2番目
楠木みつ
第1話
僕の名前は坂下執
三人兄弟の一番下だ。
僕は数字の「2」が好きだ。
何かあるたびに「2」を選び2番になりたがる。だから三人兄弟の一番下として生まれたのは、僕の中で屈辱的な出来事だ。だけどこれは生まれた順だから仕方がないと諦めている。
だから僕は他の「2」に執着しているんだ。
学校で僕は変な子だと思われている。
リレーでは2番になれるように走り、机の位置は前から2番目である。どこかに「2」が入っているだけで僕は安心するのだ。
今日は学校で発表の順番決めがある。
この発表は、町のいいところを探してきて、1人ずつ発表していくのだ。
僕にとって発表内容はどうでもいい。
大事なのは何番目に発表できるのかだ。
「みんな、席についてねぇ」
先生がみんなに呼びかける。
いよいよ始まる。といっても、いつも立候補制で発表したい順に手を上げていく。早い順番は人気がなく最後に決まってない人でジャンケンをして順番が決まる。2番目は、早いため僕は、いつも立候補することで2番を勝ち取ることができていたのだ。
「今日は発表の順番を決めま〜す!いつも立候補制でするんですが、いつも同じ番号の人がいるため今日はくじ引きにします!」
ん?僕は耳を疑った。
くじ引き?立候補制じゃなく?
2番になれないかもしれない?
けど、くじ引きで「2番」を引けばいいってことだよね。と僕は心に言い聞かせた。なんだかんだ僕はポジティブな人間のようだ。
「では、くじ引きをします!紙を引いたらみんなが引くまでそのままで。みんな引き終わったら一緒に見ましょうね。」
何人かがボックスの中から紙を引いていく。
「次は坂下くん!前に来て引いてね」
先生に呼ばれボックスの前に立つ。
これで決まる。僕の数字が。
僕は願うように紙を引いた。
手の中で小さくおられた紙が震えている気がした。
まだ僕は数字を知らない。皆んなが引き終わるまでただひたすら席に座りながら、紙を見つめていた。
「みんな引いたよね〜!じゃあ紙を開いて見てください!」
僕は恐る恐る紙を開いた。
そこに書かれていたのは、「4」という数字だった。
「紙に書いてある数字を今から1人ずつ聞いて、黒板に書いていくから、その順番で三日後発表してください。なので番号の交換はできません。」
交換もできない。「2」じゃない。
僕の中で段々と怒りのようなものがこみ上げてきた。
「1番は誰ですかー?」
耳障りな声だ。
「はい!」
「吉村さんね」
前の黒板に1番、吉村と書かれた。
1番に興味はない。2番に興味があるんだ。
「2番は誰ですかー?」
「はーい!」
「田辺くんね」
2番が黒板に書かれる。
僕は堪らず手を挙げた。
「どうしたの?坂下くん」
「僕、4番を引いたんですけど、2番が好きで、2番がいいです!」
正直に伝えた。
「ダメです。みんなくじで引いて決まった順で発表するのに、坂下くんだけ特別扱いできないでしょ?今回は4番で我慢してください。」
先生に言ってもダメだ。ここは田辺に言おう。
「なぁ田辺、僕の番号とお前の番号交換してくれないか、僕2番がいいんだよ」
「お前4番だろ?俺の2番とそんな変わんねぇじゃねーか。それだったら俺は2番でいいよ」
「坂下くん!いい加減にしなさい!
交換はダメって先生最初に言ったでしょ。今回は4番で我慢しなさい」
先生に怒られ僕は黙った。
許さない。絶対に。
僕が絶対2番になるんだ。
「3番は誰ですかー?」
「はい!」
「辻村くんね」
黒板に名前が書かれる。
4番の僕は、さっきの出来事で知られたため先生に問いかけられなかった。
その後も続々と番号が呼ばれ黒板が埋まっていく。
僕は番号の発表が終わるまで考えていた。
僕は今4番だ。僕が2番になるには、2番の田辺と、3番の辻村が邪魔だ。
そして、黒板に全員の名前が書き終わった頃に1つの案が思いついた。
2人とも怪我すれば僕が2番だ。
これで僕の2番を取り戻せる。
学校の帰り道、田辺の後ろをつけた。
田辺が坂道を降りようとした所を僕は後ろから押した。
目の前でコロコロと転がっていく田辺が見える。
田辺が転がって止まった。頭から血が出ている。
僕は確信した。これなら2番になれる。僕の口角が上に少し上がった。
次の日、田辺は来なかった。先生は怪我で2週間来れないと朝礼で言っていた。
僕は放課後田辺にしたように、辻村の後をつけた。辻村の家に行くには、歩道橋を渡る必要がある。歩道橋の階段を降りる時に僕は、辻村の背中を押した。
コロコロと転がっていく。
そして、止まった辻村の元に行き、顔をみる。血が出ている。これで僕は2番目だ。
僕は次の日ルンルンで学校へ向かった。
教室に着いて座っていると先生が怖い顔で入ってきた。
「おはようございます。昨日辻村くんが怪我しました。その前の日は田辺くんが怪我しました。辻村くんは誰かに背中を押されたと言っていました。誰か辻村くんが押されたのを見た人はいませんか?」
僕は手を挙げた。
「坂下くん、見たの?」
「見てません、僕が押しました」
「何を言ってるの?冗談言ってる場合じゃないのよ?」
「冗談じゃありません。2人が怪我すれば僕が2番になれるので押しました。お陰で2番になれました!」
「坂下くん!いい加減にしなさい!確かに2人が怪我すれば2番になれる。でもして良いことと、悪いことがあるでしょ」
先生がすごく怒っている。
でも僕は嬉しかった。だって2番になれるって先生は言った。これで僕が2番なんだ。
「坂下くん、今日はもぉ帰りなさい。
当分学校に来ないで家で反省してなさい」
「嫌です。明日発表じゃないですか。せっかく2番になれたのに…」
「坂下くん!!2番2番って、人を突き落としてまでなるもんじゃないでしょ!帰りなさい!」
先生の声が学校中に響き渡る。
せっかく2番になれたのになぁと思いながらも声がうるさすぎて耐えられないから帰ろう
「はーい!帰ります。」
この時僕のなにかが外れたような気がした。
家に帰って部屋で漫画読んでいると、リビングに呼ばれた。
お母さんと、お兄ちゃん2人が座っていた。
僕が何をしたか知ったらしい。
こっ酷く怒られた。
どうして怒られてるんだろう。
ただ2番になりたかっただけなのに。
僕は部屋に戻り考えていた、僕は2番になることで完璧なんだ。2番じゃないから怒られてるんだ。
全部2番にしないと。
「お兄ちゃん!ちょっといい?」
「なんだよー。お前反省してんのか、お前が何かすると、俺や、兄ちゃんまで被害出るんだからな」
「うん!だから僕が2番になれば完璧なんだよ」
部屋中に血が飛び散る
お兄ちゃんの顔に手を近づける
「うん。死んだね!これでやっと僕が2番目だ」
2番目 楠木みつ @ponponsyou23
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