依頼003
ショウと彼我不明の者の距離が狭まり、はっきりと互いの顔が識別出来る所まで近付いた。
小銃の
砂塵で汚れた顔に付いている乾燥した唇を開けたショウが声を喉の奥から絞り出す。
「…確認する。名前は?」
「オルソン・ピアース……本名も言うか?」
相手からの問い掛けに彼は頷く。
「ハワード・オルソン。合衆国テキサス生まれ。誕生日は7月4日」
「俺の番だ。ショウ・ローランド。本名は桂木翔。生まれは日本…戸籍上の誕生日は8月15日」
警戒を続けていた二人の間に流れていた緊迫した雰囲気が一気に霧散した。
小銃へ安全装置を掛け、銃口も完全に地面へ向けた二人は歩み寄りーー 互いに相手の肩を空いている腕で抱き竦める。
「ーー久し振りだな相棒」
「ーー相棒、また会えて嬉しいぜ」
「別れた後は何処で?」
「色んな鉄火場さ。アフリカ、中東や色々と巡ったよ。そっちは?」
「俺も似たモンだ。お前と敵味方に別れて鉢合わせしなくて良かった。殺されちまう」
「抜かせ。相棒に狙われたら眉間に7.62mmの風穴空けられちまうじゃねぇか」
「あぁ。もっともグチャグチャに掻き回した中身が射出口から飛び出すがな」
「ハハハハッ」
互いに肩を抱き、背中を軽く叩き合う。
そして二人は揃って長く深い溜め息を相手の肩口の上で溢す。
「ーーさっきも言ったけどさ、また会えて嬉しいよ」
「ーー俺もだ」
彼我不明ーー明るい金髪を短く刈った男の名前はオルソン・ピアース。
ショウ・ローランドの最良にして唯一無二の相棒である。
抱擁の腕を解いたオルソンが砂漠用の迷彩を施したブーニーハットを被り直すと眼前の相棒へ問い掛けた。
「ーーんでさ、ここ何処?いや砂漠なのは判ってるんだけどさ」
「異世界…としか言えんが。お前は神を自称する野郎には会わなかったか?」
「確かに会ったぜ。無駄にテンションがハイだったな。頭ブチ抜かれたと思ったら真っ白い空間に居たから驚いたよ」
抱擁を解き、相棒と半歩分ほど身を離したショウが軽く眉を寄せる。
「頭をブチ抜かれた?」
「Ya。クソみてぇな指揮官の野郎にな。過激なナショナリズムでオツムの医者が必要になるレベルの奴だったよ。背後から至近で頭に一発…俺もヤキが回ったなぁ」
「まぁ詳細は後で、とっくり聞くか」
「あぁ。まずはーー」
頷き合った二人は先程、射殺し砂漠の熱砂の上へ屍を晒す盗賊達へ視線を向けーー
「「ーー身包みを剥ぐとしよう」」
ーーどちらが盗賊なのか判断に困る台詞を吐き、屍へ向かっていった。
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