①腹へり、ペコペコ

コツコツ、コッコ。


静かな道を靴音を鳴らしながら歩いていると、なんだか放課後の校内を連想させる。


でも学校とは違い、なんだか寂しさを感じるのはやっぱり元気な先輩が居ないからなんだろう。


「着いたぞ」


ラルドさんの声で焦げ茶色の重そうな扉の前を立ち止まると、足音すら泣き止んで辺りは静寂に包まれる。


ギギィイーン。


リコさんとカノンさんが左右の取っ手を持ち、ゆっくりと扉を開ける。噛み付きが悪いのか、川魚のギギのような鳴き声が廊下に響き渡った。


「八重、お先にどうぞ」


「はっはい!失礼します!」


私は彼の好意に甘えて部屋に足を踏み入れる。

すると、沢山の豪華そうな宝石で作られている装飾品が出迎えてきた。


「えっ?」


テレビでしか見たことない部屋があるんだけど!


めっちゃテーブルめっちゃ大きい!

奥になんか暖炉もある!


なんか壁もさっきの廊下にあった以上に豪華なステンドグラス!


昨日宿とは全然違う!

安心感というよりなんか緊張する!


「うあ……」


部屋の豪華さに恐縮して硬直した体。これをラルドさんは力強く押しだし、私の座る場所まで運びこんだ。


「はい、席座る」


そして固まった体に体重を乗せ、椅子に座った状態へ変化させた。右隣には不機嫌そうに肘をついているユキさんが、コイツら何やってるんだろうとばかりの不審な目で見てきた。


「まぁ八重がそうなるだろうと思って、料理は先に作らせて貰ってあるから安心して食べろよ」


ラルドさんはこう言うと、左隣の椅子に座る。さらに、扉の前に居る2人にアイコンタクトをすると、メイドさんは一礼し、部屋から去っていく。


「もしも先に来てなかったらどうなるんですか?」


「メイド達に囲まれながらのフルコースな食事がでてくるぞ」


よっよかったぁ。

そんな状況だったら緊張どころじゃない、もう心臓発作起こして病院だ。


「俺も苦手だしな。テーブルマナーとかめんどくさいし、人目が気になるし」


「ああ……案外普通の人なんですね」


国の王だからなんかもっと威厳があって堅苦しい人かなと思ってしまっていたのかもしれない。


「お腹すいているだろうし食べな」


私はそう言われてテーブルの上に置かれた料理を見る。


銀の平皿にメインのエッグベネディクト、端にはポテトとソーセージが添えられていて、緊張が解れて食欲が湧いてきた。


「……いただきます」


フォークとナイフで真っ二つにすると、半熟玉子とチーズが蕩けてパンを浸す。そして、1口大にして口の中にほうばった。


「んまぁ」

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