01章-013:パーティを組もう

[13]


 おはようございます。宗太郎です。

 

 ちゅんちゅんと外で囀っているあれは、スズメでしょうか。別の何かでしょうか。

 気になりますが、うっかり闇を引き当てる可能性もあるので、気にしないでおきましょう。

 

 ひとまず私は何とか無事に仮想世界1日目を無事に生き残り、ただいま宿屋のベッドの上で目覚めたところです。


 あの後、町に帰還し、依頼主に報告したところギリギリ達成を認められ。

 めでたく頂いた報奨金で宿屋の残り物で用意されたご飯をかっ込んだのがまだ数時間前とは、中々濃密な生活を送っていますね私。

 その遅い晩ご飯を頂きながら、そういえばアイテムボックスの中にあるワイバーンを素材として売り払ったら普通にお金もらえたんじゃね? という悪魔のささやきも聞こえましたが、何とか心を折ることは回避できました。今日絶対換金しに行きます。

 

 そうすると、資金的なことはしばらく心配は必要なくなるでしょうか。いえいえ。それでは取らぬ狸の皮算用。そこは慎重に進めることにしましょう。

 まずは生きるための地盤を作る事です。

 生活基盤のないままというのは、この安定とは無縁の世界では自殺行為。地道に冒険者としての収集活動を続けることが、明日への生活に繋がることでしょう。

 昨日までは異世界初日ということで、多少不得手が勝り、らしくないミスも許されたかもしれませんが、今日からはそうも言っていられません。

 気を引き締めてまいりましょう。


 まずは、まだ起き上がりもしない私が横たわるベッドの前で、鍵をかけていたはずの部屋に侵入しニコニコと立っている女性への対処からですね。

 頑張りますよ。


 さあ。

 ――気を引き締めたらどうにかなるのでしょうかこれ。


==


「あんたがソータローであってる?」

 そして普通に声をかけてきました。怖いです。

 一度、うつらうつらとしながら目を開けた時に、このオレンジ髪の女性が目に入ったので、緊急回避として 即座に目を閉じ薄眼対応に移行したのですが、それは功を奏さず、ばっちり起きていることは気付かれている模様。

 諦めて薄眼をやめ、ぱっちりとお目目を開けて、改めて女性を観察します。

 やはり一番の印象はその明るいオレンジ色の髪でしょうか。割と長髪で腰まで伸ばしているようですが、特に整えている様子はなく、頭の後ろで一つ大きなリボンでくくって完了といった様子から見ると、あまり着飾ることは趣味ではないのかもしれません。

 服装もかなりラフで、薄手のタンクトップの上にパーカーらしきものを羽織っているだけ、という出で立ちです。その格好だと、少しボリューミーな胸元が強調されて、視線の低いこちらからは自然見上げる形になり、とても壮観です。

 今日はいい日になるかもしれません。

 あと、この方のジョブがうかがい知れるゴーグルを頭頂部にずらして装備しています。

 ゴーグル系の装着は、この世界では一般的に「シーフ系」でしょう。罠察知や暗視などで使われる、と昨日のアイリスさんの説明の中にありました。普通に考えて高性能が過ぎますよね。ファンタジー装備。

「ちょっとちょっと。返事をしないのは失礼じゃないか。目を開けて寝る習性があるなら別だけど」


 おっと。

 確かに余りジロジロ見るのも良くありません。そろそろ会話フェーズに移行しましょう。

 とはいえ。

「私の名前は…その通りですが…」

 そういってひとまず布団をあげ、ベッドの縁に足を投げ出し腰掛けるよう体を起こします。

 一応不審者ですから、冒険者相手に無駄とは思いますが、一応いつでも動ける姿勢は取っておくくらいはしておき、ひとまずこちらも気になっていることを確認することにします。

