01章-010:依頼をこなしてみよう
[10]
先ほどまでいた王都は、この世界でいう大都会の扱いのようですが、そんなところでも街の外を出ればすぐそこに鬱蒼とした森が広がるのが見て取れる。
日が傾いて、そろそろ夕闇に入ろうかという時分、もちろん電灯などあるはずもないその森では、既に闇が支配し始めていた。
薄闇なんていうのは、光にあふれた現代社会でしか存在しない単語だと痛感する程の、濃厚な黒が、森の奥から覗いてるようにさえ感じる。
まだ、この世界では、自然と人間の生存圏の境目が曖昧なのだなと、感じ入る私はその森で雑草抜きをしていた。
とはいえ、別段今抜いているのは、依頼のあった薬草の類ではありません。
さすがに門から100mも離れていないところで、こんなに群生しているものを採取するのに、わざわざ冒険者ギルドへ依頼を出さないでしょう。
今は単に雑草を抜いた時に付着している土の質をみて、水源の場所の方角を何となく図っているだけです。
さて、なんでそんなことをしているかと言えば、まさにそれが依頼のあった薬草の場所を探す手がかりだからに他なりません。
今回捜している薬草は初級薬剤の材料となる「薬草Lv1」。
相変わらずこの世界の固有名詞はひどいですが、わかりやすくて助かります。そんな可哀想な名前の「薬草Lv1」は、依頼主である道具屋によると池や湖の傍に群生していることが多いとか。
ただ、同じような草が多く、その中には毒草も混じっているとのことで、一般の方が下手に採取することは禁じられています。
とはいえ、私なんか、この世界に来て一日も経過してないので、一般人以下でしょう。
さらに言うなら、冒険者であっても、収集専門の方はともかく、それ以外の方が全員見分けが付くのかと言えば、そう言う訳ではありません。
では、なぜ冒険者がこういった採取依頼を、収集専門関係なく私のような初心者でさえ請け負うことが出来るのか。
あっさり種明かしをすると、ギルドに集めた「薬草」と思わしきものを持ちこみ、専門の鑑定士に選定してもらうことを前提にしているためです。それを当てにして、冒険者は採取したものを持ち込んでいる、という仕組みのようでした。
「薬草Lv1」は、常に需要があるものらしく、取得数が多ければ多いほど、特別報酬として報酬金は高くなります。ただ、鑑定するのは有料ですので、はずれが多ければ、それだけ鑑定にかけるお金もかさみ、最悪赤字なんてことも。
さらにいえば、依頼として請け負っていますので、採取するべき最低限の数は決められています。それを同じく決められた期限までに確保しなければ、違約金まで払わされ、止めに冒険者としての信頼も失います。
そう考えると、随分リスキーな依頼ですが、私に荒事関係の依頼はそもそも物理的に難しいでしょう。
――いやいや、有馬ちゃん。君アイテムボックスなんてチートアイテム持ってるじゃないの? それさえあれば、どんな強力な魔物も吸い込んだらおわりじゃん? なんて声がどこからともなく聞こえてきそうです。――誰が有馬ちゃんですか。
それには私も真っ先に考えつきましたが、色々考慮し、それは悪手だと判断しました。
まず、あのアイテムボックスの機能はやはり一般的ではないようです。サクラさんに確認しましたが、普通のアイテムボックスはカバンの延長でしかなく、量が見た目よりも入るだけ。さらに言えば生き物を入れられないという制約は女神さまが施した絶対のものらしく、それを悉く突き破った機能を有したこのアイテムボックスは――かなり悪目立ちすることが予想されます。
あまり大手を振って利用しない方がいいでしょう。
なに? さっきの冒険者ギルドで使ったことですか? ――ちょっと何言ってるかわかりませんね。
後は純粋に、攻撃手段があったところで、身のこなしが達者でない人間が、人を襲う魔物を相手にしていれば、遅かれ早かれ命を失うでしょう。
私はまだ死にたくはないのです。
そんな経緯もあり、収集専用冒険者を志す私ですが、正直言えば、ギルドの方にも、依頼者の方にも今から森に入ることには否定的な様子でした。まぁ、それは若干柔らかい表現でして、実際のところはおそらく正気を疑われたと思います。そんな顔をしていました。
先ほどもお伝えした通り、陽は既に傾き始め、もうすぐ夜に差し掛かります。
そうすれば、森の中などほぼ闇同然。
一応カンテラを持参はしてきていますが、森の中に慣れてない人間が、こんな光一つで進めるほど易しくはないのだと思います。逆に、光を放つことで、危険を呼び込む可能性が高いでしょう。
では、なぜ、そんな危険を冒してまで、しかも繰り返し命大事にのコマンドを連呼していた私がそんな行動をとっているか?
