②腹へり、ペコペコ
シャキシャキのレタスとトマトに、ふわふわのマフィン。その上にトロトロしたタマゴの黄身と、酸味の効いたオランデーソースが野菜の甘みを引き立てている。
何これ美味しい。
フォークが震える。
「美味しいならなにより」
ラルドさんは腰に手を置き、ふふんと自慢げに鼻を鳴らした。
「で、ウル……蕾の件について話を聞きたいんじゃなかったのですか?」
……蕾って……夜空蕾のことだよね。
ウガァアア。
確か彼女は人間とは言えない声をだし……体が膨らんでいくのと同時に、皮膚がボコボコとお湯が沸騰したように大きくなって!
「ゔっ」
私は変貌していく様子を思い出し、手の震えの余りフォークを床に落とす。地面に衝突した反動でシャリンという心の悲鳴をあげると、力尽きたのか横に倒れた。
「やっやえ?大丈夫か?」
「あっああ……はい!大丈夫です!ふぉっフォーク落としてしまってすみません!」
ラルドさんの声掛けで我に返ると、慌てて震えた手つきで亡骸を拾う。
「大丈夫ならなにより。はい、新しいフォーク」
「ありがとうございます!」
その亡骸を新しいフォークと交換して貰ったけど、彼女の情景を思い浮かんで、さっきまであった食力がもうないかも。
私は昨日の件を忘れよう考え、置かれているコーヒーを砂糖や牛乳を苦さを消してから両手でカップを持つ。
「ところでユキ、ウルはいつから、何故あんな場所に居たんだ?
我々は一般竜人のシロノクニの住宅街への侵入を認めてないし、 カフェ経営をしていただなんて非常事態だ。
よっぽどの理由がないと彼女がこんなことするはずがないだろ?」
さっきまで少年のような明るさがあったラルドさんが、また急に肉食獣の鋭い目付きで喉を唸らせているような声のトーンに変わった。
色々話を聞いて分かってきたけど、多分ここはシロノクニという国名。獣人と人間以外の種族以外には厳しいところなんだろう。
「1週間前から僕のカフェに定住してました……きた理由は僕も知りません。
蕾は後ろ冷たいことがあれば本心を隠すような癖がありますからね。
もしかしたら主要人物として、重要な役割を果たすためだったのかも知れませんし、詮索するのは良くないと思いました」
「なるほどな……主人公が目の前に登場した途端、魔力による自我の暴走か。
もしかしてストーリーが始まるきっかけに必要なキャラが蕾だったのかもしれない」
魔力って暴走するとあんな風になってしまうんだ。
"自分があの2人に話しかけたから、あの子が変化してしまったのかもしれない"
昨日の件の暴走原因が自分のせいだったらどうしよう。
まずは魔法について知らなきゃ。
「あのっラルドさん。この世界の魔法って何なんでしょうか?」
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