「あなたは、まずどうやってここに入ったのですか?」

 名前よりもひとまずそれが気になります。


 それは、当然想定していた質問だったのでしょう。彼女はサクッと答えてくれます。

「簡単さ。あたし、ここの宿屋の従業員のバイトしてるんだ」

 へぇ。

 …。

 そうなんですね。

 …。

 …。

「………説明終わりですか?」

「そうだけど?」


 嘘だろ。


 説明になってないでしょう。なってないはずだ。その説明で納得する人、この世界で生きていけないでしょう。

「…逆に聞きますが、あなたが宿の客で、私が宿の従業員だからと言って、寝ている部屋に侵入されて、変に思わないんですか?」

「そんなことしたら、良くて足と腕の骨を折るよ」


 良くて。


 まぁ…女性の警戒心としては別におかしくはないとは思います、けど。

「それなら、私の今の気持ちもわかってもらえるとありがたいですが………」

 やんわりとそう告げると、不思議そうに、エメラルドの瞳を見開き、首をかしげて考え始める。

 男子と女子とでは受ける衝撃の相違はあるでしょうが、相違あるだけで無いわけではないのですよ。

 それから、ひとまず言うべき言葉を見つけたのか、自信なさげにこちらに告げる。

「…悲鳴を上げたらその可愛い口をふさぐぞ、って言った方がいい?」

「誰の口が可愛いねん」

 思わず関西弁で突っ込んだところで、漫才パートは終わりです。ちゃんと会話しましょう。



「それで早速なんだけど、あんた最近、薄いブルーの髪した可愛い女の子助けなかった?」

 ひとまず着替えをしたかったので、一度部屋の外に出てもらい、合図をする前に入ってきそうだったので、簡易な部屋着に素早く着替えたらマジで無言で入ってきました。二分数えたからだそうです。そのルール知らない。

 そして、こちらの抗議を無視された挙句に、放たれたのが先ほどの台詞というわけですが。

「………。さぁ。おっしゃっている意味がよくわかりませんが」

 割と本当に意図がつかめないので、ここは奥義『そ知らぬ振り』です。

「ギルドの人に、うちのタニアを夜ギルドまで担ぎ込んで、薬草まで預けた人が休んでいる宿屋の部屋番号聞いたら、ここだったわけだけど」

 奥義失敗。

 ファンタジーの個人情報の扱い雑過ぎぃ。

 もう誰も信用できない。


 彼女は「デシレア」さんという冒険者ギルド所属の「トレジャーハンター」だと、改めて自己紹介を受けた私は、着替えの間に彼女が宿の女将さんから引き取った私の朝食をありがたく受け取り、部屋に備え付けらえているテーブルで早速頂くことにしました。

 昨日は何を食べたかわからないくらいに夢中で口に入れていましたけど、今回はきちんと味わって食べることにしましょう。

 とはいえ、そんなに目新しいメニューというものではありません。食パンに、ハムを一緒に焼いた目玉焼きと、オニオンスープという、ザ・洋食の朝食という献立。まぁ、おそらく現実でもこんなの海外だってホテルとかだけでしょうけど。


「もぐもぐ。もうちょっと聞いていいか?」

「聞いてもいいですが、何勝手に食べてるんですか?」

 マジ何してんの。それ目玉焼きじゃん。メインじゃん。

 あたしも朝一で来たから飯食ってないんだよ、とはテーブルの向かいにちゃっかり座っている彼女の弁ですが、マジ知らないっす。サニーサイドアップ返して。

「なんで、知らないふりしたんだ?」

 ひとまずハムひと切れが残っていたので、それを取り急ぎ口に確保しながら、面倒な質問が来たなと眉を顰める。

「なんでと言われても。あの状況で、素直に話さないのがそんなに変ですか?」

「メリット無くないか? そりゃあたしはどこの誰かもわからず怪しかったろうけど、女の子一人助けたことくらいばれたところで何もないんじゃない?」

 それはそうかもしれません。とはいえ、そんな計算をあの時、咄嗟に行えというのも酷な話な気はしますが。

 後、申し訳ないですが、今時点でもあなたはまだ怪しいままです。

「なんだよ。目玉焼き食ったのそんなに怒ってるのか?」

 むしろ人の朝食のメイン取っておいて、何普通に会話してんだって感じですが?

