③腹へり、ペコペコ

「お前、まさか魔法について説明してなかったのか!」


狼の目付きだった彼、ユキさんに対して普通の男子高校生みたいな幼げのある驚きの表情をする。それを向けられた本人は、冷や汗を掻きながら耳をたらんと垂らす。


「八重さんがヤケに敵対してくるわ……魔法がある世界に連れてかれたこととか信じてませんでしたし……今朝は僕が使った転移魔法の後遺症でネガティブになってたり……落ち着くタイミングが……ね?」


「いきなり刺殺してきた人に対して警戒しないほうが無理難題ですよ!今朝の情緒不安定になった原因それか!」


私は心にとどめておくことができなかった、ユキさんへの怒りをぶつける。すると、また兎獣人はシュンとして、背を丸めはじめ白いアルマジロ獣人になっていた。


「じゃあ、ユキの代わりに説明するよ。八重も昨日のウルの件についても気になってそうだしね」


「はい!ありがとうございます」


私はラルドさんにお礼を言って、少し心を落ち着かせるためにカフェオレを眺めた。


混ざりきっていない白いミルクをみると、何だか先輩のことを思い出す。


もしも別世界に送られてきたのが先輩だったら、

例えば〇ーラ!とかベホ〇ミとか色々呪文を唱えてみたり、


"「ふっふっふーなら、その人類以上のチカラを持っている奴等を倒せばみにゃぁーあ!」"


とか言ってこの状況を楽しんで魔法を難なく駆使しそう。


それとこの世界にきてから感じる皆さんとの距離感や疎外感に、馴れ馴れしい先輩は気づかないどころかいつの間にか葬り去れる気がする。


更に先導されてる私とは違って、旅の友とか言ってリーダーになって先導するだろう。


「あれ?良く考えると先輩の方が主人公向きな上にカッコイイ!先輩だけのヒロインになりたい!」


私の何かが解放されて、こう叫んだ。


「あっえ……と」


……って違う、違う違う!

決して先輩のことが好きな訳ではなく!


そう!リスペクト、尊敬してるだけ!

……あっでもなんだろうこのモヤモヤする気持ちは。


考えれば考えるほど恥ずかしさの渦巻きが渦巻いてくる。


……かっカフェオレでも飲んで落ち着こう。


そんな状態になっている私とは対極で、2人は至って冷静な様子で、


「ん?八重が主人公だぞ」


「この世界にヒロインポジって居るんですかね?」


「さあ?」


と仲違いしていた2人とは思えないほど、この世界のポジションついて話していた。

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