③初めての魔法使い

「ヒトケモノ?獣人とは違うのですか?」


「……ヒトケモノは獣に近い形をしていて、その動物の本能に囚われやすい種族。獣人は人体の数箇所が獣の部分に変化している種族だ」


「はいはい、下に降りますよ」


ユキさんは話を早く切り替えたいのか、そう言って横に掛けてあるランタンを持った。すると、ぽわぁと夕焼け色の温かな光を放つ。


端っこにある螺旋階段は、外にある太陽を遮り、中に入った人を夜だと騙すように創られているみたい。


階段を降りるたびにコッコッコッと足音の反響を聞くと、自分達がどの階にいるのかどこに向かっているのか、分からなくなっていきそう。


更に光がある場所についた頃には、自分自身の姿を見失ってしまうようなそんな雰囲気を醸し出している。


ラルドさんが言っていたヒトケモノという種族。動物の本能に囚われやすいというのは、一体どうゆう意味なんだろう。


人としての自分と他の獣としての自分の一線が、この螺旋階段のみたいにあいまい不鮮明な種族なのかな?


そうなると人の倫理観に削ぐわない行動をしたり、弱肉強食が主の種族だったして。


人も獣だけど、多種みたいに生存本能だけだと物足りないと感じるのは不思議だな。


「はいここから真っ直ぐですよ」


そうユキさんに言われて歩く先も、同じような暗くて細い道。足音はザッザッと紙ヤスリを擦りつけているような音を発し始めた。


「本当にこんな暗い場所に試験場があるのでしょうか?」


「ああ」


この質問に対して、猛禽類バージョンのラルドさんが頷いた。


本当にあるのだろうか?猛禽類の目付きだと安心できない。


それに試験場って中庭とか、運動場とか崩れても問題ない広めの場所にあるものじゃないの?


地下に設置されているものと言えば牢屋なんじゃ。


……牢屋。


私はある事を発見し、歩みを止める。


「まっまさかのったったいほっだったり……しまっっせんよねね??」


「いやいやいや違うから!なんでそんな発想に至るんだ!?」


「ちっ地下!暗い場所!牢屋!」


暗闇のせいかパニックになって、自分でも訳が分からないことを発していると、ユキさんが後ろを向いてこう言った。


「八重さん、もしもラルドの目的が僕らの逮捕だった場合、僕が先導する訳ないじゃないですか」


「あっ本当だ」


ユキさんがそう言うと、足を止めてランタンで何かを灯した。

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