 まぁ、それはひとまず置いておきましょう。きっちりこの恨みは覚えておきますけど。

「もう、証人もいるみたいですし、今更隠しはしませんが、

 あの方、タニアさんでしたっけ? ギルドで行方不明だって少し騒ぎになっていたでしょう? それに関わって変な目立ち方はしたくなかっただけです」

 細々と堅実に生きて、生存率を上げたい私の思い。女神様に届いているだろうか。

 いや。女神様正気じゃないらしいので、郵送キャンセル。自分で頑張ります。

 とにかく下手なことを言うより正直に言ってしまうことにした私の言葉に、彼女は、フーンと普通に頷き、普通にオニオンスープをすすりました。

 マジお前いい加減にしろよ。

「いいの? うちのタニアめっちゃ可愛かったろ? お近づきのチャンスじゃん」

 こちらの苛立ちを察したのか、彼女は持参していた手提げ袋から水筒を取り出し、部屋に備えつけれてていたコップへ、黒い何かを注ぎ始めた。湯気が出ていることからすると――

「…コーヒー?」

「そ。いける口?」

「ブラックで」

「わかってるね」

 いえ。別にブラックを飲むことがコーヒーの正しい飲み方とは思っていませんけど。ひとまずブラックで飲まないと、色々入れた方がいい豆なのかわからないというだけです。

 ずずっ。

 ああ――酸味もそれ程きつくない。焙煎の苦みが程よいですし、これはこのままがいいですね。

「で?」

「はい?」

 ずずっ。と朝食をほぼ平らげられた腹いせとして、コーヒーでお腹を満たさんと意気込む私に、デシレアさんは、何やら答えを促してきます。

 タニアさんと好い仲になるチャンスだと。

 まぁ。

「それは…確かに可愛らしい方でしたので、考えないでもないですが、

 相手の方もそんな弱みに付け込まれては困るだけでしょう?」

「相手が困らないとしたら?」

 当たり障りない答えで、面倒な話を終わらせようとした私の言葉に、執拗と呼べるくらいに彼女は食いついてきた。


 何のつもりでしょうか・・・。

「あんまりそんな仮定――」

 意味ないと思いますけど。

 そう続けようとしましたが、思いのほか真剣な彼女の視線に少し言葉を止めます。

 とはいえ、正直彼女が何を知りたいのかわからない。というか、ナニコレ。なんで私知らない人に朝から詰め寄られてるの。おうち帰りたい。あっ(察し)。


 どうしたものかと考えていると、何やら部屋の外が騒がしくなっているのが聞こえてきました。

 ここは二階ですので、どうやら、階下で騒ぎが――いや、登ってきましたね。駆け足のようです。

 全く朝から騒がしいことこの上なし。

 目の前のこの人と言い、迷惑な人が多い宿ですね。もしかして知り合いなんじゃないです?

 はっはー。


 バンッ

「デシレアさんっ!!!」


 知り合いだったわ。

 

 唐突にドアを乱暴に開け放ち、勢い込んできたその人は、しかし、なにやら肩で息して、すでにクライマックス状態。

 かなりの距離を走ってきたのか、そのトレードマークの薄青色の髪を激しい呼吸と共に、顔を俯かせ上下させている少女。

 彼女は、私にも見覚えのある人物でした。

 というか、昨晩に別れたばかりですよ。

「………もう走れるようになって。

 元気になられたようで安心しました「タニア」さん」

 そんな、ひとまず当たり障りない言葉で、デシレアさんの様子だと割とこちらに負い目を感じているだろう相手に、なるべく刺激を与えない挨拶を試みます。気分はムツゴロウさん。


