第15話調査結果

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 這々の体で五郎さんと共に病院へ行くと、医者からもう少し深かったら出血多量で危なかったと言われた。

 その後は手当や家族への連絡などでてんやわんやになり、気付けば北海道の実家へ戻ってきていた。

 今、僕は神社にいる。医者からは安静にしているようにと言われたが、何もせず療養しているのも暇なので、設楽さんに連絡を取って調査結果を報告することにしたのだ。そしたら、彼の方も調査をしていたらしく、ガラガラに憑いていた霊やサンタクロースの正体を突き止めていた。


「おそらくですが、おもちゃを買えなかった子供の思念が具現化したんだと思います。おもちゃ屋はたくさんの親子連れが訪れます。中には買ってもらえなくて駄々を捏ねた子もいるでしょう。そんな思いがおもちゃに乗り移った……そして、子供にもそれぞれ好みはありますからね。気に入った物に次々と乗り移っていたのでしょう」

「じゃあ、クマのぬいぐるみに取り憑いていたのは、単純に好きだったから、ということですか?」

「ええ、その認識で合っていると思います。それとサンタクロースなんですが、色々と雑な経営だったでしょうから、従業員の不満が集まった結果だと思います。倒産したのがちょうどクリスマスの時期だったから、サンタクロースの格好をしていたのでしょう。で、サンタクロースを従業員として考えると、物を持ち出す人は窃盗犯になります。物を持ち出すだけで襲うなんて過激ではありますが、人の理性が効かない存在です。殺されてもおかしくなかったでしょう」

「じゃあ、僕達が見た浮浪者の死体は……」

「持ち出しに失敗して殺されてしまった、と考えられます」

「そうですか……」

「気を落とさないでください。あなたのせいではありません。それに、この報告のおかげさまで例の廃墟に行く理由ができました。さっそく仲間に連絡します」

「おお、ついに」


 これでもう心配せずに済みそうだ。怪我を負ってしまったが、調査しに行ったかいがあった。


「それではわたしは準備がありますので」

「はい、頑張ってください」

「吉報を持って帰りますよ」


 神社を離れ、改めて安堵する。これでもう幽霊の心配はしなくて良い。

 これからは好美とお腹の中の赤ちゃんの心配だけになる。実は好美は入院している。僕が帰ってきてすぐ体調を崩してしまったのだ。医者の話によると、もうすぐ生まれるらしい。陣痛が来たら連絡してくれるので、そわそわしている毎日だ。

 ちなみに無事に生まれて、退院の許可を貰ったらマイホームに戻る予定だ。実家に置いてある妻の荷物はもう家の方にある。あとは僕の荷物だけなのでいつでも帰れる。

 気がかりなのは五郎さんだ。僕は手が動かせるから仕事に支障はなかったが、左足を負傷した五郎さんの復帰は難しいとのこと。日常生活は何とかなるらしいが、重い物を持ったり移動したりする仕事は無理だと五郎さんが言っていた。

 工場の仕事は思っているより重い物を持つ。毎年腰をやられる人が出るぐらいだ。五郎さんは「まあ、いい年だからちょうどいい。引退だ」と言っていたが、ちょっと寂しそうにしていた。でも、交流が途絶えたわけではないので、生活が落ち着いたら一緒に飲む予定だ。

 あの廃墟での出来事は夢みたいだ。人の記憶というのは不思議で、あんなことがあったというのに現実とは思えない。実際に怪我をしたし、怖い思いもしたが、それでも夢だったんじゃないかと思うのはなぜだろう。今度、同じ経験をした五郎さんにも聞いてみよう。


 ジメッとした空気の中、すべて終わって晴れ晴れとしている僕は、この時、まだ終わっていないと夢にも思わなかった。

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