答え:お金がないのです。
ひとまず宿泊については、数日分ほどオレイルさんのカンパで何とかしのぎましたが、それで路銀がつきました。
軽く「冒険者になるのだから報酬はすぐ手に入るさ」と、そこだけなぜかゲーム感覚でいたのがいけません。
はっきり言いましょう。
お腹が空いています。
大体の体内時計を信じるなら、この世界に来て約8時間ほどが経過している感覚です。
だとすると、今夕方に差し掛かっているということは、この世界にはまぁまぁ早朝に現れたという計算です。
早朝から今まで飲まず食わず。サクラさんと町に入ってからも、全然飲食的な店に案内してくれないものだから、催促をしようとしたら、変態が現れますし、その後もサクラさんから早急に離脱するために、何はともあれと宿泊地を確保し、お金を払った後に、色々気付いてしまいました。
――あ、食費のお金も残らず全部使ったぞ、と。
本当にこの世界のリアル感は素晴らしい限りです。この飢餓感の表現は筆舌に尽くし難い。端的に言えばこのシステムの担当者殴りたい。
おそらくアイリスさんに言えばカンパしてくれたでしょうが、あの人に借りを作るのは絶対アウトです。
できれば最初は好きな子がいいです。
まぁ、それは半分冗談として、本題に戻りますが、何とかあと三時間ほど迄は本日の依頼の完了報告を受け付けてもらう手はずになっています。
そのために今日中に終わらせることができる可能性が、まだわずかにでも残っているこの依頼に、私は賭けることにしました。
というか、言っている間に森の闇が目に見える速度で濃くなっていきます。そろそろカンテラに火をつけた方がいいですね。
冒険者ギルドで、依頼と同時に必要経費としてカンテラと合わせて借り受けていた赤い石を懐から取り出します。
火打石と思っていましたが、さにあらず。このあたりがファンタジーの本骨頂でしょうか。こちらは火の魔法要素(魔素)が込められた石らしく、RPG的にわかりやすく言えば「魔石」もしくは「マテリア」でしょうか。
これをカンテラにセットするだけで、その魔石に込められた魔力が続く限り、光が灯り続けるそうです。
こういうの、わくわくしますね。
明らかに中世レベルの文化しか発達してないように見えて、現代と遜色ない便利アイテムが魔法で実現されているのです。魔法的ワクワクもありますし、現実的な話をすれば「助かった」という気持ちもあります。
あまりリアル中世を追及されると、ハッキリ言って現代っ子たる私には荷が重すぎます。
糞尿を道路に垂れ流しとかちょっと体的にも心的にも来るものがある光景でしょう。
まぁ、そこはもともとエンターテインメントを提供するゲームの舞台だったわけで。その辺は考慮されているのは当然といえば当然ですが。
言われた通りの手順でカンテラに火を灯す私ですが、そういえば、ここで告白することがあります。
――実は、何を隠そうカンテラも魔石も、先ほどから背負っているバックパックに入れて持ってきていました。
はい。アイテムボックス使っていません。
いや。
待ってください。言い訳というか、単に愚痴を言わせて下さい。
――ステータス異常を格納する。
――本来格納できない生き物を格納し、尚且つ瞬殺する。
こんなやばい入れ物に、大事なものを入れたいと思うでしょうか? 思いませんよね?