「ひゃうっ!? お、おにぃひゃん!?」

 失敗。最近人生がうまく行きません。


 それに何でしょうその新言語。どこまで萌えキャラを拡張するつもりですか貴女。

 いまだかつてない斬新な呼び名です。


 そんなこんなで、何故か突然真っ赤なトマトに変身したタニアさんに、最初は暖かい眼差しを向けていたデシレアさんでしたが、挙動不審なトマトダンスをやめない彼女に少し思うところがあったのか、半眼になって暖かい忠告を告げます。

「タニア。

 あたしがここに、ソータローに会いに来てると思って、急いで駆けつけたんだろうからさぁ。

 ――本人がいることは、流石に判っとけよ」

「呼び捨て!?」

「可愛い所に食いついてんじゃねぇよ」

 軽快なやり取りが続きます。

 なんとなく同年代の女子っぽい会話ですよね。平和な感じがとても尊いです。


 少し知り合いと会話して落ち着きを多少取り戻したのか、それでもまだ桃くらいには血色の良いタニアさんは、「は。しまりました。危うく我を忘れるところだったのです」と、若干怪しい言動ですが、改めてここに来た理由を思い出したようです。


「そもそも」びし「デシレアさんが巨悪の根源なのです!」

 そう、デシレアさんを指さすタニアさんは、「むふー」と可愛く鼻息を荒げながら、意気込みます。ここから反撃開始という様相でしょうか。


 それに対してのデシレアさんの対応は冷静の一言でした。


「お前、恋愛になると、そこまで前後不覚になるのな」

「わー! ぎゃー! な、な、な、な、な、なにですかデシレアさん!

 いや、そうじゃなくてデシレアさん!

 そうですよデシレアさん!

 何してるんですかデシレアさん!」


 落ち着きとは何だったのか。


 ぐるっと一周して元の半狂乱に戻ったタニアさんを、さすがに埒が明かないと思ったのか、デシレアさんは、どう猛な野生の馬を落ち着かせるように、「どうどう」と肩を軽くたたいて調きょ――宥めています。

「ハイハイ。悪かった悪かった。ここには、お前が世話になったから、パーティのリーダーとして礼を言いに来ただけだよ」

「………例えそうだったとしても、黙って行かないで欲しいです」

 苦笑して、片手刀で謝るデシレアさんに、ふくれっ面をして目をそらしながらではありますが、どうやらタニアさんお許しムードです。

 というか。

 お礼に来たというのは初耳です。

 全くそんな雰囲気を感じたことがなかったので、意外な気持ちを禁じえません。しかし、本人がそういうからには、実は端々にそういう意図が散りばめられていたのかもしれません。

 ここにきてから彼女がしたことを思い出してみましょう。

 1.不法侵入

 2.尋問

 3.食料強奪


 あ。これ居直り強盗だ。

 これがファンタジー式御礼回りと言うことなのでしょうか。控えめに言ってお引き取り頂きたい所ですが。

 そう益体もないこと――であると堅く信じたい――を考えていると、彼女たちの会話はいつの間にか一旦の終着をみたらしく、何故かデシレアさんが後ろからこちらに向かってタニアさんを押し出す光景に変わっていました。

「あーたしかになー、おれいというならほんにんがしてしかるべきかもなー」

「先程の結論ともう変わってるです!?

 『だったら一緒に』ってことで決着したはず…っ!

 あと、なんかすごい棒読みから読み取れるめんどくさい感やめてほしいです!」

 見てる間にまた再燃していますが、ひとまずここは静観でしょう。下手な介入は怪我の元と見ました。

 押し出すといっても、元々一人が寝起きするだけの狭い部屋の中の事です。一歩でも押し出されれば、もうそこはテーブルについている私の面前。

 押し出されている彼女はよっぽど嫌なのか、手で押さえられている箇所以外の可動域限界近くまで、上背を後ろに反らし、顔を相変わらず真っ赤にして私から目を逸らしています。

