師や治癒師なんて職の方が、『調薬師』よりも遥かに重宝されてるらしい。だから、街には僅かな薬屋さんしかないのだとか。



「まずは街に薬屋さんでも建てたいな」



 そして、薬品の有用性その身でたっぷりと味わうがいい…………なんつって。



「そのためには、薬剤師ギルドの認可が必要なんだよねー…………」


 私は、はぁ…………と息を吐きながら、森の奥へと進む。息が白く見えるほど、ここら辺一帯は寒かった。



「それにしても、今日はスライムがいないな~…………」



 もしかして、どこかに棲み家を変えちゃったとか? でも、昨日の今日で? それはちょっと無理があるような…………?


 私がそんな疑問を感じつつ、森の奥を探索しつつ進んでいくと──────。



「がああぁぁぁ!!」



 悲鳴が聞こえた。それも、比較的近くからだ。



 私は、アイテムボックスからヒューリを取り出し、すぐさま救援へ向かう。放っておけないんだよね、こういうの。



 私が悲鳴の聞こえた場所に到着すると、そこには、血を流して倒れている青年と、青年をかばうように数人の男女が立ち塞がっていた。



「くそっ…………! なんたって、こんな時にこいつが………!!」



 男がくっ…………! と歯を食い縛って言う。



 あれは…………エイプ? 確か、グランディールレベリングオンラインでも初期の方に出てくる魔物で、そんなに強くもないはずだけど……………?



「グルオオオオォォォォ!!」



「ひいいぃぃぃ!?」



 エイプの振り下ろした腕が、男性の頭に直撃する───────。





ザンッ!!





 エイプの腕が切り落とされた。勿論、私の愛剣、ヒューリだ。



「とどめっ!」



 私は、横にヒューリを凪ぎ払った。エイプは、私の攻撃を防ぎきることが出来ずに、真っ二つになった。そして、そのままズウウゥゥン…………と音を立てて倒れた。



「大丈夫ですか?」

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