第4話 街にとーちゃーく!

「んっ……? あれは……?」


 私の視界には、人々が行列を作って並んでいる光景が映った。勿論、みんな暖かそうな上着を羽織って。寒いもんね、ここ。


「お……? あれは……門? 」


 人々が行列を作って並ぶ先には門があり、衛兵らしき装いをした男性が検問? を行っていた。ってことは……あの先は…………!


「エスクィントラ……!」


 やっと着いたよ……! 雪に足をとられて歩きづらかったし、もうヘトヘト…………。素材換金して、早く宿とって休みたい。


 私が行列に並ぶこと約数十分。ようやく私の番が来た。


「何か身分を証明出来るものを見せてくれ」


 あっ…………終わった。身分が証明出来るものがいるなんて聞いてないんですけど!? アイテムストレージも大慌てで一応確認してみたけど、それらしきものはありませんでした。ちょっと不親切過ぎない……!? 序盤でつまづいたんですけど!?


 私がどうしよう、と慌てていると。


「ちょっと、衛兵さんや。この少女は儂の知り合いでのう。通してやってくれんかの?」


 後ろに並んでいたーーー白髪に顎に長い髭を持ったお爺ちゃんが衛兵にゴールドのカードを見せながらそう言った。


「こ、これは…………!? 貴方様は、あ、あのアルファス商会の商会長、コーネリアス様ですか!?」


 衛兵の問いに、お爺ちゃんーーーコーネリアスは至って普通に答えた。


「いかにも。商会長と言っても、そんな大層なものでもないがの」


 ほっほっほ、と笑いながらコーネリアスは答えた。


「いえいえ、そんな滅相もない……! 貴方様の名は、エスクィントラを越えて各国にも広まっておりますよ!」


 ……そんなに凄い人だったんだね。このお爺ちゃん。


「ほっほっほ。そこまで評価してもらえるとは、嬉しい限りじゃ。所で、衛兵さんや。この少女も一緒に通って構わんかのう?」


 コーネリアスが衛兵にそう問うと。


「どうぞ、どうぞ。貴方様のお知り合いでしたら、悪い方では無いでしょうし」


 衛兵はそう言って、アッサリと門を通してくれた。助かった~……。


 私はお爺ちゃんと一緒に門を通り、暫く歩く。ある程度歩き、衛兵が見えなくなった所で私はお爺ちゃんの方へと向いた。


「えっと……さっきはありがとうございました」


「ほっほっほ。困ったときはお互い様じゃ」


 お爺ちゃんはそう言いながら、快活に笑った。このお爺ちゃん、悪い人じゃなさそう。


「それで、嬢ちゃんや。身分を証明出来るものを持っとらんじゃろう?」


 お爺ちゃんの問いに私は首を縦に振って答えた。


「だったら、儂について来なさい。商業ギルドに登録して、カードを発行してもらえば身分証の代わりにはなるじゃろう」



「ありがとうございます!」



 やった。身分証がもらえれば、街の出入りが自由に出来る。将来的に商業ギルドに何か売りに行くときに役に立つかもしれない。ありがたく受け取っておこう。



「うむ、じゃあ、儂についてきなさい。商会まで案内しよう」



 お爺ちゃんの後に続いて、私も商会へと向かった。


 



 

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