第5話 宿をとろう
「ありがとう! コーネリアスさん!」
私は商業ギルドのカードを受け取ってそう言った。
「ほっほっほ、礼には及ばんよ」
お爺ちゃんは、笑いながらそう言った。私は、そんなお爺ちゃんに対して思わず微笑む。最初に接した異世界人が優しい人で、本当に良かった。
それにしても、この異世界…………ゲームの中なのかな………?
気を失って、気づいたらここにいて。神様は、ゲームの時のアバターとステータスをそのままこっちに持ってきたって言ってただけだし。もしかしたら、似てるだけの別世界……?
「どうしたのじゃ、嬢ちゃんや。何か悩んどるようじゃが」
「…………いえ、大したことではないので、大丈夫です」
「そうかい」
まあ、そこら辺は後で考えればいいか。別に、あっちの世界に早急に戻りたい訳じゃないし。っていうか、戻れないと思うし。まあ、気長にいこう。
「じゃあ、私はこれで。改めて、ありがとうございました」
「律儀じゃのう。まだ小さいのに」
私はこう見えても30を越えてるからね? この見た目だから、そう言われても仕方ないけど。
「気を付けてのう」
お爺ちゃんに見送られ、私は商業ギルドを後にした。もう外は日が傾いていた。早急に宿を探さねば。凍え死ぬのは勘弁なので。
私は、自分の予算で泊まれる宿を探しに行くのだった。
◇◆◇◆◇
「うぅ…………寒い」
この宿、風通しがやけにいいよね。寒すぎるんですけど!
結果的に言えば、宿は見つかった。丁度先程『エスクィントラ』に来る前に討伐したホワイトウルフの毛皮も、あのお爺ちゃんにさばいてもらって換金してもらった。私の見た目のお陰かもしれないけど、少し多めにもらえた。お爺ちゃんに、『ホワイトウルフを倒せるんじゃったら、冒険ギルドにも登録できるじゃろう。明日辺りにでもしてくるといい』と言われたので、してこようと思う。
冒険ギルドがあって良かったよ。なかったらどうしようかと思った。なかったら稼げないからね。まあ、なくてもどうにかするけど。
私は苦笑しながら、そんなことを考えた。
そういえば、薬剤師ギルドってあるかな? あったらそっちも登録しに行こうっと。
「それにしても、ここ、本当寒い…………」
木造建築だからかもだけど、隙間風が入ってくるし。上着着てても寒い。ああ………暖房とか欲しいなぁ……。
「材料さえあればなぁ…………『調合』できるに」
アイテムボックスは空だし、お金はないし…………。素材がなくては『調合』できぬ、みたいな?
「まあいいや。今日はもう寝よう…………」
私はそんなことをぼやくと、今日はもう暗いので明日に備えて寝ることにした。
◇◆◇◆◇
翌日───────。
グゥ~~………………
「…………腹減った……」
私は空腹に襲われていた。昨日は、街に辿り着くことと宿を取ることに必死だったので、飯のことなんて考えてなかった。
「残りのお金は………200リルくらいか」
200リルもあれば何か食えるかな? 食えるといいなぁ…………。食えなかったら飢え死にそう…………。こんなに腹へったこと、今までなかったのに。育ち盛りの身体は違うね。
私はくだらないことを考えながら宿を出て、食べられる場所を探すのだった。
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