①朝日が昇る道標
その2人をみて、
「あの、私はそっちの気があるのでしょうか?」
と疑問詞で聞いている辺りで、もう自分が性がヘテロセクシャル(異性愛者)だと思わない方がいいのかもしれない。
でも、あんなにヒソヒソ話されないとダメなんだろうか、別にセクシャルマイノリティが異性愛者じゃなくても良くない?
「すまない、なんか嫌な思いをさせてしまったな」
「陰口のように憶測を話すのは良くなかったですよね。すみません」
疑問に対しての返答は無く、気を使うような言葉をかけられてしまう。
まぁいっか。
よく良く考えてみれば、自身のセクシャルマイノリティについて分かるのは自分だけだし、2人に聞いても意味なかった。
抱きつかれて恥ずかしいのも行動が恥ずかしい可能性もあるし、私も憶測で判断するのは止めておこう。
……てか今はそんなこと考えている場合じゃない!
屋根も無いのに大きい影がある事に気づき、ふと上を見上げてみた。すると、低めの石壁と洋風の城の隙間に挟まれている場所にいることが確認できる。
建築物の"アナタ、絶賛異世界なうですよ"というメッセージが聞こえてきたような気がした。
「お客様、あの……馬に頭を齧られますよ」
「ふぉあっ!!」
上を見上げる必要もなかった!すぐ横に馬小屋があった!!
横を見ると、馬小屋より手前にある簡易的な木の柵の区切りの先には、さっきまで馬車を引っ張っていた毛艶の良い馬と、その様子を柵外から見守る御者さんが微笑んでいた。
「今日はやけに野次がうるさかったもんだから、裏口からですまないね」
元気な方のメイドさんがそう言って、苦笑する。
「いや大丈夫だ。リコが悪い訳ではない。国民の皆さんはこの前のクロノクニの女王様との謁見内容、この国で竜人が飛んだ理由が気になってしょうがないんだろうさ」
「え?ラルド、クロノクニに行ってたのですか?よくネコに殺されませんでしたね」
「クロノクニ?ネコ?」
クロノクニって言うのは他の国名なのは予測できるけど、ネコが人を殺すの?ネコと名乗っている人が殺人鬼なのだろか?
毎回思ってたけど、皆んなの言ってることがきっかりさっぱり分からない部分が出てくるな。
異世界の現実や常識、ニュースとか知らないからこの手の話になると完全にアウェーだ。
「では!こちらからどーぞーさんめいさまぁー!」
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