考えすぎとは思いますが、このギリギリの状況で、「多分大丈夫」レベルの信頼を受け入れる度量の大きさは私にはありません。
と、いうわけで、アイテムボックスってなんだっけ、とぼやきながら、今のところ普通にバックパックで荷物運搬です。
勿論今夜取得予定の薬草もその予定。
==
さて、水辺近辺ということで、湖や大きな川なら、王都に来るまでの道すがら見かけていたので、バッチリシステム画面上のマップにも記録されています。ますが、どうもそういう大きすぎる水源は薬草のお好みとは外れるらしく、適度に湿る程度が条件、なのだそうな。
薬草超わがままですね。
しかし先ほどの土を見る限り、ここ近辺にはそのような水源はなさそうです。
できれば、手がかりくらいはつかみたいところだったんですが、ここから闇雲だと今夜中の発見は厳しいでしょうか。
時間があれば、収集専門の冒険者の先達に穴場を教え乞うところですが、向こうも商売の種です。そう簡単に教えはしないでしょうし、そもそも伝手がありません。
さて、どうしたものか。
【システムメッセージ:アイテムボックスの格納範囲制限1km以内であれば、格納対象を捜査し、格納前にキャンセルすることで、検索のみのオペレーションが可能です】
突然ですね。システムメッセージさん。
というかまじですか。
それが本当なら、薬草の一つや二つあっという間に見つかりそうです。
まじで、そんなことを――
――そんなことを知りながら、今ままであーでもないこーでもないしてた私を嘲笑っていたんですね。
【システムメッセージ:誠に遺憾ながら】
否定せいや。
なんだこのシステムメッセージ、というか、アイテムボックスの機能でしたっけ…
【システムメッセージ:加えて補足させて頂けるのであれば】
え? あ、はい。
【システムメッセージ:先ほどご主人様の意向として、アイテムボックスの多用は避けるとのお話しだったので、提案を差し控えさせて頂きました】
ああ、なるほど。
それはとても納得のいく説明ですね。確かに、悪目立ちはしたくないので、積極的に人目が付くような使い方はNGです。
とはいえ、こっそり使う分には構いません。バレなければどうということはないのです。
【システムメッセージ:理解しました。臨機応変とは便利な言葉ですね】
喧嘩売ってるよね?
しかし、このアイテムボックスさんは、いちいちこちらの想像を超えてきます。
その、ほぼサーチスキルを保持しているに等しい機能も驚きですが、単なるヘルプメッセージだと思っていたのが、意思を持ってアドバイス――どころか所有者を小馬鹿にする機能まで。
どうしよう、後半のことを考えると捨てたい。
【システムメッセージ:それを捨てるなんてとんでもない】
うるさいわ。
なんかこの会話のノリ、誰かを彷彿とさせますが、ひとまず『色々』優秀なことは間違いないようです。
では、まぁ、誠に遺憾ながら、その機能頼らせていただきます。
――アイテムボックスOPEN
【格納対象:1km圏内の『薬草』という単語が前方一致する植物、またはそれに派生所属するもの】
――かなり開発エンジニアチックな指定ですけど、いけるか?
【捜査結果:500件以上のHit。条件が曖昧すぎます。さらに絞り込みを行ってください】
――めちゃくちゃシステマチックに返された。
もしかして群生地を見つけた、のかな?
ひとまずそのあたりまで移動しましょう。
【捜査中断:検索がヒットした場所をマップ上に表示】
【システムメッセージ:お待ちください。あと数秒で出ます。緑の点滅箇所がそれに当たります】
心根(?)はともかく本当に優秀ですね。
――いちアイテムの立場から、ゲームシステムのコアに近いマップシステムに関与できるなんて。
本来であれば、このままアイテムボックスで薬草を片っ端から格納してしまえば済む話かもしれませんが、当初予定通りバックパックでの格納方針としましょう。
マップで示された場所はーー若干、持ってきた魔物生息域マップで表示される、Lv5近辺の魔物の生息区域内に引っかかりますね…
言わずもがな、Lvがまだ1の私で向かうのは危険ですが…
致し方ありません。ご飯のためです。死中に活を見出すことにしましょう。
いざとなれば、伝家の宝刀アイテムボックスさんが火を噴くことでしょう。
え? さっきは遅かれ早かれ死ぬ行為だって? ――ちょっと何言ってるのかわからないです。
==
これはまた、壮観ですね。
マップが示す、薬草の群生地らしきポイントに着くころには、森の中はすっかりカンテラなしでは一寸先も見通せないほど日は落ちていました。けれど、運がよかったのか、群生地自体は森が少し開けたところに存在し、そこには月明かりが照らす幻想的な光が射し込んでおり、視界はある程度確保できたのは不幸中の幸い。
そこで目にしたのは、
3mは優に超える巨大な「葉っぱ」。
…表現が稚拙になってしまいますが、それ以上に例えようがないくらい「葉っぱ」らしい「葉っぱ」が、地面から直接生えています。
それが群生している有様は圧巻で、いっそ恐怖を感じる光景でした。風でそれらが一斉に揺れれば、受ける印象はもはや「緑色の洪水」です。
多分…これが「薬草何某」ですよね。
いや、デカすぎでしょ…これバックパックに入らないんですけど…
他の冒険者の方々ってどうされてるんですかね?