 それ割と傷つくので無理しないで頂きたい。


「………ご用件があるのであれば、どうぞ」

「は、はひっ」

 そう上ずった声を出した自分の声で、また感情が上滑りし始めていることに気付いたのか、「いけません。リラックスぅ…リラックスぅ…」と不思議な呪文を唱え始めました。

 すぅー

 はぁー

 すぅー

 はぁー

「よしっ!」

 何やら整った模様。

 そして、彼女の後ろで爆笑をかみ殺すという荒行に挑んでいるデシレアさんが、彼女の視界に入っていないのは、おそらく僥倖。

 気合満点の顔でも一々可愛いのはこの人の才能でしょう。彼女は最後に息を大きく吸い込み。

 吐き出す。


「一緒にパーティーを組みませんか!」

 お礼の話は如何した。


==


 つまるところ、『パーティー』を組むことがイコール私へのお礼だということのようで。

「ソータローは、聞いたところ、昨日冒険者成り立てなんだろ?

 だったら、収集系だろうが、あんまり最初はソロで始めない方がいいぜ?」

 其れについての理屈はこうだ。


「確かに、ソロであるほうが、動きやすい面もあるですし、経験値やアイテム、報酬の独占を考えれば、メリットは数知れないと思うです。

 ただし、ソロの最大のデメリットである死亡率の高さが、全てのメリットを塗り替えてしまいます」

 それはそうだ。死んでは元も子もない。この世界には蘇生魔法もあるにはあるが、死亡してから短時間での処置が必要となる。

 そもそも。

 当たり前の話、ソロであれば「蘇生魔法を唱えてくれる人はいない」のだ。


「加えて、「駆け出し」ってのはいろんな奴に狙われやすい。

 魔物は弱い奴を率先して狙う習性があるし、冒険者には駆け出し狩りを専門にやってる様なのもいる。ノウハウをしらないところを付け込んで言葉巧みに金をだまし取る詐欺集団が主に狙うのも駆け出しだ」

 なるほど。どこの世界でも似たようなものは似たようなことをする奴は要るものだ。

 元の世界でいえば高齢の方を相手にする詐欺や、大学の新入生を酔わせて前後不覚にさせる不届きな男たちや、親友が閉じ込められたといってデスゲームに放り込む某旭さんや。


「それに何より」

 何より。

「あたしたちのパーティは4人とも全員うら若き美少女だ! こんな役得はねぇぞぉ?」

 うら若き美少女、おっさん臭いっすね。

 こちらの急に冷えた目線を敏感に察したのか、気持ちよく話していたデシレアさんの瞼と声のトーンが落ちる。

「あ、何だ、疑ってんのか?

 すでにお前の目の前に二人美少女が実際にいるってのに失礼じゃねぇの?」

「いえ。美少女そこは別に」

 いいのですが、と。

 続けようとしたら、いきなり水月(お腹)に衝撃が『ドン』と来ました。

 テーブル備え付けの椅子に座っていた私は、その衝動にひっくり返り、その目の前には、腕をまっすぐこちらに伸ばし、あたかも掌底を叩き込んだ直後のようなポーズで、なにやらテレテレしている青髪娘がいた。

「そ、そんな美少女なんてっ! とんでもないです! 突然何言うんでしょう! 嫌ですねぇ!」

 てれってれで、にっこにこである。

「………」

「………」

 この人いつ落ち着いてくれるんでしょう。

 昨日の警戒心の強い彼女はもう戻らないのでしょうか。あと、美少女って言ったのこっちじゃなくない?

 そんな切ない心地でいると、デシレアさんがこちらにすたすたと歩み寄り、のされていた私を起き上げて――中腰まで体制を整えたあたりで耳元に、タニアさんに聞こえない音量で伝えて来ました。

「あと、お前をパーティに入れるのは、タニアのたっての願いでな。

 ――悪いけど、否でも入ってもらうぞ?」

 なんて、脅し文句のはずのその言葉を、えらい気持ちのいい笑顔で言ってくるのをみて。


 まぁ、それも悪くないのかな、と単純に思った私は、その勧誘を受けることにしました。

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