第26話 ギルド・ウェンデル支部
「だからよぉ! ユニークスキルが二つもあったって言ってんだろ! 何度も言わせるな!」
「バカも休み休み言えアレク。そもそもユニークスキルが一つあることでさえ奇跡だ。神の祝福と言ってもいいだろう。それを二つも? 話しにならない」
眼鏡の位置を調整する見るからに堅苦しそうな人物、彼は王都ウェンデルのギルドマスターをしているゴードンという男だ。
「ったくよぉ。おめぇは昔っから変わんねぇよなぁ……まあいい。時期ここへ本人が来るからギルドカードを見るなりここで再発行するなりして確認してみるといいさ。マナは嘘をつかねぇからな」
アレクは大きく足を組み「俺は寝る。奴が来たら起こしてくれ」と言って、寝た。
「応接室で寝る奴があるか……。お前が一番昔から変わらないではないか」
ゴードンはため息を吐いた。
「こんな奴をよく総会はギルドマスターに選定したものだ」
厳重な審査の上選定されるギルドマスター。
しかしアレクの取り柄といえば元Sランク冒険者ということくらいで、ゴードンには何故彼がギルドマスターに選定されたのか理解出来なかった。
「それに……ただでさえデタラメな力を持ったユニークスキルを二つも……? そんな例は過去に一度足りとも無い。それこそ、御伽話でもなければ、な」
マモノを勇者が倒す本や絵本ならいくらでもある。その主人公は大抵不思議な力が何個も備わっている。
ユニークスキルを二つ持つというのは、そのレベルの事象なのだ。
ゴードンは懐からパイプを取り出し、煙を
⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎
「よし。部屋も取れたし、ギルドへと向かうか」
ちょうど時間も頃合いだ。
しかし、ギルド・ウェンデル支部ってどこにあるのだろうか。
せめて場所が描いた地図とか渡してくれてもいいのにな。
そうだ。宿屋の人に聞くのが手っ取り早そうだ。
「すみません」
「ん? なんだい?」
俺は宿屋の女将さんにギルド・ウェンデル支部がどこにあるのか聞いた。
すると、ここから近い所にあると言うので助かった。
女将さんにお礼を言って、さっそくギルドへ向かった。
「でっかいなぁ」
ギルド・ウェンデル支部へ到着したのだが、ルカナ支部より一回り大きな建物だった。
本当にここであっているのだろうか。
看板にはちゃんと【ギルド・ウェンデル支部】と書かれてはいるが……。
「おいお前、何つったんてんだ、邪魔だ」
「すみません」
俺がギルド前でぼーっとしていたせいで邪魔になってしまった。
俺を退いてギルドへ入っていく男は三人組で、それぞれ長剣、短剣、ステッキを所持していたことから冒険者パーティだろう。
ここがギルドであることは間違いないな。
俺は彼らに続くようにギルド内へ入る。
「ようこそ。ギルド・ウェンデル支部へ!」
受付嬢の明るい挨拶を聞いて、どこかほっとした気持ちになった。
なったのだが……受付嬢……の数が……多くないか!?
ルカナじゃ受付カウンターにせいぜい二人だった。しかしここは6人もいるぞ!? 建物も大きければ人員も多いのか。
俺は唖然としながらも受付カウンターに行くと、「依頼ですか?」と聞かれた。
「いえ、ギルドマスターのアレクさんに会いに来たのですが」
「ああ! あなたがホープさんですね! 失礼ですが、ギルドカードを拝見してもよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
俺は受付嬢にギルドカードを渡した。
本人確認が済むと、そのまま応接室に案内された。
やけに周りにいる冒険者達からの視線が痛いが、俺は別に怪しい者じゃないぞ!
ただの新人Fランク冒険者だ。
応接室へ着くと、そこにアレクさんがいた。いたのだが、爆睡していた。
するともう一人、アレクさんの対面に男性が座っており紅茶を啜っていた。眼鏡をかけたとても堅苦しそうな人だ。
「おや……君がホープ君かな? まあ座りなさい」
「はい。失礼します」
俺は爆睡してるアレクさんの隣に腰掛けた。
「私はこのギルド・ウェンデル支部でギルドマスターをしているゴードンだ。よろしく」
「新人冒険者のホープです」
ゴードンさんが手を差し出したので握手をした。
堅苦しそうだなと思ったが、そんなことはないみたいだ。人を見た目で判断してはいけないな。
「君のことはアレクから聞いている。まあ楽にしなさい。おい、お茶を」
ギルド職員がお茶を持ってきた。
良い香りだ。
「単刀直入に聞くが……君がユニークスキルを二つ持っているというのは本当かな?」
ゴードンさんは顔の前で手を組み、食い入るように俺の目を見ていた。
雰囲気がさっきとまるで違う。
思わず目を逸らしたくなったが俺はしっかりと目を見て答えた。
「はい。二つあります。どうぞ」
俺はギルドカードをゴードンさんに渡した。
ゴードンさんはギルドカードを手に持つと、眼鏡をくいっと押し当てカードを凝視した。
上から下までざっと目を通し、裏面まで見ると、また表面を見ている。
ステータスが低すぎるからあんまり見ないで欲しいなぁ。
気が済んだのか、ゴードンさんは俺にギルドカードを返した。
「もういいんですか?」
「ああ。結構だ」
よく見るとゴードンの顔から汗がポタポタと落ちており、目もどこか焦点があっていない。
「大丈夫ですか?」
「……だ、大丈夫だとも。大丈夫。はは」
明らかに様子がおかしい。
どうしたんだろう。
「ほーら言っただろうが。ホープはガチの二個持ちなんだよ」
いつの間にか隣で爆睡していたアレクさんが起きていた。
「バカな……こんなことが……。それになんだ、運が【S】って……意味が分からん」
「それは俺も同意見だな」
アレクさんはあっはっはっと快活に笑いながら俺の背中をパンパンと叩いた。痛い。
「それで、アレクさんが俺に会わせたかった人ってゴードンさんなんですか?」
「ぁあ? ちげぇよ。こいつに会って何の得があるってんだ」
「おいアレク。それはどういう意味だ?」
「そのままの意味だが?」
何やら険しい雰囲気になりそうだったので強引に話しを割った。
「それで、ゴードンさんでは無いなら一体誰に……
?」
「アイシャだよ。アイシャ・クルー。【国家錬金術師】って言った方が分かりやすいか」
「国家……錬金術師……」
それは、以前リナさんが言っていた、ユニークスキルを持ち、ギルドカードを作った人の名だった。
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