これを持ち帰るとなったら、複数人がかりで1枚可能かどうかです。
てっきり数を多く持ち帰って本物かどうかはギルドの鑑定士任せだと思いましたが…やっぱり現場で見極めることが、依頼達成には必須だったり? うーん。それにはやっぱり違和感がありますが…
一応、本物を見極めるためのコツのようなものは依頼主の道具屋さんには聞いていましたが、にわかの自分が判断できるものではないだろうと話半分に聞いていたのは失敗だったか…
確か…薬草にも実際は毒があり、薬草はその毒を葉の葉肉部分に集めることで、葉の幹や葉脈(葉の血管に当たる筋)の毒が浄化されるので、他の毒草の葉の幹と比べ色が若干薄い、らしい。
ひとまず試しにと一番手前の葉と、その隣の葉を見比べる。
見比べますが。
――そもそも正解が分からん。
両方薬草かもしれませんし、両方毒草かもしれません。
今の私にはその見極めは不可能でしょう。せめて正解の薬草を借りてくるべきでした。
こうやって途方に暮れている間も、月明かりで確保されていた視界もどんどん遮られていく。空を見上げれば大きな雲に月が隠れようとしています。これは雲から再度月が顔を出すまで何時間かかるか…
どうも、迷っている場合ではないようです。
懐から唐草模様の巾着――アイテムボックスを取り出し、薬草に掲げる。
全く取れないよりは、駄目元でもアイテムボックスで大量ゲットの上数打ちゃ当たる作戦――!
【システムメッセージ:念のため通知致します。当方に捜査を依頼頂ければ、薬草を選り分けられます】
そうですよね! そもそも薬草探し当てたのあなたですものね!
でも、主人を弄ばずに、もうちょっと早く言ってね!
【システムメッセージ:念のため善処します】
未来がない表現だね!
――アイテムボックスOPEN
【格納対象:薬草Lvが高いものから50個】
--どうせなら高く買い取ってもらえる上級の薬草に絞りましょう。後、もう面倒なので、アイテムボックスに直接格納してしまうことにします。臨機応変。臨機応変。
【システムメッセージ:実行?】
――お願いします。
【システムメッセージ:エラー】
――え?
【システムメッセージ:アイテムボックスには、後三個までしか格納できません。数を絞ってください】
なんですと。
めっちゃ少なくないっ!?
今格納しているのは、「ワイバーン」に「異常ステータス:ノックバック」の2つですよね。
五個!? 五個しか格納できないんですか!?
普通こういう時のアイテムボックスって、通常より格納出来たりするのが通例なんじゃないんでしょうか…
――まあ…通例を考えれば、すでに壊れ仕様でしたね、このアイテムボックス。
それにしても、確か普通のアイテムボックスの最低格納数でも30個あるというのに、5個はあまりにも少なすぎ――
――というか、5個?
それって、確か…ストックの初期の格納数と同じじゃないです?
もしかして、もしかするとですが。
…格納したアイテムって、スキル扱いになってる?
【システムメッセージ:ご主人様の御高察通り。このアイテムボックスの格納数はストックと直結しております】
やっぱりぃ?
