④初めての魔法使い
灯したものを見ると、それは大きな壁画。
詳細までは暗くて分からないが、丁度真ん中にシロクロノバケモノがいるから神話が描かれているものなのだろう。
「んんん!?」
私は足に違和感を感じ、変な声をだした。
「どうした八重!」
「なっなんか足元に何かが這い回ってる!こっこそばゆっい!あっ」
叫ぶのが恥ずかしい私は口を手で塞ぎ、足こしょばし事件の犯人を目視してやろうと下を向いた。
クッ……クッククク。
鳴き声も聞こえる!!
でも暗いからまったく見えない!!
「誰ですか!?」
ユキさんが振り返り、私の足元を照らした。
よし!これで犯人の姿が見える!
私は見逃さないように、必死に目をこじ開けた。
ずばり、足こしょばし事件の犯人は!
……Surrender(降伏)と書かれた小さなスケッチブックを持って、服従のポーズをしている齧歯目チンチラ科チンチラ属のチンチラだった。
「わぁチンチラさん!」
「なんだ、リコのペットか。チンチラって種類だったんだな」
「よかったぁ」
少し面白くないと残念そうにするラルドさん、その逆でユキさんはホッと一安心していた。
「ペット!触ってもいいでしょうか!」
「いいと思いますよ」
許可は得た!いざもふもふ大戦へ!
私はしゃがんでクッ……と言って服従しているもふもふに触れた。
これは降り積もってすぐの雪のようにふわふわしていて、触るたびに昇天して逝きそうな天使のもふもふ!
「もふもふの最上級!ゴット!先輩のような温かみを感じます!」
「おっおう」
チリン。
すると、大声に驚いた神レベルのもふもふの中から銀の鍵が零れ落ちた。
「カギ」
2回目に見る私の大切な鍵。
血みどろで不穏さを醸し出していたその鍵は、錆もなくて宝物として重宝されています!と言っているようなほどの煌めきをしていた。
"Return of magic(魔法の返却)"
大切なモノを持っていた獣がスケッチブックをめくり、こう伝える。
「ああっ!鍵を綺麗にしてくれてありがとな!
これ八重の鍵、君の魔法の1つでもあるから受け取ってやりな!」
「あっありがとうございます。チンチラさん!」
私は銀の鍵を手にとり、ずっしりと重さを手のひらから味わう。
この鍵は心臓や脳みたいに生きるため、必要な器官そのものを切り離して閉じ込めたモノではないのは何となく分かる。
けれど、私の大切な臓器と同じような重大さを主張しているような。
旅のパートナーは、私を刺した犯人です! 昇天ねずみff @mame1122
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