と言う事はアイテムが格納されているとスキルは覚えられないってことですね…
つ、使いにくい…
これってわかりやすく言えば、魔法スキル一つ獲得するのも、石ころ一つ格納するのも、同じ扱いってことになります。まぁ、こんな貴重な枠に石ころで埋めることはないでしょうけど。
でも、困りました。
さすがにこの葉っぱを一つでもバックパックに入れることはできませんし、アイテムボックスに入れる他ないですが、MAX3つです。
依頼では十個なのですが、ってよく考えるとこれ十個持って帰るって重労働が過ぎません? 依頼を聞いたときは、こんな大きさとは思ってなかったですよ。
…。
システムメッセージさん。何とかなりませんかね?
【システムメッセージ:何をご所望でしょうか?】
もう普通にシステムメッセージと会話していることは、気にしないでおきます。立ってはいませんが、使えるものは親でも使います。
何をと言われれば、この依頼の達成手段です。
いくらなんでも初心者向けの依頼にしては、難易度が高すぎて違和感があります。
きっと何かからくりがあると思うんです。例えばーー
この葉っぱを丸ごと持ち帰らなくとも済む方法がある、とか。
【システムメッセージ:そこまでご推察頂いているのであれば、こちらから提言させて頂くことはないと思われます】
いや、あるんだろうなとは思うんですが、手がかりが少なすぎるんですよ。
多分これ、駆け出しの収集専門の冒険者に出すチュートリアルみたいな依頼なのでしょう。
本来は、このまま手ぶらで帰り、ギルドや依頼主に情報を聞き出し、収集で必要なことを理解して、依頼を達成していく、みたいなことじゃないでしょうか。
【システムメッセージ:拍手でもしましょうか?】
感じ悪ぅ。
なぜ不機嫌に…こんな理不尽を受ける謂れが理解できません。
まぁ、とはいえ私には時間もないので、早いところ正解を頂きたいのですが。
【システムメッセージ:…】
…今度は何でしょう。
【システムメッセージ:いえ。別に。ご主人様の言う通り、今回の依頼は収集専門の冒険者を志すことを宣言した方に、最初に提示する通過儀礼のようなものに該当します】
良かった。そうでなければ、困ります。
本当にただの大変な依頼である可能性もありましたし、それであれば本日中の達成は不可能だったでしょうから。
それで、どんなからくりなんです?
なんとなく、毒を浄化された葉の茎あたりを切り取るとかだとおもーー
【システムメッセージ:…】
なんだろう! 全然思いつかないなぁ! システムメッセージさんなしじゃ、解ける気がしませんよ!
【システムメッセージ:見え透いたおべっかは不要です】
めんどくさいなぁ!
とと。…本当にお願いします。もうお腹が減って死にそうですので…
【システムメッセージ:畏まりました。その葉の根のように地面に埋まる手前のところが、コブになっているのが確認できるでしょうか】
葉っぱの根っこですか。ああ、確かに地面に茎が埋まっていますけど、土に埋まる直前の茎の部分が、異常に丸く膨らんでいます。
【システムメッセージ:そのコブが薬草の源となっており、コブに横回転を加えることで、簡単に取り外しができます】
ほうほう。なるほど?がっしとコブを両手に持って、くるくるっとな。
ほんとだ取れーーって「うわぁっ!?」支えがなくなった葉っぱがこっちに倒れてきたぁっ! あぶねぇ!
【システムメッセージ:言い忘れていました】
葉が倒れてくることをだよね!? ウソつけ! 絶対わざと言わないで、嘲笑っていたんだ!
【システムメッセージ:否定します。根元を取り除いたその上部分がどうなるか、なんてわざわざ伝える気にもなりません】
しまった! システムメッセージに馬鹿だと思われた!
まぁ、確かにその通りですね…
今日は色々思慮が足りていないようです。流石に突然ゲーム世界に放り込まれて冷静ではいられなかったということでしょうか。
反省。
ん? では、実際は何を言い忘れたんです?
【システムメッセージ:回答。その葉が倒れることで、その向こうに倒れていた女性の姿が確認できると思いますので、間違えて踏まないようにという伝言です】
はぁ。
――なんですと。
そう言われ、倒れこんできた葉を避ける為に尻もちをついていた私は、急いで体を起こし――
そこに確かに倒れている年下の女の子を発見するに至りました。
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